◎「鬼滅」グッズ 鬼より手ごわい!?“偽滅”の戦い 次々と出現 怪しい模倣品の数々(スポニチAnnex)
https://www.sponichi.co.jp/society/news/2020/10/26/kiji/20201026s00042000148000c.html

マンガ、TVアニメ、そして映画へと「鬼滅の刃」が現象的なヒットを記録していますね。当然、関連グッズも大きなセールスを記録していると思われますが、上記の記事からは、その模倣品が多く出回っていることが伺えます。

模倣品対策としては、知的財産権の活用をまず考えるべきですが、(知的財産権のうち)手続きをせずに発生する「著作権」だけでは、アニメ等のキャラから派生する、無許諾なビジネスをすべて防ぐことが難しいのは、「マリカー訴訟」が時間を要したことからも想像できると思います。

まして、相手が複数かつ見えないとなれば、なおさらです。

そこで、このようなニュースも出てきます。
◎「鬼滅の刃」でおなじみのデザインを集英社が商標出願!(GAMEWatch)https://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1265178.html

知的財産権の中でも、特許庁に手続きをすることで取得でき得る、「意匠権」「商標権」を検討することになります。出願し、審査が通れば、その出願人のみに独占的な権利として与えられるものですから、他者がそれを使用していれば容易に差止ができます(相手は「知らなかった」と逃げることもできません)。

しかしここで、今回のようなデザインの保護であれば、「物品のデザイン(美的外観)を保護する「意匠権」(意匠登録出願)をするほうが自然なのでは?」と思われる方もいるかもしれません。しかし、それができないのは、(商標登録には不要で)意匠登録には求められる「新規性」という要件のせいなのです。

意匠権は、その対象となるデザインを「創作」した人にだけ、認められる得る権利です。そして、そのデザインは、まだ世の中に出ていない、新しい、つまり「新規性」のあるデザインしか、登録対象にならないのです。世の中に既にあるデザインを、先に出願したというだけで、特定の人に独占させるのは、不合理ですよね。やはりそういう強い権利を与えられるのは、かつてない「新規」なデザインを苦労して生み出し(かつ、先に出願した)人だけなのです。

なお、新規性と似た要件で、既にあるデザインを安易に組み合わせたりしたものはダメという「創作非容易性」という要件も、意匠登録には求められます。

こうしてみると、たとえば「鬼滅の刃」の竈門炭治郎が着ている服の柄、「緑と黒の市松模様」は、既に世界に存在していたデザインでしょうから、たとえ彼の人気で話題になっているとしても、新規性や創作非容易性は満たさないでしょう(ファッションに関するデザインは、なかなか意匠権で保護しづらいのも、やはりこの新規性・創作非容易性の壁があるからといえます)。

一方、商標権には、そうした「新規性」の要件がありません。どこかで見たようなロゴマークや、よく聞く名称だとしても、誰も出願して商標登録していなければ、原則は「早い者勝ち」で登録されます。また、新規性がないということは、その商標権を誰かが手放す(=更新せずに消滅)すれば、他の誰かがその商標を出願して登録することも可能になります。

これはなぜかといえば、あくまで、商標権(商標法)は「その商標を、しっかりと使用したときに、そこに積み重なっていくブランド力を保護する」ことを目的としているからです。たとえ、苦労して創作した、かっこいいデザインのロゴマークだとしても、その創作性を讃えて登録を認めるわけではないということですね。つまり、(登録)商標とは「選択物」であり、創作物ではないのです。

では、今回、集英社によって出願された、「鬼滅の刃」に登場する、柄というか地模様のデザインは、スムーズに商標登録されるでしょうか?その答えは「難しいが、可能性はある」という感じでしょうか。

というのも、今度は、(意匠登録には求められないが)商標登録には求められる、「識別力」という要件があるからです。提供する商品やサービスにその商標をつけたときに、誰が提供するものなのか、”目印”となる力のことです。

一般名称や、商品の品質を説明しているだけの言葉などには、識別力がないのは当然ですが、(模様的に連続反復する図形等により構成されるもの)「地模様」も、原則としては識別力がないものと扱われ、出願は拒絶されます(商標法3条1項6号と、その特許庁審査基準より)。

ではなぜ、地模様といえる、(炭治郎の)「緑と黒の市松模様」でも、商標登録の可能性は「ある」としたかというと、ここで「周知性・著名性が、識別力を生むことがある」からです。事業者の大規模な広告宣伝活動や、長年の販売実績などにより、本来識別力がない商標でも、「あ、それって、〇〇社のものだよね!」とわかるようになることがあるからです。

地模様的なもので商標登録が認められたものとしては、たとえば、「伊勢丹(株式会社三越伊勢丹)」の、包装などに使われる柄の模様があります。確かに、本来は識別力がないはずの柄ですが、確かにこれを見れば、「あ、あのデパートの!」という程に周知・著名ですよね。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2007-077687/B0929320A364F24EF7544E71B132A8EF539AAE3B8F671AB952CE65FA8ABAA21F/40/ja

ということで、今回の「鬼滅の刃」関連の柄(デザイン)の商標出願も、指定している商品等との関係では、この柄を見れば「あ、あのキメツのやつだ!」というほどに、既に周知性・著名性が生じている=識別力があると認められ、商標登録されるかもしれない、ということです。

さて、長くなりましたが、デザイン的な魅力を有する商品を扱っている方には、他人事ではりません。

  • 自分が創作した「新規性のある」デザインであれば、意匠登録できるかもしれない⇔だけど、新規性が必要なので、出願は急ぐべき(※自分で世の中に販売しても、新規性は失われます。例外的に認められるのはたった1年!)
  • ありふれたデザインは意匠登録できないけど、自分がずっと商品の目印として使用して、「周知・著名性」を獲得したデザインなら、商標登録できるかもしれない

ということを念頭において、適切な権利取得を目指していただければと思います(→もちろん、「よくわからないけど、気になる!」という場合は、ぜひONION商標までご相談ください)。