「意匠」登録出願にも、商標同様に「早期審査制度」はあったのですが、利用頻度はやや低かった印象です。理由としては、「そもそも審査着手までの期間が、比較的短い」という点です。意匠の物品にもよりますが、2025年3月時点でも、出願から「6ヶ月以内」には審査着手となっています。
そういうこともあってか、従来の早期審査の対象は、かなり限定されていたのです(⚪︎権利化に緊急性を要する実施関連出願、⚪︎外国関連出願、⚪︎震災復興支援関連出願 のみ)。
しかし、2025年4月から
「スタートアップ企業による実施関連出願」が早期審査の対象に追加されました。
■スタートアップ向け 意匠分野の早期審査が2025年4月から始まります!(IPBASE)
https://ipbase.go.jp/news/2025/03/news-250328.php
この改正の背景には、「信用リスクが高いとみられがち」な新興企業の価値向上につなげ、投資家からの資金調達をしやすい環境をつくる、といった目的があります。
たとえば、価値の高い知的財産権を保有しているスタートアップ事業者(企業/個人)であれば、ベンチャーキャピタル等からの出資も受けやすくなりますが、
その「知財」が、その企業の成功を予見させるような、画期的”デザイン”をもつ製品等である場合もあるでしょう。そして、そのデザインが、本当に(一定の期間)独占的に、そのスタートアップが占有できるものなのか…これを担保してくれるのが(意匠登録によって得られる)「意匠権」ということになります。
このような場合、
スタートアップ事業者は、特許庁による審査を経て取得できる「意匠権」を、一刻も早く取得し、資金調達の実現、そして成功への道筋をつけたい
ですものね。
さて、何をもって「スタートアップ」と判断するかの基準ですが、次の①〜③までの「いずれか」に該当することが必要となります。
① その事業を開始した日以後 10 年を経過していない個人事業主
② 常時使用する従業員の数が 20 人(商業又はサービス業に属する事業を主たる事業として営む者にあっては 5 人)以下で設立後 10 年を経過しておらず、かつ、他の大企業に支配されていない法人
③ 資本金の額又は出資の総額が 3 億円以下で設立後 10 年を経過しておらず、かつ、他の大企業に支配されていない法人
また、対象となる意匠は、「(スタートアップ企業による)実施関連出願」と表現されていましたよね。この「実新関連出願」の定義は、
「その出願の意匠を実施しているか又は実施の準備を相当程度進めているもの」
とあります。
(注1)「意匠の実施」とは、意匠法第2条第2項に規定する日本国内において意匠に係る物品を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し、若しくは輸入し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。)をする行為等をいう。
(注2)「実施の準備を相当程度進めている」とは、上記の製造等の実施のための具体的な計画に基づく準備作業が開始されていることをいう。
※なお、建築物、内装の意匠の出願は、早期審査の対象外となります。
この実施の態様や、あるいはどのように準備をしているかは、「早期審査に関する事情説明書」で説明していくことになります。
■意匠早期審査・早期審理制度の概要(特許庁)
https://www.jpo.go.jp/system/design/shinsa/soki/isyou_soukisinri.html
なお、意匠権の場合、登録要件に「新規性」があり、実施をし始めている場合は(意匠が明らかに「公開」されているので)新規性を喪失してしまっています。ただ、実施から1年以内に限り「新規性喪失の例外」が認められますので、こちらの適用を出願時に求めていくことになるかと思います。
今回の制度を利用しての出願をご検討の方は、ぜひお気軽にONION商標までご相談ください。