(はじめての意匠登録 その1はこちら→ http://onion-tmip.net/update/?p=1054 )
◎意匠も、商標と同じ「早い者勝ち」。だが、商標登録にはない「ハードル」がある。
意匠登録の出願・登録にあたっては、むしろ「商標登録」の経験がある方のほうが戸惑うかもしれません。
もっとも、同一又は類似の”意匠”(※デザインが類似であるだけでなく、物品も同一又は類似なもの)について、他の人も出願するとしたら、そこは最も先に出願した人が、原則登録を受けることができる…つまり「早い者勝ち」という点は、意匠も商標も同じです。
では、意匠登録と商標登録で何が異なるのか。特に大きく異なる点を説明します。
(1)意匠登録は、原則、その意匠を創作した人に登録を受ける権利がある
商標(ロゴとか、文字とか)は、その商標を思いついた人、創作した人でないと、商標登録を受けられないということはありません(だからこそ、自分が考えた商標が、他の人に先に出願されて登録された。。。というトラブルも起きうるわけですが)。
一方、意匠は、それを創作した人が、意匠登録を受けることのできる権利(※絶対、登録が与えられるという意味ではありません。登録を受ける資格、みたいな感じかな)を持っています。この点は、特許(※発明をした人に「受ける権利」あり)と同じですね。
もし、実際に意匠を創作した人が、社員だったり、外部のデザイナーだったりする場合は、要注意・要確認。出願するときには、「登録を受ける権利」が出願人に譲渡されている必要があります。
(2)世の中でまだ知られていない意匠でなければならない(新規性)
これが、大きく、商標登録と異なる点ですね。たとえ、まだ誰も出願していない意匠でも、それが世の中(※日本だけでなく、世界のどこでも)公開されていない、すなわち「新規性」のある意匠でないと、登録が認められません。
商標は、まだ使われていない商標でも登録が認められますが、これは「その後、ちゃんと使われるんですよね」という前提で、使用されていくにつれて商標に積み重なる「ブランド力」を保護するのが、商標権の目的だからです。他人が先に出願していなければ、使用し始めている商標でも登録できますし、本来は「識別力がない」商標が、使用→ブランド力を獲得により識別力が生じ、登録が認められることもあるくらいです。
一方、意匠は、ここでも特許に近いんですよね。まだ世の中にないようなデザインを創作した人が、公開してくれる(→その積み重ねで産業が活性化し、発達することにつながります)ことに対する、一定の期間の独占権の付与なんです。
ということは、自分で既に販売してしまったり、SNSに公開してしまったりして、世の中に「公開」されて新規性を失っているものには、意匠権を与える必要がない、という考え方をするんですね。
(また、新規性と同様に、「創作”非”容易性」を満たしているか、という要件もあります。既に世の中で公開されている意匠を、ただ組み合わせただけとか、構成要素の順番を入れ替えただけとか、誰でも容易に思いつく意匠にも、意匠権を与えるに及ばないということですね。)
したがって、意匠登録の場合は、商標登録以上に「善は急げ!」ということになります。
既に、自分で創作した意匠を、公開してしまったあなたへ。
ここで、「あー、せっかくいいデザインの商品を作ったのに、もう販売し始めちゃったよ!」という方、
もし販売=公開から、1年以内であれば、セーフになる可能性が高いので、さらに読み進めて行ってください。
(第3回は、実際に意匠登録出願するときの注意点 です)
続きはこちら http://onion-tmip.net/update/?p=1100