※2020年8月5日初出の記事に対し、8月20日一部加筆を行いました。初出の記事では、説明の不足から誤解を招く表現があり、関係者にご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。

ONION商標・弁理士の山中です。

◎(著作権)リツイート 写真の上下切り取りは権利侵害 最高裁が判断(NHK NEWS WEB)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200721/k10012526381000.html

このニュースは、多くの人が馴染みのあるであろうTwitterのリツイートという行為に伴うもの、また「最高裁」の判断ということで、ショッキングに受け止めていらっしゃる方も多いと思います。

今回は、著作権法の基本も含め、簡単ではありますが解説をさせていただきます。

★1.裁判の当事者

最高裁においては、

 上告人:Twitterを運営する米国法人(以下、ツイッター社)
被上告人:写真家

なのですが、そもそも写真家の方が、Twitterに(他者により無断で)された投稿により、ご自身が撮影された写真について権利侵害があったとして、ツイッター社に対して訴訟を提起したのが始まりです。地裁→知財高裁ときて、知財高裁では写真家サイドに有利な判決となりました。これに不満があったため、ツイッター社が最高裁に上告したというわけです。

 

★2.著作権(法)のキホンと、ポイントとなる「〇〇権」

写真も「著作物」です(著作権法2条1項1号、10条1項8号

*その写真を撮影した人がその著作者を創作したことになりますから、つまり今回であれば写真家の方が、その著作者となります(同2条1項2号)。

*これは写真の著作物に限りませんが、著作者は「著作権」(複製権やら、公衆送信権やら…同21~28条)と「著作者人格権」を得ることになります(同17条1項等

そして、この「著作者人格権」というものですが、これは著作物にまつわる財産的な価値ではなく、著作者の(自身の著作物を大切にする)”想い”みたいなものを保護する権利で、主に

・公表権(同18条1項)
・氏名表示権(同19条1項)
・同一性保持権(同20条1項)

から構成されています。
そして、今回特にポイントになっているのが、「氏名表示権」です。

 

★3.そもそも何が問題になったのか

実は、★1の訴訟当事者では登場していない、ツイッターの「利用者」が訴訟の引き金になっています。

・写真家の写真(著作物)を無断で投稿した利用者(A、としましょう)
・Aの投稿をリツイートした利用者(複数いるので、B等、としましょう)

写真家の方は、A、B等らに不満があり、いわゆる「プロバイダ責任制限法」に基づき、A、B等ら「発信者」情報の開示を求めたのが、今回の訴訟です。

しかし、その開示が認められるためには(つまり、ツイッター社に発信者情報を開示する義務があるかどうかの判断基準としては)、「権利侵害の有無」が前提となります。そこで、「著作権・著作者人格権」の侵害があるかどうかが争点となったわけです。

ここで、Aの行為は、他人の著作物をTwitterを通じて無断で「複製→公衆送信」しているわけですから、著作権のひとつ「複製権」(同21条)「公衆送信権」(同23条1項)侵害になることは自明です(※実際に争点になっていません。ちょっと厳しい気はしますが、法律的にはそうなってしまうのですよね)。

一方、その著作物を含むAの投稿を、リツイートしただけのB等の行為は、公衆送信権侵害にはならないと(地裁、知財高裁で)判断されています。これは、元ツイートのURLがインラインリンクとして含まれるだけでだからですね。

ただ、ここで注目を集めたのは、B等によるリツイート行為が「著作者人格権」侵害になるかどうかです。ここには、Twitterのシステム上の仕組みが関連していたのです。

 

★4.リツイートしただけで「著作者人格権」侵害になってしまう?

利用者Aがツイートした段階では、写真家の方の写真には、ご自身の氏名がⒸ(Copyright、著作権の意味ですね)と共に表示されていたそうです。

著作者には、自分の氏名や芸名などを表示したり、しなかったりを決められる、そして利用者も、既に表示されている氏名等にしたがって表示する…というのが、前述の「氏名表示権」です。Aは表示したとおりにツイート(アップロード)していたのでこの権利は侵害していませんが、トラップになってしまったのがB等による「リツイート」のほうです。

写真がはいったツイートをリツイートした結果、その写真の上下がトリミングされてしまいました。この際に、写真家の方の氏名も削られて、見えないようになってしまったのです。つまり、リツイートに表示されている写真では、(もともと表示されていた)その写真の著作者の氏名が、著作者が表示したとおりに表示されていない…これが「氏名表示権」侵害と判断されたのです。そして、この知財高裁の判決が、今回の最高裁で確定したわけです。

今回の恐ろしいところは、リツイートした人達は、意図して著作者の名前を削除したわけではないところです。あくまで、Twitterの仕様(CSSの設定)により、そういうトリミングになってしまっただけなのです(なお、ツイッター社側は、「サムネールをクリックすれば、氏名が表示されている元画像が見えるのだから氏名表示権は侵害していない」と主張したものの、そのサムネールは別ページにある+全員がサムネールをクリックするとは限らない」ということで、受け入れられませんでした)。

この判決に従い、写真家の方の写真を勝手にツイートしたAのみならず、リツイートしたB等達の情報も、写真家の方に開示されることになります(→著作者人格権侵害として、何らかのアクションがあるかもしれません)。

 

★5.「リツイート」への向き合い方と、Twitterへの期待

今後、Twitter利用者は、「リツイート」という行為に対して、どのように向き合えばいいのでしょうか。

今回の事例・判決を受け、侵害とならないためには、「写真等、著作物らしきものを含むツイートは、(その著作物が投稿者自身のものだと明らかでない限り)リツイートすることを控える」…と言うのは簡単です。

しかし、あまりに多くの人に利用されているTwitterにおいて、そして「素敵な写真!」と思ったら、(「いいね!」のみならず)リツイートすることも慣習的な利用方法となっている中で、利用者を権利侵害のリスクにさらさないような仕様変更はできないものでしょうか。

もちろん、従来の仕様が、さまざまな運用の観点から、合理的なものだったのだろうとは、SNS等のシステムに詳しくない私でも、想像はつきます。しかし、その「観点」に、今回の最高裁判決が加えられてしまったことは、覆しようがありません。安心して利用できるTwitterを、ぜひ期待したいと思います。