最近、人気のバッグのブランドにまつわる、「商標権侵害」というニュースがありました。
「PORTER」無断販売で商標権侵害か 製造会社元役員を書類送検(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASV9B0SZJV9BUTIL005M.html
受託製造のブランド品横流し疑い 3000万円得たか、元役員書類送検―警視庁(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026091000580&g=soc
上記のニュース記事でも大体の概要は掴めるのですが、「PORTER」のブランドを発売している、「株式会社吉田」社(以下、吉田カバン さんと記します)のサイトでの発表を見ると、より詳細な経緯・主張がわかります。
https://www.yoshidakaban.com/news/1751.html?ncat=6
吉田カバンさんから受託して、製造をしていた企業(以下、受託社と記します)が、製造物(カバン)をクライアントである吉田カバンさんに納品していなかった、さらにその受託社の元取締役が、その完成したカバンを横流ししていた、というあってはならない事件です。
元取締役については、「業務上横領」の疑いでもあるとのことですが、これについては弁理士の資格外の法律なので説明はできないものの、ごく一般消費者としても「横流しして、利益を得ているんだから、そういう罪に問われそうだよな」という感覚では受け止められますよね。
一方、受託者と元取締役が、
「商標権侵害」の疑い
も問われているという点に、ちょっとピンと来ない方もいらっしゃるのではないでしょうか。その点なら、弁理士として、説明することが可能です。
たとえば、定期的にある「商標権侵害」のニュースとして、有名なブランドと全く関係ない第三者が、自作の商品に、そのブランド(登録商標)を違法コピーしたり模倣したりしたものを付けて売ってしまう…というようなケースがあります。これなどは、商標に明るくないという方でも「そりゃダメだろ」とイメージしやすいと思うのです。
【本当はコワイ商標の話】 商標法に違反すると逮捕されることがある?
http://onion-tmip.net/update/?p=460
それに対して、今回のケースは、横流しされた商品は、見た目や品質は「正規品」です。横流しが良くないことというのは異論がないとして、なぜ「商標権侵害」も問えるのでしょうか。
まず、「PORTER」については、吉田カバンさんが(株式会社吉田名義で)商標登録をしているので、商標権を所有しているのは大前提です。
(同社は100件以上の登録商標を保有していますが、「PORTER」に関する代表的なものといえばこちら)
登録4460560号 (第18類「かばん類」,「袋物」)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-2004-019622/40/ja

そこで、受託社または元役員、つまり商標権の所有者ではない者がその登録商標を使用したら、商標権侵害になる、というのはイメージできると思うのですが、
受託社は、カバンの製造する以上、登録商標たる「PORTER」のタグをカバンにつけていたはずです。これは、
商品に、標章を付していたことになります。つまり、商標(標章)の使用(第二条3項一号の行為)ですね。
【本当はコワイ商標の話】登録商標は正しく使用しましょう…というけれど、そもそも「商標の使用」とは?
https://onion-tmip.net/update/?p=4356
ただ、この行為は、受託の契約において、当然認められていたはずです。だって、認めなければ製造できませんからね。
しかし、第二条3項二号の行為、すなわち「商標(標章)を付したものの、譲渡等」については、その受託契約で、絶対禁止されていたでしょう。商品等に「PORTER」のロゴが付された完成品を、勝手に有償譲渡、つまり販売されてしまったら、吉田カバンさんの登録商標のチカラ(機能)が発揮されないままにおわってしまいますからね。
にもかかわらず、今回の元役員が行った「横流し」は、「商標(標章)を付した商品の(無断での)譲渡」にあたるでしょうし、
この元役員の行為を止めることができずに、吉田カバンさんに納品すべき完成品を納品しなかった受託社も、実質的に譲渡をしたことになるという判断がされたことが推測されます。
ただ、ここで、疑問が出てくる方もいらっしゃるかもしれません。
「登録商標がついてる商品を、リサイクルショップに売る/リサイクルショップがそうした中古品を売る」のは、OKなの?
その答えはというと、
OKです。商標権的に全く問題ありません。
皆さんが、お持ちのブランド品(※新品でご購入と仮定します)を、リサイクルショップに売るケースを想定して説明しますね。
お手元のブランド品は、そのブランド(商標権)の権利者が、正規に製造し、皆さんへ販売(譲渡)されたもの、つまり正しく(登録)商標が使用された状態で、皆さんのお手元にやってきているわけです。
それをそのまま、リサイクルショップに売る(譲渡)しても、さらにそれが中古品として別の方に販売(譲渡)されても、その商品に付された商標の力(機能)は、全く害されていません。むしろ、こうして商品が転売を繰り返されていくにつれて、商標は有名になり、また価値が上がっていくこともあるわけで、ブランドの商標権は害されていない、という考え方になるのです。
もし、こうした中古販売の過程で、「商標権侵害」が問題になるとしたら、それはブランドのロゴマーク等の(登録)商標を、勝手に取り外したり、品質が変わる状態(勝手に商品を小分けして販売するとか、洋服をリメイクしてしまうとか)にして、譲渡してしまうケースに限られます。
【本当はコワイ商標の話】なぜ、洋服や靴などのブランド品をカスタマイズすると、商標法違反・商標権侵害になり得るのか?
http://onion-tmip.net/update/?p=1551
【ONION商標・弁理士の眼】 改造「Nintendo Switch」販売が商標法違反になった理由とは?
http://onion-tmip.net/update/?p=2555
…以上、ちょっと遠回りしてしまいましたけど、今回の受託社と元役員がやったことというのは、こういう
「正規品のリサイクル」とは全く異なりますよね。
「PORTER」の商標権者でもないのに、そのロゴマーク等を付した商品(見た目は正規品※だけど、市場に一度も出ていないもの)を、譲渡してしまった。これは、適法に商標を付され流通に置かれたとはいえず、本来、商標権者である吉田カバンさんが発揮すべき商標(権)の機能を奪っているわけですから、商標権侵害という考え方になるものと思料します。
(※前述の記事によれば、横流しされた一部には、検品で除外された製品も含まれていたようですが)。
ただ、同じような考えの判決は過去にあるものの(大阪高裁平成14年6月12日判決(平成13年(う)第876号))、この事案についても同様の判決になるかは、論点です。
しかし、今回の受託社と元役員の「横流し行為」は、「関係ない第三者が、自作の商品に、そのブランド(登録商標)を違法コピーしたり模倣したりしたものを付けて売ってしまう」商標権侵害行為と同列のように感じましたし、
もっと言えば、ブランド権利者との受託契約に違反しながら、本物と見分けのつかないものを需要者(取引者、消費者)へと流通させた点で、商標の世界で生きる弁理士としては、より悪質な裏切り行為のようにすら感じられました。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
好評です! ONION商標の新サービス
ロゴ作成+商標登録 =「ロゴトアール®」
https://logoto-r.com/
ロゴ制作から商標登録完了まで、弁理士が一括サポート。
いいロゴに®もつけましょう!
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲





