商標登録に関心ある皆さまにおかれましては、このような記事に目を留められたことがある方も多いのではないでしょうか。

鮮度良し「三沢昼いか」、地域団体商標に登録(朝日新聞デジタル)
https://www.asahi.com/articles/ASP6M6RMKP6KULUC00H.html

「地域団体商標」ですね。ただ、一方で、商標登録(出願)を経験されたことのある皆さまからは、

「『地名+〇〇(商品名等)』の文字商標を、〇〇に使うものとして、商標登録できるんですか?」

という質問もいただくかもしれません。まさに、おっしゃるとおり、そのような商標は、「〇〇」の産地・販売地等を説明するにすぎず、識別力がない(=他の商標と区別する力がない)、いわゆる「記述的商標」(商標法3条1項各号該当)として、商標登録が認められない、というのが”原則”です。

つまり、本来なら認められないはずの記述的な商標を、地域ブランド保護・振興のため、特定の団体に、特定の目的のときにだけ、”例外的に”登録を認める制度が、「地域団体商標」なのです。

以下、簡単にそのポイントを整理していきます。

★1.どんな商標が対象か?

2006年4月1日に導入された「地域団体商標」制度ですが、対象となる商標は、以下のような構成からなるものです:

文字商標で、

「地域の名称」+「商品(サービス)名」

等の組み合わせからなるもの、です。もちろん、その地域名と商品名等に関連性がないとダメなのは当然ですね。

ここでいう「地域の名称」とは、現存する地名(行政区画名)だけでなく旧地名、旧国名、河川名、山岳名、海域名などもOKです。たとえば、こんな地域団体商標が登録を認められています。

例)登録第5167617号 「武州正藍染」
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2007-093898/4A324A5E822C52D8EB20D38165511C41DD8059E3E8569A0B496587893303C818/40/ja

また、「商品(サービス)名」とは、その商品・サービスの普通名称・慣用名称のことをいいます(※前述の「三沢昼いか」なら、「昼いか」はスルメイカという商品の慣用名称といえそうです)。

ただ、ここに、産地等を表示する際に付される文字として慣用されている文字(本場、特産名産 等)も組み合わせることができます。

例)登録5564311号 「山形名物玉こんにゃく」
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2009-025972/01A95E3E7D92CC3260E2AEB8DDF376488CEF8F439F4D983636A3C9504B8F90E4/40/ja

また、「サービス名」を含む地域団体商標の例ですが、

・「温泉」というサービス

例)登録5224250号 「長門湯本温泉」
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2008-052684/D2441D3AC24AD3707C578A64946175EE3F97B7A554596E6837C77214C45B0CC3/40/ja

「飲食物の提供」というサービス

例)登録5069264号 「横濵中華街」
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2006-078932/0B3B8AA6B5D9F6FC2E0464638D9A07CEE5A64D2DEA53C69AAED6F414E3602470/40/ja

などがあります。

また、「地域の名称」が含まれるため、どうしても日本語(かな、漢字)表記の商標をイメージしますが、最近、このような登録も認められました。

例)登録6443731号 「KOBE LEATHER」
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2020-109995/07553FC51674B5D7263AACF7DCCE27F2D3A568C4829ABF3EA8A216A771E2601E/40/ja

なかなか、バラエティに富んでいますよね。

★2.なぜ、ロゴマークはダメなのか?そして、求められる「周知性」とは?

地域団体商標の対象(登録要件)としては、
・「商標が文字のみであること」
・「商標の構成文字が図案化されていないこと」
というものがあります。つまり、いわゆる「ロゴマーク」はダメということです。

では、なぜロゴマークは、地域団体商標の対象とならないのでしょう…?

その理由としては、そもそも、図案化された「ロゴマーク」(※「地域名+商品(サービス)名」であれば、わざわざ地域団体商標の制度を利用しなくても、登録され得るからです。

ヒントは、★1の冒頭にあるのですが、「地域名+商品(サービス)名」からなる文字商標で、その商品・サービスの範囲を指定すると、識別力のない記述的商標として、拒絶されます

一方、ロゴマークであれば、一般的には識別力が生まれますので、「記述的商標」としては拒絶されません。

実は、地域団体商標の制度がなかった時代、地域の特産品などを商標登録で保護しようとすると、
①全国的な著名性を獲得して、識別力を得て、登録を認めてもらう(商標法3条2項)
②「地域名+商品(サービス)名」に図形要素を加えた「ロゴマーク」や、商品の「パッケージ」全体など、識別力のある商標で出願・登録する

しかありませんでした。

しかし、①の要件を満たすのは容易ではなく、全国的に相当程度知られるようになるまでの間は他人の便乗使用を排除できませんし、また、他人により使用されることによってその名称の普通名称化が進んでしまい、識別力の獲得がますます困難になるという問題がありました。

また、②の方策の場合、確かに登録可能性は上がるのですが、一方、このような図形入りの商標については、他人が

「文字部分は同一であっても、図形部分が異なる」商標

を使用した場合には、原則としてこれらの商標が類似とは認められないことから、せっかく商標登録しても、そうした文字部分の便乗使用を有効に排除できないという問題がありました。

こうした問題を解決すべく導入されたのが、地域団体商標制度なんですね。つまり、上記の①を解決すべく、

・商標法3条2項よりも要件緩和→全国的に著名でなくても、「一定の地理的範囲の需要者間である程度有名」であればよい。

としました。つまり、地域団体商標は、ある程度は知られていなければいけないのですが、「一定の地理的範囲の需要者間で、ある程度有名であること」が必要とされています。これは、出願団体又はその構成員の使用により、一定の地理的範囲の需要者(最終消費者又は取引事業者)に知られていることが客観的事実(販売数量、新聞報道など)によって証明できることが必要です。

そして、②のような方策をとらなくても、地域ブランド保護のために、こうした(文字)商標について本当に商標権を持つべき団体にのみ、記述的商標との判断をせずに登録を認めるという制度にしたわけです。

では、そのような「団体」とは、一体どのようなものなのでしょう??

いいところですが、だいぶ長い記事になりましたので、続きは近日「その2」でご説明したいと思います。

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