ONION商標・弁理士の山中です。

今年、自分の中で、最も向き合い方の変わったモノといえば、「マスク」になります。ひどい花粉症というわけでもないので、つけるとしたら、冬場に病院に行く際の予防目的や、残念ながら風邪をひいてしまったときぐらい。若い世代で定着してきていた「色付きマスク」には、「ちょっと怖いな…」と思っていたぐらいの自分。それが今では、外出時は原則着用。使い捨てのものが多いですが、ときには繰り返し使える布製、さらには色付き・柄付きのものまで着用するようになりました。自分だけではないから恥ずかしくない、というのも大きいと思いますが、自分でもびっくりの変化です。

さて、マスクについても、さまざまな知的財産権が含まれていることがあります。
最近話題になったものとしては、やはりこれがありますよね。私は手に入れていませんが、発売日はウェブサイトはつながりづらく、各店舗長蛇の列だったとか。

「ユニクロ『エアリズムマスク』の発売日が決定、特許出願中の3層構造でUVカット機能付き」
https://www.fashionsnap.com/article/2020-06-15/uniqlo-airismmask/

その構造について特許出願中とのことですが、こうした高度な研究に基づいた発明でなくても、特許権が与えられることはあり得ます。新規性(世の中でまだ公に知られていない)・進歩性(既に知られている発明からの進歩)が求められますが、その発明が「世の中にある課題を、解決するものだ」と発明者が感じていれば、弁理士に相談する価値はあります(※弊所は商標専門をうたっていますが、特許のご相談については、その発明の分野に強い特許の弁理士とタッグを組んで対応しています)。たとえば、そのマスクの紐の部分が、過去のものにはない「つけ易さ(はずれにくい、耳がいたくならない、フィット感など)」を新たに果たしていれば、それがちょっとしたひらめき・アイデアに基づいて実現できた場合でも、特許発明となり得るわけです。実際、マスク関連の特許出願は、毎年50件から100件程度はなされているようです。

次に面白かったのは、こういう商品ですね。
「メガデスやコーン、マイケミなども、最新アーティストグッズは『マスク』」
https://www.timeout.jp/tokyo/ja/ニュース/メガデスやコーン-マイケミなども-最新アーティストグッズは-マスク-0427

収益を医療慈善団体に寄付しているというのも素晴らしいのですが、ここでは知的財産権の観点にフォーカスすると、ここで取り上げられている商品にプリントされているアーティスト・ロゴは、(ここ日本でも)「商標登録」されて商標権が発生しているものばかりです。つまり、その商標権者だけが、独占的にその商標を付した(プリント等)を販売することができます。

ただ、商標登録の際には、その商標を使用する商品・サービス(役務)を指定します。商標権は、その指定した範囲でしか発生しません。いわゆるマスクの指定商品・区分としては、

第5類「衛生マスク」

に相当しますが、通常、アーティスト・グッズとしてはなかなか指定することのない区分ではありますね。

では、プリントされているのが、キャラクターやイラストだったらどうでしょう?当然ながら、その部分には「著作権」が発生しています。他者が創作した著作物であるイラストを、マスクにプリントすることは、著作権のひとつである「複製権」の対象となりますが、自分で使うためだけに作るなら、いわゆる「私的使用目的の複製」として、法律上セーフになります(→そうして作ったものを、また他者に売ったりすると、私的使用目的から外れますので、複製権等の侵害になっていく…という論理です)。

さて、最後に、マスクの「デザイン」という観点から見ていきましょう。物品のデザイン、つまり美的外観を保護するのが「意匠権」です。こちらも特許権・商標権同様、特許庁に手続きをして「意匠登録」をしない限り発生しませんが、意匠権の登録要件は、特許権のそれと似たところがあって、新規性(世の中でまだ公に知られていないデザイン)・創作非容易性(既に知られているデザインから、用意に思いつくものでないこと)が求められます。「マスクのかたちなんて、四角い部分と、耳にかける紐から成るんだから、もうありふれてるでしょ?」と思うかもしれません。

しかし、実際はそんなことはありません。特許庁のデータベース「J-PlatPat」で、「物品:衛生マスク」でざっくり検索したところ、国内公報で公開されているのが170件もありました。口をふさぐ部分のかたちだっていろいろあり得ますし、意匠の一部だけを登録する「部分意匠」という制度もあります(全体的にはありふれていても、その部分だけ・あるいは柄や模様だけは新規性・創作非容易性を満たしている場合など、登録され得るわけです)。

また、一つの意匠登録から、それに類似した意匠、つまり「バリエーション」を保護する制度として、「関連意匠」という制度もあります。実は、今年の4月の法改正で、関連意匠の要件が緩和されました。また、これは意匠登録全体なのですが、(それまで「登録から20年」だった)存続期間が、「出願から25年」へと延長されました。今年の、ある意味「マスク革命」をきっかけに、衛生マスクに関連する意匠登録も増加するかもしれませんね。

こんなシンプルに見える商品でも、実はこんなに知的財産権と関連している(かも)よ、というお話でした。ちなみにこのコラムは、人と濃厚接触しない場所で、マスクを外して書いております。