ONION商標・弁理士の山中です。

子供の頃からヒット・チャートが大好きな自分。母に初めて激しく反抗したのも、小学生低学年のとき(78年か、79年)に、「21時までに寝ろ」という母に対し、「21時からの『ザ・ベストテン』を見なきゃ寝れない!」という理由でした(苦笑)。

https://www.tbs.co.jp/tbs-ch/special/the_bestten/

その後、「セールスだけで順位が決まるのは、なんか信用できるな」とオリコン(※ニッポン放送で、土曜午後に番組がありました)のファンになり、同局の「ポップス・ベストテン」で洋楽も克服すると、83年頃からは「アメリカにもチャートがあるのか!(Billboard)」と知り、84年頃には「自分の好きなアーティストは、ほとんどイギリスじゃないか」とUKチャートをチェックするようになり…今に至る(もちろん、熱意はだいぶ下がりましたがという感じです。

なんでヒット・チャートが好きなんだろう?本来は業界にとってのマーケティング指標ですが、しかし、当時のヒットチャートは各国、「様々なジャンルの楽曲がランクインする」「毎週、順位が適度に変化する」「新しいアーティストを知ることができる」という点で、

エンタメ・コンテンツとしてもすごく魅力的

だったわけです。

しかし、チャートの構成要素となるデータは、近年大きく変わってきました。オリコン同様、レコード・CD等のセールスだけで順位づけしてきた英公式チャートも、セールスにラジオ・エアプレイを加味する米Billboardのシングル・チャート(HOT100)も、音楽の聴かれ方の変遷に伴い、ダウンロード・セールスも加味するようになり、近年では当然ながら、

ストリーミング・サービス(サブスク)の再生回数、YouTube等動画共有サービスの再生回数が加味

されるようになりました(オリコンも2018年からは、ダウンロード、ストリーミングの「合算ランキング」を発表しています)。

私は、そうした「再生回数」が集計要素となることには全く否定的ではない(それが聴かれ方のメインになっている以上、むしろ当たり前と思っている)のですが、いくら集計方法が正確で妥当だとしても、その結果が、「エンタメ・コンテンツとしてのヒット・チャート」としては完璧ではない、ということは起こり得ます。

たとえば、時間をかけてヒットする曲が増えたのは喜ばしいのですが、一旦ヒットすると、なかなかチャートから落ちていかない、超長期間チャートインする曲が増えてきました。カラオケ同様、その曲が徐々に広まっていくということもあるんでしょうし、ヒット曲がさまざまなプレイリストに収録され、聴かれ続けるという効果も大きいのかもしれません。いずれにせよ、「毎週、適度に動きがあるランキング」という魅力には乏しくなってしまいます

(…合算ランキングが誕生する前のオリコン、つまり2010年代前半の「CDセールスだけで作られるランキング」では、ファン層が固いアーティストの作品が発売週のみ上位に初登場し、2週目には100位以内からも消えてしまう…というめまぐるしさに文句を言っていたで、わがままもんですが)。

また、近年は

「人気アーティストのチャート独占」

という現象も起き得ます。レコード/CD時代のように「シングル・カット」をしなくても、楽曲が多く再生されれば、どのアルバム曲だってシングル・チャートに入り得るわけですから。例えば、イギリスのオフィシャル・チャートでは、2017年3月10日付、エド・シーランの当時最新アルバム『➗(Divide)』収録の16曲が、すべてTOP20に入ってしまう、ということが起きました。
https://www.officialcharts.com/charts/singles-chart/20170310/7501/

そして、2022年11月5日付の米Billboard HOT100では、テイラー・スウィフトの当時最新アルバム『ミッドナイツ』からの楽曲が、TOP10を独占してしまうという事態が起こりました。
https://www.billboard.com/charts/hot-100/2022-11-05/

これらも、正しく集計した結果なんでしょうし、それぞれのアーティストの人気を示す偉業なわけですが、「様々な、新しいアーティストを紹介する」というチャートの役割からは、あまり好ましい事態ではないですよね(ちなみに、イギリスのほうはその後、チャートルールを変更し、「同じアーティストの曲は同時に3曲まで」しかチャートインできないこととなりました)。

そして、クリスマスの時期になると、こういう現象も起こります…

「クリスマス・ソングの名曲が、毎年上位を独占してしまう!」

幸か不幸か、日本で最も定番ともいえるクリスマス・ソングである「クリスマス・イブ」は、山下達郎さんがストリーミング解禁されていないので、日本のチャートでそういう事態は起きていないのですが、アメリカもイギリスも、11月末ぐらいからは定番ソングが毎年のように上がっていって、チャートを独占してしまうのです。こうなると、この時期にわざわざ(クリスマス関連ではない)新曲を発表するアーティストは、いなくなってしまいますよね。

ただ、そんな状況も、オールド世代である僕らには、嬉しい事態も引き起こします。「かつて、1位を取れなかった曲が、何十年もたって初めて1位を獲得する」というケースです。

94年に日本でもミリオンセラーとなった、マライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス(All I Want For Chrismas Is You)」は、当時アメリカでは1位になれなかったんですね。Billboard HOT100の当時のチャートインのルールは、「シングル盤の発売をしているものが対象」(で、当時はシングルカットされなかった)ため。それが2019年12月16日、リリースから25年後、初めてBillboard Hot 100で1位となったのです。

また、イギリスでは、こちらも名曲・Wham!の「ラスト・クリスマス(Last Christmas)」は、84年リリース時は、チャリティ・ソング「Do They Know It’s Christmas?」が歴史的なセールスを記録したため、2位止まり。しかしこちらも、2020年のクリスマス週、ついに同国で初めて1位を獲得しています。

その点、イギリスでは、今年はこの曲に、クリスマス週の1位になってほしいんだよなぁ。87年に2位を獲得して以降、近年は毎年上位に上がってくる曲ですが、一度も1位は獲得していないんです。

女性Vo.をつとめたカースティ・マッコールは、00年に事故で早逝しているのですが、この12月、共演するThe PoguesのVo. シェイン・マガウアンも亡くなってしまったのでね(…こちらは、生きているのが奇跡といわれるほど、破天荒な方でしたが)…

…え、また今回も、商標と何にも関係ないじゃないか、って? じゃあ一ネタぐらい付け加えしょう。「Billboard/ビルボード」も、「オリコン(創業時は「オリジナル・コンフィデンス)」も、しっかり商標登録はされています。ただ、かつては、指定区分は「第16類」がメインでした。これは、当時のヒットチャートは、「印刷物」「雑誌」といった、この区分に分類されている商品のブランドとして使われていたからでしょう。

その後、平成3年には役務商標(サービスマーク)も登録ができるようになったことから、第35類(「市場調査」等)や、第41類(「電子出版物の提供」「興行の企画・運営又は開催」)といった区分も指定されるようになっていますし、さらにそのブランド力を生かした商品化(マーチャンダイジング)のために、幅広い商品の区分が指定されているようです。

一方、ヒットチャートの企業とは無関係な権利者により、非音楽の分野の商品・役務の範囲で、これらの商標が登録されているようです。このあたりも、商標登録の制度の原則の勉強になりますね。

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
好評です! ONION商標の新サービス
ロゴ作成+商標登録 =「ロゴトアール®」
https://logoto-r.com/

ロゴ作成から商標登録完了まで、弁理士が一括サポート。
いいロゴに®もつけましょう!
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