2010年、足繁く通った渋谷のCDショップの跡地が、「ファストファッション」を標榜するアパレル店に変わったのは衝撃でしたが、そのアパレルも撤退して早数年。いくら安いからといっても、短いサイクルで「使い捨て」る時代は終わりました。

そして現在。着古したり、トレンドと少しズレてきたファッションアイテムを「長く着る」ために、それを

「カスタマイズ」「リメイク」するという発想・手法

が人気となっていますよね。エコとかSDGsの観点だけでなく、元々より価値が上がったり(「アップサイクル」)、うまくいけば「一点モノ」としての魅力も加わりますしね。

そうした対象として、より魅力的なのは、人気ブランドの商品ではないでしょうか。(ブランド力があるのも魅力だけど)「そもそもの品質・材質が優れている」ことが多いですからね。

ところが、そのような行為について、このようなニュースを目にすることもあります。

◎買い物中の警察官が発見!“本物のブランドロゴ”使い自作バッグを製造 商標法違反で50代の女を逮捕(NST)
https://www.nsttv.com/news/news.php?day=20220823-00000020-NST-1

これは、「本来のブランド品とは全く関係のない自作品・リメイク品に、、全然関係ないブランドのロゴワッペンを貼って、販売している」

という事例ですから、「そりゃ、ダメだろうな」と腹落ちすると思うんですね。いわゆる「バッタもん」の製造と変わりませんから。

しかし、このようなニュースを聞いて、どう感じられるでしょうか。

◎「ナイキ」がカスタムスニーカーショップと和解 無断カスタマイズは商標権侵害(WWD)
https://www.wwdjapan.com/articles/1648221

「和解」という内容ですが、その前提として、「(靴の)カスタマイズ自体が、商標権侵害」という合意に立っています。

上記は海外のニュースではありますが、日本の商標法にも当てはめても、

・「あるブランド品を、元々ついていたロゴマークなどを残したまま、形状などをカスタマイズして、販売する」
・「あるブランド品から、元々ついていたロゴマークを削除して、販売する」

などでも、商標権侵害・商標法違反になり得るのです(※ロゴマークが登録商標である前提)。
これについては「えっ、何で?」と思われる方も多いのでは無いでしょうか。

こちらに納得していただくには、商標権の基本的な「機能」についての説明が必要になってきます。

実は、商標権侵害とは、「他者の登録商標やそれに類似した商標を、無断で付した商品を販売する」というような、わかりやすい類型だけでなく、

商標権の基本的な「機能」を侵害した場合にも、侵害が問われることがあるのです。

では一体、商標権の「機能」とは、一体何なのでしょうか。主に2つです:

① 出所表示機能

「その商品は、商標の権利を持っているところが大元として、世に送り出しているものですよ」ということを保証する機能。

② 品質保証機能

「その商標がついている商品は、いつも一定の品質を備えていますよ」ということを保証する機能。

これらが害されると、
・取引者や消費者も「誰(が大元)の商品なのか」がわからなくなりますし、商標権者のブランド価値も害されるため問題となるため、商標権侵害が問われることとなるのです。

この考え方を、リメイク/カスタマイズに当てはめていくと、

*「リメイクし、他人の登録商標が残ったままで販売する場合」

→他者の真正商品(オリジナル品)との「混同を生じる」、又は、オリジナル品の「品質を勝手に変更したもの」であるとして、
出所表示機能、品質保証機能を害し、商標権侵害のおそれがあります。

*「リメイクし、他人の商標をとりはずして販売する場合」

→(他社の商品から)勝手に登録商標を剥奪・抹消したものとして、出所表示機能を害したことになり、商標権侵害のおそれがあります。

商標権侵害・商標法違反は、個別の事案ごとにセーフかアウトかは差が出てきますので、「おそれがある」程度の表現にしていますが、実際、「アウト」と判断された判例もあります。たとえば、

・「カルティエの正規品の時計等に第三者が無断でダイヤモンドを埋め込んで販売した事例」(東京地裁17年12月20日判決、平成17年(ワ)第8928号 商標権侵害差止等請求事件)

⇒商標権侵害が認められ、販売の停止等、製品の破棄及び損害賠償(金3498万2467円及びこれに対する平成17年5月21日から支払済みまで年5分の割合による金員)の支払いが命じられました。

この判決では、

「原告製品の品質にも影響を及ぼす改変を施したものは、原告商標の出所表示機能及び品質保証機能を害するため商標権侵害に該当する」

と判断しています。
(埋め込まれたダイヤモンドの品質も、悪いものだったようです)。

また、以下は、ファッション/アパレルとは関係ありませんが、「商標権の機能侵害」事例として参考になるものです。

・「園芸肥料(正規品)を、無断で小分けにして販売した事例(通称:マグアンプK事件)」(大阪地裁平成4年(ワ)第11250号)

真正商品の小分け販売(登録商標を付して販売→商標権者からの警告後は登録商標を削除して販売)について商標権の侵害が認められた事件です。

この判決では、商品が真正品であるか否か、商品が小分け等によって品質に変化をきたす恐れがあるかにかかわらず、

流通過程で商品から「(登録)商標を剥奪抹消」すること自体が、商標の機能を侵害することになると判断しています。

(リメイクにより、品質が良くなる・悪くなるは問題ではなく、オリジナルから登録商標を削除してしまうこと自体が、商標権侵害となり得る、という判断です)

もっとも、自分が個人的に使用する範囲で、リメイク/カスタマイズをして着用する限りは、商標権の観点からは問題とならない可能性のほうが高いのですが、

それをビジネスとして行う場合(すなわち、他者のブランドの、リメイク/カスタマイズ品の常時販売)は、かなりリスクを伴う行為と言えますし、たとえ個人レベルだとしても、そうした商品をネット等で恒常的に販売する行為は、同等にハイリスクであると言えます。

また、今回は「商標法(商標権)」にフォーカスして述べてみましたが、他の法律(不正競争防止法 等)に違反する可能性もありますので、くれぐれもご注意ください。

 

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