外出自粛を余儀なくされていた頃に比べ、外食をする機会が増えてきたという方も多いのではないでしょうか。テイクアウトやデリバリーもいいのですが、やはりお店の雰囲気を味わいながら、出来立ての料理を味わえることにあらためて有難みを感じる今日この頃です。

飲食店に限らず、お店の雰囲気づくりの重要な要素として、「店内でかける音楽」にこだわられている経営者の方も多いと思いますが、よく質問をいただくのが、その場合の著作権の処理についてです。

今回は、著作権法の基本も含め、簡単ではありますが解説をさせていただきます。

★1.著作権(法)のキホンと、ポイントとなる「〇〇権」

音楽は、当然ながら「著作物」です(著作権法2条1項1号、10条1項2号)。
その著作者、つまり作詞家・作曲家が、その著作者となります(同2条1項2号)。

そして、これは音楽の著作物に限りませんが、著作者は「著作権」(複製権やら、公衆送信権やら、同21~28条に定められた「〇〇権」を束にしたような概念です)と「著作者人格権」を得ることになります(同17条1項等)。

その「〇〇権」の中でも、音楽の著作物にとって重要なのが、「演奏権」(同22条)です。

第二十二条
著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。

つまり、著作者ではない者が、その著作物を(著作者の許諾を得ずに)を公に演奏すると、著作権侵害になってしまうということです。

「自分の店はとても小さくて、数人しか入れないから、『公衆』に直接聞かせていることにはならないんじゃないか?」と考えられる方がいるかもしれません。しかし、そのお店が、どんなお客様にも門戸を開いているのであれば、(たとえ同時に入れるのは少人数だとしても)延べでいえば多数のお客様が出入りするので、やはり「公衆に音楽を聞かせる」目的として、演奏権の対象になるでしょうね。

ところで、「演奏」と聞くと、どうしても「生演奏」をイメージしがちなのですが、音楽が録音されたCDやダウンロードデータ、はたまたストリーミング音源などを再生することも、著作物の「演奏」になります。店内で音楽をかけたい、という方は、だいたいこれらの音源を再生されるでしょうから、著作者から「演奏権の許諾」を得なければならないことになります。

★2.演奏権の許諾とJASRAC

では、自分がいろいろな曲をかけようとしたときに、いちいちどうやって、それぞれの著作者に許諾をとればいいのでしょうか?そんなことは可能なのでしょうか?

そこは「音楽の著作物」のいいところで、特定の「著作権管理事業者」が管理をしてくれていますので、そこに許諾をとればいいのです。その管理事業者が、いわゆる「JASRAC」(一般社団法人 日本音楽著作権協会)です。では、なぜJASRACに許諾を取るのでしょう?

著作物を創作した人、つまり作詞家・作曲家が、その著作物の「著作権」を得ることは、★1で説明した通りですが、多くの作詞家・作曲家は、その著作権のほとんどを、「音楽出版社」と契約により譲渡します。つまり、ここで著作者(作詞家・作曲家)と、著作「権」者(音楽出版社)が、分かれるのです。

音楽出版社は、その曲がより多く使用されるように「開発」をしてくれる存在ですが、さらにその権利のほとんどを、JASRACに(信託)譲渡します。つまり、実質的な著作「権」者は、JASRACということになります。著作権の使用について、著作権者(=JASRAC)に許諾を取るわけですね。

なお、音楽の著作物についての著作権管理事業者としては、「NEXTONE(ネクストーン)」もありますが、NEXTONEは演奏権の管理は行っていないので、お店での演奏の許諾ということになると、だいたいはJASRACということになります。

★3.どうやって・どれくらい使用料を払えばいい?

JASRACは、「その曲を使いたい」という人には、定めた使用料さえ払ってくれれば、誰にでも使用を許諾します(「Aさんには許諾するけど、Bさんには許諾しない」というような、いじわるはしません)。

しかし、お店でかける曲は、たとえ同じようなジャンルの曲をかけていたとしても、日々異なるのが当たり前だと思います。いちいちかけた曲のセットリストを提出して許諾をとる…なんて、日々の業務に加えてやってられませんよね。

それはJASRACもわかっていて、お店での音楽の使用については、年ごと・月ごとといった、包括的な使用料も設定しています。面積に応じて金額は決まっている仕組みです。
(各種施設でのBGM)
https://www.jasrac.or.jp/info/bgm/index.html

★4.レコード会社の許諾は必要か?

