春は、何かと引越を伴う移動が多い季節ですよね。役所に転出届や転入届を出したり、警察署に行って運転免許証の住所を変更したりと何かと手続きが多いのですが、ところで、商標登録出願のときに、商標登録願(願書)に住所を記載したのを覚えていらっしゃいますか?(この住所は商標登録にも引き継がれます)。この住所が変わった場合、どうすればいいのでしょうか?

また、3月で期末を迎える企業にとっては、このタイミングで社名の変更や、グループ企業の発足・統合などということをされる場合も多いかもしれません。これに伴い、商標登録の「商標権者」に記載されている名称を変えたいということも多いでしょう。

住所や名称に変更があった場合、どのようにすればいいのでしょうか? そのままにしておいた場合、どのようなリスクがあるのでしょうか?

★1.住所変更した場合

事業所の移転や、引越しなどで、登録商標に記載されている住所に変更があった場合は、「登録名義人の表示変更登録申請」という手続きを行います。

こちらは、すでに登録されている商標について、特許庁に備える「登録原簿」に記載されている事項を変更する手続になります。変更手続きには、(弁理士に依頼する場合は、弁理士への費用に加え)1項目あたり1,000円の収入印紙が必要となります。

しかし、忙しい時期の移転で、どうしても後回しになってしまう場合もあります。「別に、商標登録証だってこのままだし、別に住所の(表示)変更なんてしなくてもいいんじゃないか?」と思われるかもしれません。では、変更しないリスクにはどのようなものが考えられるでしょう?

◎変更しないリスク① 「商標権の行使がスムーズにいかない場合がある?」

商標権のライセンス契約や、商標権の行使(※商標権侵害をしている者に対する、使用差し止等)をする際には、特許庁の登録原簿に記載された権利者情報と、契約書又は訴訟の当事者(商標権者)の情報が一致していることが必要です。

それが、いざ「ライセンス契約を結ぶ」あるいは「訴えを提起する」となったときに、現在の住所が、商標登録における住所と異なることが発覚してしまうと、そこから住所の(表示)変更手続が完了するまで、進行できなくなってしまうのです。いつ生じるかわからず、また生じた場合は一刻を争うこともある契約や訴訟において、この時間のロスのリスクは、決して小さくありません。

◎変更しないリスク② 「自分の登録商標のせいで、あらたな商標出願が拒絶になる?」

商品(※商標登録済)がヒットしてシリーズ化されることになった場合など、登録商標と類似する商標を、新たに商標登録したくなる場合があります。先に「同一又は類似の、先願商標」が存在すると、商標登録ができない(商標法4条1項11号)わけですが、これはあくまで「他人の」先願商標しか引例になりませんので、「自分の」先願と類似する商標なら、登録可能なわけです。

しかし、新たな商標登録出願を新しい住所で行った場合、すでに登録されている商標の住所が変更されていないことによって、自身の登録商標が他人の先願登録商標と判断されてしまい、拒絶理由通知を受領してしまうリスクがあるのです。

もちろん、この段階で変更手続きを行うことで拒絶理由を解消することはできますが、本来ならスムーズに登録査定を受けることができた出願にも関わらず、変更手続きの完了と再審査の間、登録が遅れてしまうこととなります。近年、ただでさえ審査着手・登録まで時間を要しているなかで、この追加のタイムロスは、事業に痛手となりかねません。

なお、特許庁の審査待ちで、まだ登録に至っていない商標登録「出願中」に住所変更が生じた場合は、「住所変更届」で済ませることができます(特許庁への費用も不要です)。これは登録査定を受領してから、登録料を納付するまでに変更するのがいいでしょう(※登録料を納付すると、変更前の住所のまま商標登録証が発行されてしまうからです)。

★2.社名など「商標権者」が変更となる場合

社名の変更や改姓などの名称変更により、商標登録上の「商標権者」に変更が生じた場合も、特許庁への手続きをしておく必要があります。具体的には、

(登記上同一法人の社名変更)
◎出願中⇒「名称変更届」
◎登録済(商標権)⇒「登録名義人の表示変更登録申請」

となります。

一方、同じ名称の変更でも、
*個人所有の商標登録を、自分が経営する「会社」の登録にしたい
*会社で所有している商標登録を、グループ内の別会社の登録に移転したい
というような場合もあるかと思います。

これらの場合は、自身と関連がある主体に変更するイメージかもしれませんが、実際は「別の法人格」が商標権者になるわけですから、

◎出願中であれば、「出願人の名義変更」
(特許庁費用4,200円@件、「譲渡証書」が必要)

が必要ですし、

◎登録済(商標権)であれば、もう「商標権の譲渡」

という扱いになってしまいます。

商標権の譲渡だと、必要となる手続きは、特許庁に支払う費用も 30,000円@件と高くなり、必要な書類も「譲渡証書」のほかに、会社法上の利益相反関係に該当する場合は、別途そこに対応する書類が必要となってきます。

商標権は重要な無形資産ですから、その住所・名称に変化があったときのメンテナンスもしっかりしながら、維持・活用していくことが大事ですね。ONION商標では、商標登録で終わりではなく、その先の場面でも、経験・知見をもってコンサルティングさせていただきます。ぜひお気軽にご相談ください。