コロナウィルスの脅威に怯えながらの生活から、早く脱却したいですよね。当然ながら、医療に関連する発明~例えば、その治療法や、治療薬、あるいは検査方法について~に期待をせずにはいられないのですが、今回はこうした「医療関連の発明と、特許権」について、基本を解説します。

「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち、高度のもの」というのが、日本の特許法の対象となる発明なのですが、さらに、
 ①物の発明
 ②方法の発明
 ③物を生産する方法の発明 
に分類できます。例えば、「治療薬」という物の発明や、それを生産する方法の発明、あるいは「検査方法」「治療方法」の発明、というようにあてはめることができますね。

しかし、特許権が与えられるのは、特許庁に出願され、審査を経て認められ(特許査定)、特許料が納付されたものだけになります。審査では、いくつもある「登録要件」を全て満たしているかどうかを判断されるわけですが、その登録要件の中で、最も根本的なものが

「産業上利用できる発明」であること(同法29条1項柱書)

です。

では、「産業上利用できる(・できない)」とは、どう解釈されるのでしょうか?「治療法」「治療薬」などは、どう判断されるのでしょうか?
法律(特許法)とは別にある、特許庁の「審査基準」では、産業上の利用可能性の要件を満たさない発明の類型として、以下の発明を挙げています…

(i) 人間を手術、治療又は診断する方法の発明
(ii) 業として利用できない発明
(iii) 実際上、明らかに実施できない発明

そうです。この記事の結論から言えば、(i)のとおり、 通常、医師や医師の指示を受けた者が、人間に対して手術、治療又は診断を実施する方法、いわゆる「医療行為」といわれているものの発明には、特許権は与えられないのです。

いざ患者を助けようというとき、医師や看護師の方々が「あれ、この治療方法をすると、誰かの特許権侵害になっちゃうんだっけ?」と考えなければいけない事態って、イヤですもんね。
(ただ、こうした医療行為に基づく方法の発明が、特許の対象となる「国」もあります)。

一方、審査基準では、「人間を手術、治療又は診断する方法の発明」に該当しない、つまり「産業上利用可能性」の要件を満たす→特許権が与えられ得る発明として、

 (1) 医療機器、医薬等の物の発明
 (2) 医療機器の作動方法
 (3) 人間の身体の各器官の構造又は機能を計測する等して人体から各種の資料を収集するための方法
 (4) 人間から採取したものを処理する方法

を挙げています。今回は、わかりやすい(1)だけを説明すると、つまりコロナウィルスの「治療薬」や「(画期的な)検査機器」の発明などは、特許権の対象となるということです(ちなみに、特許権の切れた発明に基づいて製造された医薬品が、いわゆる「ジェネリック医薬品」です)。

今、世界の、医療・医薬品業界の最前線で、コロナウィルスの打ち勝つための研究がなされているものと思料します。それに期待しながら、まずは感染をしない・拡散させないよう、我々にできることをしていきたいものですね。