近年、以下のような音楽ニュースをよく目にするようになりました。

「日本の音楽アーティストの楽曲が、海を超え、外国のオーディエンスを獲得している」

70s/80sのニューミュージックの一部が、”CITY POP”として評価されたり、あるいは最近の楽曲が、アニメやゲーム、映画とのタイアップを通じ、受け入れられているということです。そしてそれらの多くが、「日本語詞」のまま聴かれているのです。

これはとても喜ばしいことですね。ONION商標の弁理士たちは、英語で歌われる、いわゆる「洋楽」も大好きなのですが、全て英詞の意味をわかって聞いているわけではありません。それでも、メロディやビート、雰囲気、それを演奏するアーティスト自身の魅力から、それを好んで聴いているわけです。こうした「理解できない言語で歌われた楽曲でも、好きになれる」というのは日本のオーディエンスの特色で、60s/70sには、フランス語など「非英語」詞で歌われたヒット曲も多くありましたし、もちろん近年のK-POPだってそうですよね。

一方、欧米、特に英語圏の国々のリスナーは、長年(いくつかのノベルティヒットを除けば)英語詞のものしか受け入れてきませんでした。それが、スペイン語はもとより、韓国語、そしてこれから、日本語詞のものも受け入れてくれるようになるなら、そのほうがフェアーな気がします。

さて、日本のアーティストの海外進出の話にもどりますが、当然現地の「ファン」は、日本のアーティストの音源をYouTubeやストリーミングで聴くだけでは飽き足らず、

「ライヴ」

も見たくなります。

かつて、日本のアーティストが海外でライヴをやるというと、「話題作り」「現地の日本人向け」と揶揄される時代もありました。しかし現在は、主に現地の国籍のファンが埋め尽くした大きな会場で、ツアーをするアーティストも決して少なくありません。

そして、会場では、アーティストの名称やロゴなどを冠した

「マーチャンダイジング」(物販、グッズ)

も飛ぶように売れていることでしょう。

そうなってくると、心配になるのが、そうした名称やロゴの「商標権」です。

「ちゃんと、日本で商標登録してますよ!」

…たしかに、海外進出を果たすようなアーティストであれば、既に日本でも地位を固めていることが多く、日本では商標登録(=商標権の取得)をしていることは多いでしょう。

しかし、こういう質問もよく受けます…

「あれ、日本で商標登録したら、外国でも守られるんでしたっけ?」

残念ながら答えは「NO」です。商標権が欲しい国に出願して、商標登録をしなければなりません。

これは、著作権を主に扱っていると陥りやすい勘違いなのです。

洋楽のような「外国曲」を、日本で勝手に利用してはいけないことは、一般リスナーだって感覚的にわかっていますよね(日本の曲の海外での利用も同様です)。しかし、本来的には、その曲(著作物)の著作権は、「著作物が創作された国」の中でしか効力を持ちません。

ただし、主要国であれば加盟している「ベルヌ条約」や「TRIPS協定」といった国際的な条約・協定により、「加盟国の著作権を、お互いに守りましょう」ということで、効力が他の国にも及んでいるのです。著作権の場合は、手続きなく、創作された瞬間に権利が発生することもあって、余計に勘違いしやすいかもしれません。

そして、その他の知的財産権…特許権や、意匠権、そして商標権も、著作権と同様「国ごと(※一部、地域ごと)」にしか発生しません。さらに著作権と違って、これらの権利は「登録しないと発生しない」わけです。

それでもまだ、特許権・意匠権は「外国で登録していなくても、外国で第三者によって取得される可能性は低い」という側面はあります。なぜなら、各国での登録要件に、「世界基準での」新規性・進歩性(※意匠権は創作非容易性)が問われるからです。つまり、世界中のどこかでその発明やデザインが既に公開されていれば、新規性が喪失し、誰かが他の国で取得することもできなくなるためです。

しかし、商標権には、そのような「新規性」の要件はありませんよね。つまり、原則、

商標権は、その国ごとの早い者勝ちになってしまう

ということです。

海外でファンを獲得し、ライヴツアーやマーチャンダイジングをしているアーティスト、またはそのスタッフのみなさん、
もしまだ(ツアーの対象となっている)国で商標登録をしていなければ、

いますぐ、外国各国での商標登録出願の準備をしてください!

脅すようで大変心苦しいのですが、特に「英単語ワンワード」とか、「アルファベット3文字、4文字」のアーティスト名だと、剽窃的なものも含め、他者が既に商標登録している可能性も否めません。

漢字表記のアーティスト名も、中国始めアジア各国では危険です。

外国での商標登録には、複数の方法があります:

【本当はコワイ商標の話】外国で商標はどう保護する?(1) <ONION商標>
http://onion-tmip.net/update/?p=207

ONION商標の歴史は、外国での商標登録の経験値を磨いてきた歴史でもあります。外国での登録を専門にしている弁理士事務所も多くありますが、そうした事務所に負けないサービスを、リーズナブルな弁理士費用で提供しています。御見積までは無料ですので、お気軽にご相談ください。