こんにちは。ONION商標・弁理士の山中です。

先日、衆議院議員選挙が終わりましたね。街中からポスターが消え、少し静かになった日常に戻りましたが、テレビやSNSでは今なお熱い議論が続いています。

選挙結果については、すでに多くの専門家が多角的な分析をされていますし、

もちろん、私がここで政治的な信条を語るつもりも毛頭ありません。 弊所の所員だって、一人ひとり置かれている立場も違えば、政治への考え方も千差万別であるべきですしね。その多様性こそが、私たちの事務所の良さだと思っています。

それでも、今回の結果を眺めていると、商標をメインに扱う弁理士として、どうしても気になってしまう「職業病」のような視点があるのです。それは、

選挙戦における「ブランディング」

という視点です。あえてこの視点「のみ」で、今回の選挙結果から感じたことをつぶやいてみたいと思います。

選挙とブランディングを同列に語るな、というお叱りを受けるかもしれませんが、各政党が広告代理店とともにキャッチフレーズを練り、ポスターのデザインを磨き、SNSで戦略的な広告を打つ姿は、どうしても企業のブランド戦略に重ねてしまうんですよね。

★1. 「リブランディング」という劇薬の難しさ

今回の選挙結果では、自民党が圧倒的な勝利をした一方で、大きな話題となったのが「中道改革連合」の大敗です。特に、公明党とともにこの連合を結成した立憲民主党の議席の激減は、衝撃的なものでした。

参考記事: 衆院選の勝敗を分けたのは何か?中道改革連合の誤算と自民党の戦略(Yahoo!JAPAN NEWS)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/aaf519d46cf8e0bb060464789f6f47328d122b80

そもそも、ビジネスにおいてリブランディング(ブランドの刷新)が必要とされるのは、どのような時でしょうか。

それは多くの場合、

それまでのブランドイメージに自信が持てなくなったとき

でしょう。「今の看板のままでは、これ以上顧客(支持者)を広げられない」「このままではジリ貧に陥ってしまう」という強い危機感。その不安が、これまで心血を注いで築き上げてきたブランド資産を捨ててでも、新しい名前に賭けたいという衝動を上回ったとき、人は「看板の掛け替え」に踏み切ります。

「中道改革連合」という新しい名称。それはまさに、既存のイメージを脱ぎ捨て、新しい層へ手を伸ばそうとした大きな挑戦だったはずです。

しかし、商標実務の観点から見れば、ブランド名を変える(リブランディング)という行為は、それまでに蓄積された

「業務上の信用(グッドウィル)」を自らリセットしてしまう

ことにもなりかねず、結果として

「既存顧客の離脱」

につながりかねない、というリスクを孕んでいます。
商標実務・一般ビジネスに当てはめても、「知名度のあるロゴを刷新した途端に売上が落ちた」という相談を伺うことがあります。

「立憲民主党」というブランドを支持していた、いや支持していたとまではいわないにしても、ある程度なじみのあった有権者にとって、新しい「中道改革連合」という看板は、まだ実感のわかない、どこか遠い存在に映ったのかもしれません。

登録6461000号「立憲民主党(ロゴマーク)」(※標準文字商標は、その他のロゴマークも登録されています)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-2020-121549/40/ja

(※なお「中道改革連合」に関する商標登録は、26年2月17日現在、確認できませんでした。出願済みでも公示まで数週間かかるため、出願済みである可能性もございます)。

人は、馴染みのあるロゴや名前に無意識の安心感を抱くものです。その「馴染み」を急に断ち切られたとき、「新しい」ロゴ等に新鮮味が伝わらず、逆に「変わらない中身のいい部分」は継承されることも伝わらなければ、それまでのファンの間でも、拒絶反応や戸惑いが上回ってしまうでしょう。

もちろん、単純に売上や利益で測られる一般ビジネスと違い、衆院選は小選挙区制ですから、(立憲民主党と公明党それぞれで選挙に望んだとして)立憲への投票率が多少上がったとしても、獲得議席数という観点からは、今回の結果とあまり変わらなかったかもしれません。

しかし、今回の衝撃的な議席数の激減からは、やはり「既存ブランドの刷新」は、本当に慎重さが求められるよなぁ…と感じずにはいられませんでした。

★2.「古いブランド」のままイメージを刷新することは可能か?

