先日、こんなニュースがありました。

◎「経済安保法案『特許非公開』違反などに罰則 情報流出防止へ」(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20220122/k00/00m/010/014000c

政府は、今国会に提出する経済安全保障推進法案に「特許非公開制度」を盛り込むことを検討しているんですね。特許出願された発明を審査し、安全保障上の機微情報があれば「保全対象発明」に指定して、適正な情報管理や外国への出願禁止などの制限を課す…というものなのですが….

…今回、お話ししたいのは、その前提です。

発明は、特許出願すると、世の中に「公開される」のが大原則です!
(上記の記事で紹介されているような制度が、対象として検討している発明は、あくまで限定的・例外的なものとなります)。

特許庁に出願する「特許願」には、発明の内容は詳しく記載する必要があるわけですが、これはすぐ公開になるわけではなくて、出願から「1年6ヶ月」経過すると、問答無用で公開されます(※「デザイン」に関する知的財産権である「意匠権」については、一定期間内容を秘密にする「秘密意匠制度」がありますが、特許権には現在はそのような制度がありません)。

発明が公開されれば、特許登録が認められるための要件「新規性」が失われます。つまり、その発明を他の誰かが出願しても、登録が認められないことになります。その点から、もともと、自分の発明を「特許登録までは求めていないけど、他の誰かに登録される(=独占される)のはイヤだな」という理由で出願される場合はいいのですが、そもそもそのような目的で出願されるのは、研究部門を持ち、多くの発明を出願しているような企業に限られるのではないでしょうか。

逆に、初めて「特許出願」を検討しているような個人、あるいは中小企業の方には、出願される前に、この大原則をあらためて意識していただきたいのです。

そもそも、なぜ特許出願に係る発明が公開されてしまうのかといえば、その法目的も関係しています。

せっかくの発明は、発明者が秘匿し、企業秘密・営業秘密として保護することも可能です。しかし、それを公開してくれれば、その発明を元に、さらなる発明が生まれることにつながっていきます。世の中の課題を解決する新しい発明が、次々となされていけば、産業も発達しますよね。

ただ、そんなせっかくの発明を公開してくれる発明者には、一定のインセンティヴを与えるべきだ、それが、原則「出願から20年の間」特許発明を独占排他的に実施できる権利、特許権なのです。

しかし、特許権は、商標権のように更新することはできません。あまり長期にわたって、特定の者が独占的な権利を保有し続けることは、むしろ産業の発達を疎外すると考えられているわけです(「ジェネリック医薬品」は、特許権が切れた発明を、第三者が実施できることで、安く製造が可能となっているものですよね)。

そして、無事、特許権が取得できたとしても、そこまでかかる期間・費用共に、商標の出願・登録よりも、かかります(出願から登録まで、数年かかる場合もありますので、特許権が認められても、その存続期間は20年より短いこととなります)。

さらに、特許が認められる要件も、(商標と同様の「早い者勝ち」の要素に加え)、世界で既に公開されている発明と比して「新規性があるか」「進歩性があるか」等の要件もございますので、出願すれば登録が認められるかどうかの予測は、完全ではありません(また、予測の確度を上げるために、詳細な事前調査を行えば、さらに費用がかかってまいります※1)。

そう考えると、特許出願をする際には、特許が認められたときのメリットの大きさ、認められなかったときのデメリットを、総合的に検討することが必要です。たとえば、

*「発明が公開されるが、そのリスクに耐えられるか」
→もし特許が認められなければ、独占的な権利が得られず、誰もが実施できる状態となってしまう
→そもそも、その発明は、他者から模倣されやすいものか(模倣されづらいものであれば、公開されるリスクと、営業秘密として秘匿するほうが安全かも※1)

※1「特定登録調査機関制度」の利用も検討しましょう。これは、利用出願済かつ未審査請求の特許出願について、特定登録調査機関に調査を依頼(有償)することで、特定登録調査機関による調査報告(登録調査機関による特許庁への先行技術調査報告と同品質の調査報告)を得ることができます。この調査報告を活用することで、権利化可能性が低いと判断された場合、公開される前に出願を取り下げることで、発明を秘匿できることになります。

*「かかる費用を、特許権の実施により回収できるか」
→せっかく特許が認められても、そこまでにかかった費用以上の利益を生み出してくれるものでなければ、割が合いません
→つまり、特許が認められたときの売上やライセンス料の想定、商品・サービスのキモとなる発明が特許権の範囲に属しているか、特許権の存続期間よりも短期間で陳腐化し得る発明ではないか、等の検討が必要です。

等の点を留意の上、本当にその発明を出願するべきか(あるいは、出願せずに秘匿して実施していくべきか)を、十分に検討いただければと思います。もちろん、その検討の上で、特許権取得の価値があるとご判断されれば、ぜひチャレンジしましょう!ということになります。

ONION商標は、”商標専門”をうたっておりますが、特許のご相談については、その発明の分野に強い、特許専門の提携弁理士とタッグを組んで、対応させていただきます。お気軽にご相談ください。

 

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