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技術革新等に伴い変化しつづけるエンタメ業界。そんな時代だからこそ、拠り所とすべきは「著作権法」ですが、「法」に対していきなり細かいところをつつくのではなく、「その全体や構造、考え方を『ざっくり』学んでしまうことが近道だ」という趣旨でご紹介する連載、その第5回です。
第1~3回は、「なぜ著作権法はわかりにくいのか」について述べました。
(第1回はこちら)https://onion-tmip.net/update/?p=726
(第2回はこちら)https://onion-tmip.net/update/?p=752
(第3回はこちら)https://onion-tmip.net/update/?p=809
そして、同法で定める以下の権利(これも、ざっくり4つもあるからややこしい)のうち、
◎「著作権」
◎「著作者人格権」
◎「著作隣接権」
◎「出版権」(※第3回で軽く説明)
「著作権」と「著作者人格権」は、著作物を創作した人、すなわち著作者に、特に手続きなく与えられること、そしてそもそも著作物とはどんなものと定義づけられているのか、を前回第4回ではご説明しました。
(第4回はこちら)http://onion-tmip.net/update/?p=878
さあ、今回からは、やっと上記「◯◯権」をひとつずつ掘り下げていきたいと思います。
著作権法を見ると、「章」→「節」→「款(かん)」という順に書き下されているのですが、その第二章が「著作者の権利」となっています。
著作者の権利、すなわち「著作者が、著作物を創作すると、何の手続きもすることになく得ることができる権利」は、「著作権」と「著作者人格権」でしたから、これらについては第二章にまとめられているわけです。
(※逆に言えば、著作者が、著作物の創作によって直接的に取得するものではない「著作隣接権」と「出版権」については、別の章になっています)。
まずは、法律の名称にもなっているんだから、最もメインの権利なのでしょう…「著作権」からいきますか。
でもここで、またややこしいこと言わせてください。この著作権も、1つではないんです…
あらためて、著作権法の第二章「著作者の権利」を見て見ると、著作物(第一節)、著作者(第二節)に続いて、
第三節 権利の内容
となっています。さらにここが第一款〜第五款に分かれており、今回説明していこうと思う著作権については、
第三款 著作権に含まれる権利の種類
というように題されています(※著作者人格権は第二款。次回移行やりましょうね)。
この題からもわかる通り、「著作権」というのも一つではなく、複数の種類、すなわち「◯◯権」を含んでいるわけですね。
では、具体的にはどのような権利の種類があるのかというと、この款の第21条~28条に定められています:
・複製権 (21条)
・上演権及び演奏権(22条)
・上映権(22条の2)
・公衆送信権・伝達権(23条)
・口述権(24条)
・展示権(25条)
・頒布権(26条)
・譲渡権(26条の2)
・貸与権(26条の3)
・翻訳権、翻案権等(27条)
・二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(28条)
これら「◯◯権」をまとめた束のような概念が「著作権」と考えて、個々の「◯◯権」を「枝分かれしたようなもの」=「支分権」と呼ぶ場合もあります。
では、1番最初にある、複製権の条文を見てみましょうか。
第二十一条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。
そんなに難しく無いですね。ただこれが、「◯◯権」の◯◯の部分が聞きなれない言葉だと、一体何ができる権利なのかがわからなくなってきます。
自分の場合は、「◯◯権」については、こういう解釈をするようにしています:
・「著作者が、自分の著作物を、自分だけが、独占的に◯◯をすることができる」権利
・ということは、「自分の著作物については、◯◯をするかどうかは、著作者が好きなように決められる」
・つまり「自分だけが独占的に◯◯する」だけでなくて、
・他の人に◯◯することをOK(許諾)する、こともできる
そんな権利だと。例えば、これを第23条(1項)「公衆送信権」だったら、
「著作者が、自分の著作物を、自分だけが、独占的に公衆送信することができる」権利
なんだな、と感覚的に掴むことができます(「公衆送信」がなんなのか、は置いといて。この定義も2条1項7号の2にありますけど)。
さて、著作物を創作すれば、著作権を得る(17条1項)し、その著作権がこれらからなるんだから、これらの「○○権」を全部得られると思って、「原則的には」間違い無いです。
ただ、勿体ぶって「原則的に」などと言ったのは、著作物の種類(前回説明した、第10条に例示された分類ですね)によっては、「この◯◯権は与えられるけど、この◯△権は与えらない」という場合もあるからです。
例えば、口述権(24条)だったら、
第二十四条 著作者は、その言語の著作物を公に口述する権利を専有する。
はっきりと「言語の著作物」と限定されてますよね。確かに、口述できるのって、言語の著作物だけな気がします。美術の著作物を口述しようがないもんね。
逆に、美術の著作物には、写真の著作物とともに、それらだけに、「展示権」(24条)が与えられるのです。
こうして限定されているものの代表的なものだと、映画の著作物だけに与えられる「頒布権」(26条)などもありますが、これだけでも色々と話すことがあるので、それはまた別途。
22条も「上演権及び演奏権」と2種類の「◯◯権」が併記されていますが、音楽の著作物を演じるんだったら、それは「演奏」だろうと。だから音楽の著作物を創作すれば、著作者には「演奏権」が与えられるし、他の種類の著作物だったら、それを演ずるのは「上演」でしょうから、「上演権」が与えられる、ということですね。このように、細かい言葉遣いに厳しいんですよ、法律って。
ところで、22条には他にも重要な表現があるんで、条文も見ておきましょうか。
第二十二条 著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。
この後の条文で、単に「公に」と書いてあったら、それは「公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として」◯◯するってことだよ、ということですね。
22条に限って言えば、演奏権ていうのは、「著作者が、自分の(音楽の)著作物を、自分だけが、独占的に『公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として』演奏することができる権利」ということになります。
つまり、公衆に見聞きさせる目的「ではなく」上演するなら、この権利を利用しているのではないことになります。そんなケースあります?ありますよ、例えば、練習場で演奏していて、その「音漏れ」が大勢に聞かれてしまっても、それは「聞かせることを目的として」演奏している分けじゃないから、誰かの演奏権を侵害していることにはなりません、ということです。
この「公に」っていう言葉は、実は上にあげた「口述権」の条文にもありますし、「上映権」「展示権」にも登場しますね。
やれやれ、これだけ書いたのに、まだまだ著作権については説明しなきゃいけないことが多いですね。例えば、著作権を持っていたら「他の人に◯◯することをOK(許諾)する、こともできる」って書きましたけど、その許諾に条件をつけていいのか?とか。いいんですよ。しかも、金銭的な条件をつけて許諾してもいいんです。だから、この著作権には「財産的価値」が出てくるんですよね….そんな話の続きはまた次回。
(次回はこちらです → http://onion-tmip.net/update/?p=1042 )
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