ONION商標・弁理士の山中です。

最近、気になったのは、このニュースです。

「消えた『駅弁』マーク 取り巻く環境の変化 かつては電報、赤帽の取り扱い駅も」(Yahoo!ニュース/産経新聞)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191103-00000529-san-life

しかし、特に興味を惹かれたのは、駅弁の話ではなく、このニュースの中に引用されていた、昭和39(1964)年10月の「時刻表」の完全復刊号。昭和39年といえば、(前回の)東京オリンピック目前に、東海道新幹線が開通した年ですね。契約している電子書籍の読み放題サービスにあったことから、読んでみることにしました(あ、旅行会社出身なので、一応、時刻表の読み方はわかります。無駄に総合旅行業務取扱管理資格も保有してますし ー苦笑)。

自分は、鉄道について決して詳しくはないのですが、自分が進学したり、働き出したり、家族が増えたりするにつれ、様々な地域から通勤・通学する仲間・全国各地の出身の人々との出会いから、様々な鉄道・路線があることを知り、段々と興味が広がってきたタイプです。また、鉄道に限らず、自分が生まれた前後の昭和カルチャー全般が好きなもので、今は無き路線などの情報に溢れた「国鉄の時代」に思いを馳せることのできるこの企画、大いに堪能しました。

ここで弁理士として興味が湧いたのが、「国鉄関連の登録商標って、現在のJR各社に引き継がれているのかな?」ということ。そこで、少し調べてみたのですが、かつての国鉄関連の登録商標は、ほとんど見つかりません。日本国有鉄道(Japan National Railways)の略称「JNR」の登録商標も、指定商品「記念メダル」を指定した登録等があったものの、権利満了で消滅しています(登録番号:第1916055号 等)。しかも、出願されたのも昭和59(1984)年と、国鉄も晩年の頃でした。

国鉄が登録した商標がほとんど無いことについて、「公共企業体であった国鉄が商標権を保有できなかった」とする文献もあるようですが、これはちょっと疑義がありますね。同類の「専売公社」(現在の、日本たばこ産業の前身ですね)も、たばこの銘柄は商標登録できていましたから。

考えられるとしたら、例えばこんな理由でしょうか。
一つには「商標登録したくてもできなかった」という点。そもそも、役務(サービス)に使用される商標の登録制度は、平成4(1992)年に始まっています。つまり、昭和62(87)年に解散となった国鉄時代は、そのような役務商標は登録のしようがなかったということです。

もちろん、現在は、第39類の指定役務「鉄道による輸送」を指定して、電鉄各社はその社名や略称、ロゴ、あるいはブランド力のある特急の名称などを登録できますので、JRグループに限っても、東日本が「踊り子」(登録3000903号)とか、東海が「のぞみ」(登録3007350号)など、多数の登録商標・商標権を保有しています。

もう一つ、国鉄の登録商標があまりなかった理由としては、「特急の名称などを使用した『商品』を、ブランドグッズ/マーチャンダイジングとして販売し、収益を上げるという発想がなかった、あるいは興味がなかった」のかな?と。今では当然、電鉄各社の重要なビジネスであり、例えばJR西日本の”走るホテル”とも言われる周遊型臨時寝台列車の名称「瑞風」は、さまざまな指定商品の区分を指定して登録されています(登録5788430号)。

ところで、国鉄がらみでは、そのものずばり「国鉄」という商標もあります(登録5561103号)。しかし、こちらは国鉄やJR各社とは全く関係ない企業が、平成23(2011)年に、14類の指定商品「時計」を指定して出願したもので、一度は、「日本国有鉄道公社と関わりがあったかの如く、需要者、取引者を誤信させるおそれが少なからずある」として、商標法4条1項7号違反(公序良俗に反する商標の登録禁止)で拒絶査定となったものです。しかし、拒絶査定不服審判では「民営化されてから、既に25年の歳月が経過しており、(中略)日本国有鉄道(国鉄)が既に存在していないことは周知であることから、その指定商品である「時計」との関係において、(中略)日本国有鉄道と関わりがあったかの如く、取引者、需要者が誤信するおそれがあるとは、もはやいい難い」として、逆転で登録が認められたものです。

さて、話は「時刻表」に戻って。昭和39年の復刻版では、情報に溢れていた東京発の寝台列車も、今や定期運行は「サンライズ瀬戸・出雲」のみ。幸い、妻の実家が中国地方なので、いつかこれに乗って帰省するのが、密かな夢となっています(叶うまで廃止されませんように!)。