ONION商標・弁理士の小野尾です。

桜の見ごろもあっという間に過ぎて、青葉の季節が近づこうとしています。桜や青葉で思い浮かぶものと言えば・・・そう!競馬ですね(桜花賞と青葉賞って、なんのこっちゃ)。

競馬場が市内に2つもある土地で育ったので、親によく連れていかれてましたし、こどものころからスポーツ新聞の競馬面もよく見ていました。競馬面には、レースに出走する馬の名前の他に、血統構成、調教時計、近走の成績、関係者のコメントなど、ありとあらゆる情報が詰まっています。

競馬は私にとって、弁理士試験を突破するための頭脳を育んでくれたスポーツといっても過言ではありません。

そんな私も、競馬の血統について特に意識するようになったのは、ゲーム「ダービースタリオン DERBY STALLION」(商標登録第2651169号)をプレイしてからですね。我々の世代だとそんな人は多いのではないでしょうか。当然実際の競馬とは違うけれども、「タマモクロスは安定Cだからー」みたいな発言を実際の競馬場でも聞いた記憶があります。

ちなみに、この「ダビスタ」(商標登録第3140358号)ですが、初期のころ、アグリキャップ、メジロマッコイーン、サッカーボール、コウカイテイオーなどの往年の名馬がまた強くて勝つのが大変で・・・って、ん?騎手も、小田部か滝登が乗ってくれるかどうかでテンションが全く違う・・・って、ん?

 

なんか、名前の様子がヘンです・・・(ダビスタ好きなら通じますかね)。

 

実際の馬名は、オグリキャップ、メジロマックイーン、サッカーボーイ、トウカイテイオーですし、騎手も、岡部と武豊です。名前の使用許可が下りなかったのか、当時は名前を少し変えてゲーム内に登場していました。競馬シミュレーションゲーム「Winning Post」(商標登録第3246782号)も同様に実名ではなかったと記憶してます。

競馬関連のゲームでいえば、オーナー馬主になるタイプのシミュレーションゲームの他に、「騎手になって実際に馬を操作するレースゲーム」があります。

有名なのはそう、ギャロップレーサー GALLOP RACER(商標登録第4062561号)です。

このゲームも昔、都内の某CD屋さんでアルバイトをしていた頃に、ゲームセンターで同僚とよくやりました。当時なぜかこのゲームは、馬名が実名だったんですよね~。その後、次作で一度実名じゃなくなって、また実名戻る。

その数年後、弁理士試験の勉強をすることになり、その理由を知ることになるとは思いませんでした。

競走馬の馬名の無断使用について、馬主さんたちからゲームソフトの製作販売の差止め及び不法行為に基づく損害賠償が請求されていたわけですね。

この時に問題となったのが、パブリシティ権です。

簡単に説明すると、有名人の肖像や名前にはお客さんを引きつける力(いわゆる「顧客吸引力」)があるから、それをその有名人が独占的に利用できる権利(他人が勝手に商売に使っちゃだめよということ)で、法律ではなく判例で認められた権利です。

競走馬は人ではないですが、名馬のぬいぐるみ等のグッズは確かに売れます(実際、オグリキャップとかは社会現象にもなりました)ので、お客さんを引きつける力はありますよね。

また、馬主さんからしたら、ゲームに自分の愛馬が実名で出てて、それが自分が思ったより強くない、そんな風に感じたら文句を言いたい気持ちもわからないではないです。

この裁判、地裁では損害賠償のみが認められました。
地裁判決で面白いのは、GⅠに出走したことのある馬については賠償責任を負うと認定された点です。いや~、いくらGⅠに出ようが着外~18着だとさすがにお客さんを引き付ける力はないでしょと。

その後、高裁では、GⅠ優勝馬に限定して、損害賠償を認めていま
す。うーん、これはこれで・・・
GⅠを勝っていなくても、ナイスネイチャやステイゴールドのように勝ちきれない馬がすごく人気になったりもしますから(そういう私も一番好きな馬はロイヤルタッチです。次にキングヘイロー、その次にナリタトップロード、 みんな善戦マン。)、1~3着経験、せめて着順掲示板に乗るくらいすればまあ、お客さんを引き付ける力はあるでしょと。

そして、最終的には、最高裁で覆りました。

最高裁判決でも、競走馬の名称等には、著名人の名称等が有するのと同じように「顧客吸引力」を有するものがある(→馬名の無体財産)とは認められたものの、
全体の結論としては「馬主の権利が及ぶのは馬自体の所有支配までで、馬名の無体財産までは及ばないので、賠償は認めない」というものでした。
これが「物のパブリシティ権は認められない」とされている根拠ですね(…残念ながら、競走馬など動物は民法上「モノ」なんですよねぇ。自分みたいな人間の感性とは相容れないところですが)。

ギャロップレーサーの裁判は、パブリシティ権の話でしたが、強い競走馬のグッズは売れますし、名前はブランドになり得ますよね。競走馬の馬名を商標登録で保護した事例はないかなと探してみたところ、ありました(正確には種牡馬ですが)。

*ノーザンテースト(登録第3057535号他)
*サンデーサイレンス(登録第4195534号他)

社台グループの大躍進を支えた2頭の大種牡馬の名前が登録されていました。いずれも、社台グループの株式会社ノ―ザンホ―スパ―クさんが保有しています。

一時、サンデーサイレンスの帽子を被ってるおじさんを競馬場でいっぱい見かけたなぁ。

以上、普段からこんなことを考えて競馬を見ているわけでは当然ないわけですが、そういえばこんな裁判もあったなぁ、と思い返しながら競馬と知財について書いてみました。

 

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