一方で、今回の自民党はどうだったでしょうか。自民党だって、立憲民主党より遥かに昔からあるブランドですし、前回の衆院選では芳しい結果ではありませんでした。

登録6534103号「自民党」(※標準文字商標。その他のロゴタイプなどの登録はなし)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-2020-161277/40/ja

彼らは「自民党」という老舗ブランドの看板は決して下ろしませんでした。それでいて、今回の大勝です。

では、何を変えたのか。高市早苗首相という強力なリーダーが前面に立ち、放たれるイメージ、メッセージ性を刷新することで、

「老舗ブランドの再定義」

に成功したように思えます。

これを企業にあてはめてみれば、

◎マスターブランドは変えずに、サブブランド/ペットマークのみ刷新する
◎商品ブランド名は変えずに、パッケージやロゴマークのみ刷新する・ブランド名は変えずに、ブランドのイメージ・キャラクターを作る・刷新する

…等々が想起されます。

もちろん、これらだって既存セールスが下がるリスクはありますので、慎重さが求められる行為ですが、マスターブランド(社名や、ハウスマーク、主力商品名など)を変える行為よりは、リスクヘッジが可能な戦略といえましょう。

★3. やっぱり大事な「色」のブランディング効果

自民党が、特に象徴的に使ったのは「赤」、ですよね。
かつては「赤=共産主義」というイメージもあった色ですが、今やアメリカの共和党(保守)と同様に、保守本流を象徴する色として定着しています。今回は高市首相の「強い女性」というイメージと、この赤が実に見事な相乗効果を発揮していました。

対して、中道改革連合は「」を選択。アメリカの民主党(リベラル)を想起させる色ですが、この新党が意味する”中道”とは、いわゆるリベラルだったのでしょうか。そうなのであれば色の選択としては間違っていませんが、もし新しい方向性を意味していたのであれば、異なる色の選択も考えられたかもしれません。

その点、興味深いのは、躍進した新興政党が選んでいる「色」です。

*参政党の「オレンジ」

商願2025-131615(※出願中)「参政党\sanseito」(※標準文字商標の「参政党」等は登録済)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-2025-131615/40/ja

*チームみらいの「ミントグリーン」

商願2025-087985(※出願中)「チームみらい」(※標準文字商標。その他のロゴタイプなどの出願・登録はなし)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-2025-087985/40/ja

このように、独自の色彩戦略で「既存ブランドとは違う自分たち」を視覚的に定義していました。色は、ときには言葉以上に直感的にブランドの立ち位置を伝えますよね。

なお、商標登録においては、従来は「色彩」はどちらかというと軽視されてきたのですが、平成27年(2015年)から「色彩のみからなる商標」という制度が導入されたように、ブランディングにとっての重要性が、法律・制度面からもバックアップされてきています。

★4. まとめ:ブランディングの「変える勇気」「変えない勇気」

今回の衆院選、なんとか規模を保った「中堅」、躍進した「新しい勢力」、そして勢いに陰りが見えた「老舗」「中堅」。そして大復活した「老舗」…

これらを「政党」ではなく「ブランド」と捉えて眺めてみると、政治の世界だけでなく、私たちの一般のビジネスやブランディングにも通じる教訓が詰まっているな、とあらためて感じました。

「新しくすれば、すべてがうまくいく」わけではない。

今あるブランドの何を大切にし、何をアップデートすべきなのか。
そして、その変化は「顧客(有権者)」がついてこられるスピードなのか。
変化の内容と意義を伝えるのに必要な施策は十分とれるのか。

その見極めこそが、知財戦略においても経営においても、最も難しく、かつ本質的な部分なのだと改めて痛感しました。

ひるがえって、弊所「ONION商標」ですが、来年で10周年になります。当面、現在の弊所ロゴを変更する気はありませんが、今後、そのデザインや色の再考を求められるタイミングも訪れるのかもしれません。その際は、さまざまな観点から熟考しなければいけないな、とあらためて思いましたし、そしてその日が訪れるまでは、しっかりと現在のロゴマークにブランド力を積み重ね続けられるよう、日々の実務に実直に取り組むことを誓いたいと思います。

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