ONION商標・弁理士の山中です。

技術革新等に伴い変化しつづけるエンタメ業界。そんな時代だからこそ、拠り所とすべきは「著作権法」ですが、「法」に対していきなり細かいところをつつくのではなく、「その全体や構造、考え方を『ざっくり』学んでしまうことが近道だ」という趣旨でご紹介する連載、その第10回です(久々ですみません…でも諦めず、こつこつと。)。

第5回では、ひとくちに「著作権」といっても、それはさまざまな「◯◯権」をまとめたような概念であって、ざっくりといえば

「著作者が、自分の著作物を、自分だけが、独占的に◯◯をすることができる」権利だよ

、という説明をしました。https://onion-tmip.net/update/?p=922

しかし、ある一定の場面では、他の人が利用していても、著作(権)者が「利用しちゃダメ!」と言えないように”制限”する規定、その名も

「(権利)制限規定」(著作権法30条〜47条の8)

があります。こちらを、順を追って解説しています。

第7回(制限規定の理由・目的、「私的使用目的の複製(30条)」)
http://onion-tmip.net/update/?p=1192
第8回(「引用(32条)」)
http://onion-tmip.net/update/?p=1321
第9回:「図書館関連・福祉関連」(31条、37条・37条の2、43条)
http://onion-tmip.net/update/?p=1567

今回ご紹介する制限規定のグループは、

【教育関連】です。

ただ、これは幅が広いので、さらにグルーピングしながら、ご紹介します。

<教科書・学校向け放送関連>

◎教科用図書等への掲載(第33条)

小説など「他人の(公表された)著作物」であっても、教科用図書、ざっくりいえば教科書にであれば、著作権侵害にならずに掲載できますよ、という規定です。

未来を背負っていく子供たちの教育にあたり、重要な教材である「学校の教科書」には、先人たちの知識や文化の集積とも言える「著作物」を、適切に選択して、しっかり利用してほしいですもんね。

ただ、当てはまるための要件は、色々あります。例えば、

・小・中・高(盲学校や養護学校も)の教科書が対象。
(→大学や高等専門学校の教科書は該当しない!)

・学校教育の目的上、必要と認められる範囲内の掲載。

・出所明示義務あり。

などがあります。また、

・著作者への通知(※教育目的上の翻案や改変が認められるため)、著作「権」者への補償金の支払い(※経済的不利益を考慮)

といった規定も定められています。

同様の制限規定としては、

◎教科用図書代替教材への掲載等(第33条の2)
←いわゆる「デジタル教科書」を対象した規定

◎教科用拡大図書等の作成のための複製等(第33条の3)
←視覚障害児童等のための教科書等を対象にした規定

もあります。それから、

◎学校教育番組の放送等(第34条)

という制限規定も、同じような内容・趣旨ですね。

小学校の時、社会や道徳などの授業で、NHK Eテレ(※筆者は「教育テレビ」世代ですが)等のテレビ番組を見るのって、嬉しかったですよね。そのような、学校向け教育番組の放送等、番組用教材の掲載への、他人の著作物の使用について、教科書への掲載とほぼ同様の要件で、認める制限規定です。

<学校・教育機関における複製等>

◎教育機関における複製等(第35条)

こちらも、「著作物を教材として自由に利用できるケース」を想定している点では、<教科書・学校向け放送関連>の制限規定と同様の趣旨なのですが、対象や要件に異なる点も多いので、別グループとしました。例えば、

・「学校その他の教育機関」と、やや対象が広い!
→小・中・高に限定されず、大学等も含まれる!
→ただし「非営利」であること→塾や予備校は含まれない!

・教育者か、学習者が、授業の必要に応じて、「複製」等をすること
→教科書のように、あらためて教育目的で作られているものではなく、先生や講師、または生徒が、「授業で必要な教材だな」と判断する著作物を、その授業に使うことを目的として、限度に応じてコピー等することが許されます。

なお、この条文は、近年改正され、オンライン授業(遠隔授業)にも適用できるようになりました。詳しくは以下の記事をご参照ください。

【参考】【ONION商標・弁理士の眼】オンライン授業での著作物の利用に関する法改正を解説
https://onion-tmip.net/update/?p=365

<試験関連>

◎試験問題としての複製等(第36条)

試験も、教育においては、重要な要素のひとつですよね。しかし、制限規定が置かれている理由は、ちょっと違います

試験問題は、試験前にその内容等が外部に漏れる可能性を、限りなく避けなければ、試験の公正さや円滑な実施が実現できませんよね。しかし、試験問題への、(公表された、他人の)著作物の利用にあたり、著作権者への許諾をとらなければならないとすると、どうしてもその「試験問題漏洩」のリスクがでてきてしまうため、「許諾不要だよ」という制限規定が置かれているのです。

許諾なしでできる行為は、複製と、公衆送信(※インターネット上の試験・検定等を想定)のみとなっています。

試験の対象は幅広く、入学試験や各種資格等の検定試験はもちろんのこと、模擬試験なども対象になります。ただし、
・「営利目的」で行われる試験の場合は、補償金を著作権者に払う必要があること、また
・「試験で出題された問題を集めた、問題集」の複製等には、この制限規定は適用されません。
規定の趣旨とズレますもんね。

さて、「営利目的」という言葉が出ましたが、学校などで行われる、著作物を利用した行為は「非営利」であることが多いので、

◎営利を目的としない上演等(第38条)

も関わってくることが多いのですが、これは必ずしも教育に限らない制限規定で、この第38条だけで一回語れるぐらい、いろいろな要素が詰まっていますので、次回ご説明したいと思います。

 

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