ところで、「市販のCDとかではなく、自分で演奏したものを録音して流したら、JASRACに使用料を払わなくてもいい?」というようなことはありません。JASRACが管理しているのは、「曲の著作権」ですね。誰が録音したものであっても、その曲の著作権を利用していることにはかわりありません。
では、逆に考えたとき、CDのようにオフィシャルに録音されたものを発売している、「レコード会社」の許諾は取らなくてもいいのでしょうか?

結論から言うと、これは不要です。録音された部分については、その費用を負担したものが得る「(レコード製作者の)著作隣接権」というものが発生しており、まさにレコード会社がその権利を有していることは多いのですが、この著作隣接権を構成する「〇〇権」には、「演奏権」が含まれていないのです。使用するほうからすれば、使用料を払う相手が減るのはいいことですが、レコード会社の立場に立つと、お店などで演奏されてもお金が入ってこないというのはかわいそうな気もしますね。

★5.JASRACの許諾をとらずに、合法的に音楽を流す方法

「どうしてもJASRACと手続きしたくない、でも著作権侵害はしたくない」という方に、お店で音楽を流す方法はあるでしょうか。あります。いわゆる「有線放送」(有線音楽放送)を引けばいいのです。その場合は、お店のほうで許諾の手続きをする必要がありません。

これは、JASRACと契約を締結している有線放送などの音源提供事業者が、お店などに代わってBGMの著作権使用料を支払っているからです。有線音楽放送など、(対象となる音源提供事業者一覧)
https://www.jasrac.or.jp/news/pdf/bgm_list.pdf

主要な有線音楽放送には、さまざまなジャンルのチャンネルがあるので、便利ですよね。また、有線とCDの両方をBGMとして流す場合も、お店などが個別に手続きする必要はありません。

あとはやっぱりテレビ・ラジオ、ですよね。これらの生放送をお店で流すのも当然合法、かつJASRACの手続きは不要なのですが、この根拠は「著作権法」になります。

放送をいったん受信して、そこにいる公衆に聞かせる行為は「伝達」とよばれます(伝達権は同23条2項)。しかし、同38条2項で、著作(権)者の伝達権は制限されているのです。

第三十八条 3項
放送され、又は有線放送される著作物(放送される著作物が自動公衆送信される場合の当該著作物を含む。)は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、受信装置を用いて公に伝達することができる。通常の家庭用受信装置を用いてする場合も、同様とする。

つまり、お店に通常のラジオの受信機を置いて流していても、それは著作権侵害にはならないということです。なお、通常の放送局の放送を「Radiko」などのインターネット同時再送信サービスで受信し、店内で流しても同様にセーフですが、独自の放送を流している「インターネットラジオ」などは対象外になるのでご注意ください。また、番組を「録音」して再生していると、また対象外になってしまうのでご注意ください。

★6.最後に~音楽を愛する者だからこそ

JASRACと「利用許諾契約」を締結すると、契約店であることを明示するためのステッカーがもらえます。店の入口などに貼付して、堂々と好きな音楽をかけることができるわけです。

また、JASRACにおさめる使用料は、税金とは違います。徴収した使用料から管理手数料をJASRACが控除して、音楽出版社へと分配し、音楽出版社は契約に基づき、著作者(=作詞家、作曲家。どちらも一人で行うソングライターもです)へと「印税」という形で支払います。つまり、みなさんが収める使用料は、みなさんが大好きな音楽をつくってくれた(・つくってくれる)人たちへと還流していく原資なのです。

新型コロナウィルスの影響で、通常とは異なる店舗経営の難しさが訪れている昨今とは存じますが、音楽の力を理解している経営者の皆様には、ぜひ正しい手続きを経て、音楽を自由にかけることのできる状況を得てほしいと思います。