ラグビーワールドカップ2019日本大会は、日本チームの大健闘もあり、期待された以上の盛り上がりの中で閉幕しましたね。まだまだ「ラグビーロス」の方もいらっしゃると思いますが、早くも、次の“日本で行われる、スポーツの国際大会”、来年2020年の東京オリンピックが待ち遠しくなっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ラグビーでも、世界中からファンが訪れ、ビールやグッズなど多くの商品が好調な販売成績だったという報道を見たりすると、「なんとか、オリンピックでは、自分のビジネスがあやかりたい!」と思われる方、あるいは、損得は抜きにして「何とか自分のビジネスでも、オリンピックが盛り上がるように、貢献できないか?」と純粋に考えられる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、いずれの場合も気を付けていただきたいのが「アンブッシュ・マーケティング」という考え方です。

「アンブッシュ・マーケティング」とは、ちょっと難しい概念でいうと「プロパティ所有者に権利金を払わずに、そのプロパティと結びつきを作ろうとする計画的活動」と定義づけられますが、

もっとわかりやすく言えば、「オリンピックやワールド・カップなどのイベントにおいて、公式スポンサー契約を結んでいないものが無断でロゴなどを使用したり、会場内や周辺で便乗して行う宣伝活動」を指します。当然、禁じられている行為です。

これは、国際オリンピック委員会(IOC)が要求する事項で、東京都もオリンピック開催都市契約書に明確に「アンブッシュ・マーケティング規制」をすることを求められていますし、それこそオリンピック招致の段階から、この事項を遵守することをIOCに確約してきたものです。

オリンピックはIOCやその組織委員会により行われる民間イベントですから、スポンサーがいなければ成立しません。そのスポンサー企業は、公式スポンサーとなるために多額の費用を払っているでしょうから、それ以外の人が、自由にオリンピックの名称やロゴなどを使用できる状況では、スポンサーメリットが失われてしまい、スポンサーのなり手がいなくなり、オリンピックの開催自体が成り立たなくなってしまいますよね。

もちろん、自治体や政府も招致には関わっていますが、その招致の副産物である地域再開発や観光客の誘致のために招致をしている側面があることを考えれば、そうしたビジネス的側面を無視することはできないでしょう。

法律的には「アンブッシュ・マーケティング規制法」のようなものは、日本ではまだ成立していませんが、弁理士と関係する知的財産法の範囲でも、こうした行為を規制することに用いられる法律はいくつかあります。

たとえば、弊所の専門分野でもある商標法。オリンピックシンボル(五輪マーク)(登録3219957号他)や「がんばれ!ニッポン!」(登録4470504号他)等、様々な商標が、IOCや組織委員会等により商標登録されていますので、これらを無断で使用してしまえば、商標権侵害となり、使用差止のみならず、損害賠償を請求されるリスクがあります(なお、「オリンピック」のような、国、地方公共団体等の著名な商標と同一又は類似の商標は、商標法4条1項6号該当で、第三者は登録できません)。

また、IOC等が権利を持つキャラクターなどは著作物である場合があり、当然それらはIOC等が「著作権」を有していますから、無断使用をすれば著作権侵害で、損害賠償請求対象となるのは、同様です。

他にも、「不正競争防止法」もあります。他人の商品等表示(団体やイベントの名称、ロゴ、マスコットキャラクター等)として周知なものを使用して、他人の商品等と混同を生じさせる行為や、他人の著名な商品等表示を使用する行為は、「不正競争行為」として禁止されています(不正競争防止法2条1項1号、2号)。IOC等は国際機関ですから、その周知なオリンピックシンボル(五輪マーク)、オリンピックシンボル旗や「IOC」といった名称やロゴマークを、同団体に許可なく使用すれば、同法違反となる可能性が高いでしょう。

ちなみに、弊所がオリンピックの大会基準を確認してみたところ、
https://tokyo2020.org/jp/copyright/data/brand-protection-JP.pdf

大会関連マークの知的財産の使用が認められる組織/団体/事業は、以下のように定められていました。

1. 東京 2020 大会スポンサー、RHB(大会放送権者)
2. 開催都市・各府省、および開催会場となる自治体
3. 新聞、テレビ、雑誌等の報道機関(報道目的に限る)
4. 日本オリンピック委員会(以下「JOC」という。)、日本パラリンピック委
員会(以下「JPC」という。)
5. 地方自治体(使用できる権利、品目は組織委員会が許諾したものに限る)
6. その他組織委員会が使用を適当と認める組織/団体/事業

「ちょっと使うぐらいなら、大丈夫なんじゃないか?」とか、「儲けるつもりじゃなくて、応援するつもりだから」というような判断を、自分でしてしまうと、後々大きな問題となる場合がありますから、ぜひご注意ください。