ONION商標・弁理士の山中です。

技術革新等に伴い変化しつづけるエンタメ業界。そんな時代だからこそ、拠り所とすべきは「著作権法」ですが、「法」に対していきなり細かいところをつつくのではなく、「その全体や構造、考え方を『ざっくり』学んでしまうことが近道だ」という趣旨でご紹介する連載、その第3回です。

第1、2回は、「なぜ著作権法はわかりにくいのか」について述べました。。

(第1回はこちら)https://onion-tmip.net/update/?p=726
(第2回はこちら)https://onion-tmip.net/update/?p=752

そして今回も、「なぜ著作権法はわかりにくいのか」が続くんですが!

ついに、今回から、その法律の中身を見ていくことになります!!

【わかりにくい理由 その③】法目的の割に、欲張りな法律である

どんな法律も、その第一条は「法目的」が書いてあります。まずは著作権法のそれを見てみましょう。

著作権法 第一条  この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

最後のところ、「文化の発展」に寄与することを目的すると書いてありますよね。”文化の発展”と書いてあるということは、あまりビジネス目的ではないんでしょうか。

ここで、同じ「知的財産法」のもう一つの柱ともいえる、「特許法」の第一条を見てみましょうか。

特許法 第一条  この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。

こちらの最後は、「産業の発達」に寄与することを目的すると書いてあります。はっきりと「ビジネス目的」ということですよね(※特許権や商標権は、「産業財産権」ともいわれます)。

つまり、同じ知的財産に関する法律でも、特許法はビジネスありきだけれども、 著作権法は、必ずしもそうではないということですね。だって、文化は、必ずしも「儲かればいい」「財産的価値が創出したい」という目的だけで判断されるわけではないですから。

したがって、(今後ご説明していきますが)、著作者の「お金を積まれたって、俺の著作物はそういう扱いはさせないよ!」というような、著作者の”想い”を守る条文があるんです。

しかし、人気の著作物に関する権利は、やはり、財産的価値をもってしまいますよね。といううことで 結局、著作権法は「ビジネスについてのルール」も定めることになるわけです。

文化的な側面と、ビジネス・産業目線の側面、両方を含んでいるという点にわかりづらさがあると考えます。 そして、それらの側面を担保するためとも関係するんですが…

【わかりにくい理由 その④】「著作権」法って言ってるのに、「著作権以外」の権利も定めている!

これって、どういうことなのでしょうか?

著作権法には、大きくざっくりわけて、計4つの権利が定められています。


「著作権」法と言っているのに、それ以外の権利も定められているのが、わかりにくいですよね。

さらにですが、これら4つの「権」は、それぞれが1つではなく、「〇〇権から成る4つの束」というイメージなんです。つまり「〇〇権」はもっとたくさんあると。

このややこしさに対応するためには、細かい「〇〇権」に入ってしまう前に、上の4つの大きな「〇〇権」のくくりを、ざっくり理解しておくことが重要なんです。

とはいえ、この4つを一度に説明するのは無理なので、今日はこれだけ簡単に説明しますが、

「出版権(第三章 ※79条~)」

これ、特に音楽業界の人は要注意なんですが、音楽業界でよくいう「(音楽)出版権」とは全く関係ありません。

第三章で定められている「出版権」とは、「設定」出版権ともいわれるもので、要は、書籍などのいわゆる”出版”にあたり、書籍などを執筆(創作)した著作者がもつ著作権を、書籍の出版社に譲渡・移転せずに、その出版社だけが独占的に出版できるように”設定”する権利と、それにまつわるルールが定められているわけです。

では、音楽業界でいう「(音楽)出版権」とは、何のことなのでしょうか?それはざっくりいえば、曲の「著作権」のことです(なんでそれをわざわざ”出版権”と呼ぶのかも、追って説明していかければですね)。

次回からは、特に重要になってくる「著作権」「著作者人格権」「著作隣接権」について、ざっくりと押さえていきたいと思います。
次回はこちらです → http://onion-tmip.net/update/?p=878 )