CMなどをみていると、その最後にキャッチフレーズやスローガンが印象に残るものは多いですね。中には、ひとつの文章になっているような長いものもありますが、語呂・リズム感がいいものを、繰り返し聞いていると、結構覚えてしまうものですよね。
ところで、こうしたキャッチフレーズは、商標登録できるのでしょうか?
ざっくりとした結論を言えば、
「以前より登録しやすくなっている」といえます。
しかし、この話をしていくと、結局は
「商標登録って、なんのためにするの?」「そもそも商標ってなんなの?」
という話につながっていくんですね。さて、どういうことか。さっそく始めてみたいと思います。
まず、商標登録が認められるための要件というのは、いろいろあるのですが、「早い者勝ち」(その商標を使用する商品・サービスと重複する範囲で、他の人が、先に同じか類似の商標を出願していないこと)という要件以前に、まず大前提となるのが、
「商品等の”目印”となる力が備わっているか?」
という要件です。他の人が販売する商品等としっかり区別できるかどうか。この力のことを「識別力」と呼び、その力がある”出所識別標識”こそ商標なんですね。つまり、識別力がなければ、商標として機能しないので、いくら先に出願しても、誰にも登録が認められないんですね。
では、どのような商標が、「識別力がない」商標なのでしょうか。商標法では、3条1項各号にそれを定めていまして、どれかに該当すれば拒絶理由となります。
3条1項各号とは、(1)号から(6)号までありまして、
(1)普通名称
(※商品「スマートフォン」について、商標「スマホ」といった略称も。)
(2)慣用名称
(3)記述的名称
(※商品の品質や、サービスの質などを説明するにすぎない商標)
(4)ありふれた氏・名称のみ
(5)極めて簡単かつありふれた標章のみ
さらに、
「(1)〜(5)号には該当しないものの、やっぱり『識別力』がないよねぇ」という商標に通知される(6)号
から構成されています。そして、
商標法とは別に、商標法に基づく審査判断について基準を示した「商標審査基準」というものがあり、3条1項6号に該当するものとして、
かつては
「標語(例えば、キャッチフレーズ)は、原則として、本号の規定に該当するものとする。」という記載があった
んですね。「あった」と過去形にしたのは、それが、
平成28年年4月の、大幅な審査基準の改訂に伴い、削除された
からです。
つまり、前述の「(キャッチフレーズが)以前より登録しやすくなっている」と述べたのは、この記載の削除によるものなのです。
では、どんなキャッチフレーズにも識別力が認められ、今後は商標法3条1項6号該当として拒絶されることは無いのでしょうか….?
….答えはNOです。わかりづらい?要は
「今までどおり、拒絶されるキャッチフレーズもあるよ」
ということです。これはどういうことなのでしょうか。
その理解のためには、そもそも、なぜ「キャッチフレーズ等は商標登録対象外」と(かつて)されていたのか、を考える必要があります。それは「需要者(=取引者+消費者)が、出願商標の意味合いについて、出所識別標識ではなく、『商品又は役務の宣伝文句や企業理念等』のみとして認識することが多い」ためでした。
そして、「標語(例えば、キャッチフレーズ)は、原則として、本号の規定に該当するものとする。」という記載が削除された商標審査基準には、現在でも、
(1) 出願商標が、その商品若しくは役務の宣伝広告又は企業理念・経営方針等を普通
に用いられる方法で表示したものとしてのみ認識させる場合には、本号(※商標法3条1項6号の拒絶理由)に該当すると判断する。
という基準は残っています。
つまり、現在の審査基準では、商標が、見た目がちょっと長い、標語、キャッチフレーズ、キャッチコピー、スローガン風に見えるからといって、即拒絶とはならなくなった、その商標が、「その商品若しくは役務の宣伝広告又は企業理念・経営方針等としてのみならず、造語等としても認識できる場合には、本号に該当しないと判断する。」というように、それが商標として機能するのかどうかで、判断してくれるようになった、ということなのです。
裏を返せば、
純粋に、企業の「標語」「キャッチフレーズ」や「スローガン」、商品等の宣伝的「キャッチコピー」でしかない場合は、やはり商標登録は認められない
のです。
考えてみると、確かに、このように商標審査基準が改正される前から、商標登録が認められていた、「標語っぽい商標」を思い出してみると…
・登録5081832(第32類他)「カラダにピース」(アサヒ飲料株式会社)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2006-097501/01FCF2A840A3C2F9EA444082F009273A5C7EE9F48C13A69488411AFA86C88798/40/ja
・登録5159386(第35類他)「まだ、ここにない、出会い。」(株式会社リクルートホールディングス)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2007-067422/A599009E125631CDA5ABBC5DBAF9D44F72B7E66C8007AE38A03D4A0BA45605F5/40/ja
・登録5887037(第30類他)「自然を、おいしく、楽しく。」(カゴメ株式会社)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2016-037463/D5DB9CEE60C57390BE62EEC87D57846198739C0C3025E3497D142A1F7FE78C51/40/ja
・登録6118930(第35類)他 「NO MUSIC, NO LIFE.」(権利者:タワーレコード株式会社)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2018-017996/38E4163CD31E287A624B9E1D6AD4FE0931CAC7D852E1E749F3E58AD63571D5B1/40/ja
…いずれも、それに接したときに、その会社が提供している商品やサービスをイメージさせてくれる、つまり(ただのキャッチフレーズ、キャッチコピーであるだけでなく)「商標としても機能しているな」と思わせてくれるものばかりです。
もちろん、上記はいずれも大企業の登録商標であり、多くの宣伝に使用されたことで、イメージが定着した、すなわち「識別力」を獲得した、という面もあるでしょう。でも、個人やスタートアップ企業の皆さんでも、
*「ちょっと長めの、キャッチフレーズっぽくも見える文字列だけど、『商品やサービスの目印として、これからしっかり使っていくんだ!』という意志をもってつけたネーミングである」
のなら、時間はかかるかもしれませんが、商標登録のチャンスはありますし、登録することで(これから積み重なる)ブランド力を守ることにつながるので、出願を検討すべきです。また、
*「最初は宣伝用のキャッチコピーだった」「自分がひろめた決め台詞だった」のが、いつの間にか自社の商品に欠かせない目印になっている
なんて場合は、商標登録できる可能性が高まっていますので、いち早く出願をすべきです。
一方、
*「企業のキャッチコピー/スローガンを策定したから、念の為商標登録しておくか」ぐらいだと、(登録できる場合もありますが)意外と苦戦する、最終的に登録できないこともありえますし、
もっとよくないのは
*「これから流行りそうなフレーズ思いついたから、他の人に使わせないように、商標登録して独占しちゃおう」みたいな動機だと、
商標として使用するのかどうかも不明ではなかなか登録は困難ですし、場合によっては「誰もが使いたいフレーズを、独占しようとしているのか!」と、世間から非難され、炎上してしまうリスクすら予見させます。
さて、みなさんの場合はいかがでしょうか?意外と商標の本質論と関連してくる「キャッチフレーズと商標」。本稿をお読みいただいてご理解いただいても、個別具体的な登録可能性については、なかなかご判断がつかないこともあると思います。そんなときこそ、ONION商標の弁理士に、お気軽にご相談くださいね。
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