商標登録の出願を特許庁にしてから、「登録査定」を受領するまでの過程は様々です。時間はある程度かかるにしても、「拒絶理由通知」を受領することなくスムーズに登録査定となる場合もあれば、拒絶理由への反論、それも審査段階では終わらず、「拒絶査定不服審判」(や、さらにその次の「審決取消訴訟」)を経て得られたとなれば、感慨もひとしおだと思います。

「登録査定受領より30日」という期限内に、必要な登録料を納付すれば、約10日〜2週間で特許庁による商標登録の処理が完了し、これにより商標権が発生します。その後、商標登録証の送付(約10日~ 2週間で到着)となりますので、つまり皆さんが登録証を受け取る頃には、商標権は無事発生している訳です。

「よし、これで晴れて『登録商標』だ。®️マークもつけて、ガシガシアピールして行くぞ〜」
あるいは
「発生した商標権を早速行使して、うちの商標をマネしていた会社に差止請求しよう」
というモードになられる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、もうちょっとだけ待ってほしいのです。せっかくの登録商標も、もうしばらくは「やや不安定」な状況にあるのです。試しに、特許庁のデータベース「J-PlatPat」で、ご自身の登録商標の情報をご覧になってみてください。その「ステータス」の項目は…

​​ 存続-登録-異議申立のための公告

という表記になっているはずです。

「え、よくわからない。『存続-登録』ってのは、最近登録されたばかりで、権利が存続しているのはあたりまえだから、『異議申立のための公告』が問題だってこと? いや、そもそも『異議申立』って何??」

という方も多いかもしれません。こういうステータスになっている商標登録は、「今なら誰でも、その登録に対して異議を申し立てられますよ」という状態なのです。つまり、その異議が申し立てられたら、せっかくの商標登録が取り消され、なかったものとなってしまうのです…

では、その商標登録の「異議申立」とは何なのか、まずは商標法の条文をみてみましょう。

(登録異議の申立て)
第四十三条の二 何人も、商標掲載公報の発行の日から二月以内に限り、特許庁長官に、商標登録が次の各号のいずれかに該当することを理由として登録異議の申立てをすることができる。(以下略)

いろいろな要素がこの条文に詰め込まれていますね。要点を整理していきますが、それはこの制度がある理由に即したものになっています。

①誰でも、異議申立をすることができる

そもそも、なぜこのような制度があるのかというと、「商標登録に対する信頼性を高める」という公益的な目的からです。登録査定までの審査は、審査官一人で行っています。もちろん、この審査も重いものですが、間違った審査判断をしてしまうこともあるだろうと。なので、そのような「瑕疵(かし)のある登録」を見つけたら、誰でも異議を申し立ててくださいよ、と。そして、特許庁自ら、自分達の判断をもう一度審理して、間違いであることがわかったら、登録を取り消しますよ、ということです。

ちなみに、異議申立の審理・決定は、3人又は5人の「審判官の合議体」によって行われます(同法43条の3)。

②申立できるのは、(商標掲載公報発行から)2ヶ月以内

決して長い期間ではないですよね。これは、(異議申し立てられるかもしれない)登録商標の権利者(商標権者)側への配慮があります。だって、あまり長いと、なかなか安心して使い始められないですからね。

では、商標権者は、登録・公報発行から2ヶ月は、どのように過ごせばいい?のでしょうか。

必ずしも、異議申立をされたからといって、必ず登録が取り消されてしまうというわけではありません。申し立てられた場合は、その内容(異議申立書副本)が届きますが、特に何かをする必要はありません。審理の結果、「この登録はやっぱり正しかったです」という維持決定であれば、それこそ安心して商標を使用し始められます(※もし「間違いだった、取り消します」という取消決定通知を受領しても、そこで意見書による反論をすることが認められています)。

ただ、この2ヶ月というのは、「異議申立をされる可能性がある→取り消しになってしまう可能性がある」ということですし、また、いきなり異議申立をされなくとも、他者からなんらかの「放棄・譲渡交渉」を通知されることもあり得ます。

これは、登録された商標が、権利意識の高い大手企業・海外企業の登録商標/ブランドと近い部分がある場合に起きうる話です。特許庁の審査では、このような(大手企業等の)登録商標とは非類似である、混同など起こらない、と審査官が判断したからこそ登録が認められているわけですが、それでもブランド保護意識の高い企業は、「ちょっとでも自社のブランドを毀損する可能性のある、他者の登録商標」は、なるべく存在しないで欲しいと思っているからです(なお、そのような交渉にのるかどうかは、弁理士にご相談の上、ケースバイケースでご判断ください)。

以上の理由から、この2ヶ月間について、まだ使用開始前の商標であれば、積極的な使用は控えるのが最も安全ですし、使用しているにしても、他者への権利行使などは我慢しておくほうが賢明です。

なお、この期間を超えても、商標登録に対する「取消審判」「無効審判」の存在はありますが、ざっくり言って「登録商標を正しく使用していれば、取消審判の請求が認められてしまうことは、原則無い」ですし、無効審判についても、*申し立てができるのは「利害関係者のみ」、*(異議申立理由が審査段階の拒絶理由とほぼ同じなのに対し)無効理由は拒絶理由よりも制限されている、*(仮に無効理由に該当していても)一定の除斥期間を経過すれば、請求不可となる…などから、通常は安心して商標権の使用・場合によっては権利行使が可能ということになります。

さて、今回は、商標権者側からみた異議申立制度の解説となりましたが、
「こんな登録が認められているのはおかしい!」
「このまま認められたら、不利益を被ってしまう!」
という方を、救済し得る制度でもあります(※仮に無効審判を請求できる利害関係者でも、異議申立が可能な期間であれば、利用したほうがいいです)。そのような場合も、ぜひ商標に詳しい弁理士に、ご相談ください(もちろん、ONION商標はそのようなご相談に対応しております)。

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