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◎(著作権)<新型コロナ>著作物の補償金「国が負担を」 文学、音楽、映画 オンライン授業で使用が可能に
https://www.tokyo-np.co.jp/article/7147

学校への通学がなかなか完全な状態で再開されない中、オンライン授業の必要性・重要性が高まっています。学校の授業では、さまざまな著作物を利用することが多いわけですが、オンライン授業でもその利用がしやすくなるように、著作権法改正(及び前倒しの施行)と、対応する団体が設立されました。ここについて、解説をしてみたいと思います。

(1)そもそも、学校での著作物の利用は、なぜ無償・無許諾でOKなことが多いのか

他人の著作物を、無断(無償・無許諾)で利用すれば、著作権侵害ですよね。では、なぜ学校での著作物の利用の多くは、それでもOKなのでしょうか。

著作権法の30〜50条には、「制限規定」といって、「こういうケースにあてはまる場合は、著作者の権利が制限される=誰でも、著作者の許諾を得ずに(規定されている条件・範囲で)利用していいよ」という趣旨の条文が定められています。有名なのは、30条「私的使用目的の複製」はOK、というやつです。

教育に関連する制限規定も多いのですが、普段の授業に関する主なものとして、メインとなる制限規定が、

*35条「(学校その他の教育機関における複製)

です。

今までも、学校において、先生や生徒が授業で使用する目的で
・著作物を「複製」することが可
(ただし、著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、著作権者の許諾が必要)
となっていました。

つまり、授業のために必要と認められる限度の部数、態様(たとえば市販の本の必要な部分だけ)であれば、「無許諾、無償で」複製できたわけです
※複製の中には、録音・録画も含まれます→授業で見せるために、テレビ番組を録画することも、この規定のおかげでOK(→それを教室で見せるのは、38条でOK)。

ただ、オンライン授業(遠隔授業)には、この35条の内容だけでは不十分でした。

(2)オンライン授業に対応する著作権法35条改正(平成30年)

現在、考えられる授業のスタイルとしては、まず、
① 対面授業 ←通常の学校の教室での授業
があるわけですが、

そこに「オンライン授業」といっても、

②遠隔合同授業 ←対面授業を、離れた場所にあるキャンパスに、ネット等で「同時」中継するイメージ
③ スタジオ型遠隔授業 ←Zoom等により、講師だけがいる場所から、「別の場所」にいる生徒に、「同時」中継するイメージ。いわゆるオンライン授業。
④オンデマンド型遠隔授業 ←授業内容をアップロードしておき、生徒は「いつでも」授業を受けられるスタイル

という分類ができるわけです。

従来の著作権法35条(無許諾・無償でOK)の対象は、
①対面授業のための複製と、②遠隔合同授業に伴う公衆送信のみが対象でした。
また、その場合でも、複製した著作物の配布は、直接手渡しするか、個別に郵送するかが対象でした(←クラウドでの共有はおろか、メールでの資料の事前送付なども、対象外でした)。

それが今回の改正により、「有償」ではありますが(、決められた補償金を特定の団体に払いさえすれば)「無許諾」で利用できることとなったのが、以下の行為です:

*①〜④のすべてのスタイルの授業のために、資料を公衆送信すること
→メールで送付やクラウドなどで共有。授業と同時でなくてもOK。
*「③ スタジオ型遠隔授業」において、著作物(資料や講義映像)を同時送信すること。
*「④オンデマンド型遠隔授業」のために、著作物(資料や講義映像)をアップロードすること。

 

(3) 補償金の支払先「SARTRAS」の設立と、令和2年のみ無償の特例

法改正と連動して、「一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS。サートラス)」という団体が設立されました。
https://sartras.or.jp/
こちらに、学校単位で補償金を支払うことになります。

この制度は、2021年5月までに始まることになっていたのですが、新型コロナウイルス感染拡大でオンライン授業へのニーズが高まり、新制度の早期実施を求める声が上がったため、この制度の前倒し実施と、2020年度は特例として0円で申請。改正著作権法の施行政令により、今年の4月28日の施行が決まったものです。

たとえば、音楽の著作物についても、SARTRASに補償金を支払えば、JASRACと連携して処理されます。また、録音された音楽や録画された映像には、「著作隣接権」がありますが、それも処理対象になっています(→芸団協、レコ協等)。

(4) 「SARTRAS」の対象となる「学校」とは?

著作権35条の書き出しは、「学校その他の教育機関営利を目的として設置されているものを除く。)において~」とあります。つまり、「学校その他の教育機関」が対象なわけですが、いわゆる幼稚園(保育所、認定こども園、学童保育も)、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、各種学校、専修学校、大学等は、当然ながら対象となります。わかりづらいところとしては、「学校設置会社経営の学校(営利目的の会社により設置される教育機関」がありますが、こちらは、特例で同法の対象になるそうです。

では、対象から除かれている「営利を目的として設置されているもの」とはというと、
・営利目的の会社や個人経営の教育施設
・専修学校または各種学校の認可を受けていない予備校・塾
・カルチャーセンター
・企業や団体等の研修施設
などが挙げられています。

これらの授業において、他人の著作物を利用する場合は、このコラムの書き出しにあった、著作権の大原則…「他人の著作物を、無断(無償・無許諾)で利用すれば、著作権侵害」となってしまいますので、権利者や、権利団体に適切な許諾を得るようにしてください。

ONION商標では、著作権に関するコンサルティングも行っています。お気軽にご相談ください。