ONION商標・弁理士の小野尾です。

12月に入り、すっかり年末モードになってきましたが、年末と言えば思い出すのが「時代劇」。子供のころ同居していた祖母が時代劇好きで、よく年末の時代劇特番を観ることになっていたためです。

ただ、「忠臣蔵」みたいな長編時代劇は、子供には結構つらいものがあり、比較的早い時間帯に脱落していました。一方、自分でも楽しめたのは、「遠山の金さん」です(僕の場合は故・松方弘樹さん時代が、最も印象に残っています)。

時代劇の場合、歴史上の人物の名前そのものがタイトルになっている作品もありますよね。そこで、弁理士スピリット的には、「歴史上の人物の名前を、自由に商標登録しちゃっていいの?」という話をしたくなるのです。結論としては、「商標法・特許庁も一定の制限をかけて」います。

商標法第4条第1項第7号には、公の秩序又は善良の風俗(いわゆる「公序良俗」)を害するおそれがある商標は、登録できないというルールがあり、これに該当するものとして、

「周知・著名な歴史上の人物名であって、当該人物に関連する公益的な施策に便乗し、その遂行を阻害する等公共の利益を損なうおそれがあると判断される場合」

が対象になると、同条の商標審査基準に挙げられています。歴史上の人物と縁もゆかりもない者が、便乗・妨害等で商標登録してしまうことを防ぐ規定が設けられているのです。

実際に、このルールが争われた事例として、「遠山の金さん」事件があります。

「忠臣蔵」とかもそうですが、時代劇ってよくパチンコやパチスロの題材になることがありますよね。「遠山の金さん」も、パチンコ型スロットマシン等について商標登録され(登録4700298号 )、その無効(4条1項7号違反)について、裁判で争われました。ちなみに、この商標権を取得しているのは、そのタイトルの有名な時代劇を制作した会社(東映)です。

この判決では、

遠山金四郎景元が江戸町奉行等を歴任し、名奉行と賛辞されていることは認められるけども、具体的な呼び名や仕事ぶりは不明で、「遠山の金さん」に抱かれているイメージ(入れ墨をした遊び人、「このっ!桜吹雪が目に入らねぇか!」で悪人を退治する)と必ずしも一致しない、などの理由で「遠山の金さん」は、「遠山金四郎景元」そのものではない

旨の判決が下されました。つまり「遠山の金さん」≠「(歴史上の人物)遠山金四郎景元」という判断です。(その他いくつかの争点はありましたが)結論としては、この権利は無効とされず維持されました。

この同一性の判断については、多少強引な感もありますが、縁もゆかりも「ある」権利者が、便乗でも妨害でも「なく」登録を受けた権利ですから、結果としては妥当なものだと思います。

さて、時代劇一般の話に戻ると、「遠山の金さん」に限らず、短編・一話完結型の時代劇が、自分は好きなんだろうなと、あらためて思います。「江戸を斬る」、「三匹が斬る!(近藤真彦さんより、むしろ役所広司さんのころ)」、「長七郎江戸日記」、「剣客商売」、「喧嘩屋右近」などなど…放送局時間帯を問わず良く見ていましたね。時代劇の良さを教えてくれた、祖母にあらためて感謝です。