ONION商標・弁理士の山中です。

は、卒業式など「別れの季節」なわけですが、と同時に新しい出会いに満ちた季節でもあるわけですよね。しかし、圧倒的に「別れ」のせつなさのほうが上回ってしまうカテゴリーもあります。たとえば「ラジオ番組」です。

この春も、90年代初頭から続いてきた、bay fmの夕方の「BAY LINE」シリーズとか、TBSラジオの朝の人気番組「伊集院光とらじおと」といった帯番組が、終了となりました。

◎「伊集院光、6年パーソナリティー務めたラジオ番組が最終回「僕はまた朝の番組やります」(日刊スポーツ)
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202203240000276.html

定期的にパーソナリティが変更となる、ニッポン放送「オールナイトニッポン」でも、菅田将暉さんの月曜1部が終了になるとのこと。深夜放送となれば、下記ような理由で終了することもあるでしょうね。

◎「菅田将暉“ANN”3月で卒業「ガチです 理由は体力面 アラサーなので」(日刊スポーツ)
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202112210000155.html

テレビ番組は1クール(13週)以内で終わってしまうものが大半になりましたし、そもそもマンガなどの終了時期は季節と関係ないですし、もっといえばYouTubeのアカウントであれば(投稿者がやめたくならない限り)終了する必要がないですよね。

しかし、ラジオ番組は、(テレビに比べ)一旦始まったら、ある程度続いてくれるもの…という認識が今も残る一方で、さまざまな事情で番組終了となってしまうとしたら、(秋と)春の「改編期」であることが一般的です。そこで、この時期、SNS上では「ラジオ改編」に関するハッシュタグがついた投稿が活発になり、「自分の好きな番組が、改編を乗り切った!」という歓喜に、「あー、ずっと聴いてきた番組が終わってしまう…」という悲しみのツイートも入り混じったタイムラインとなるわけです。

また、ラジオは、一度気に入ると聴取習慣が根付くもの故に、それが終わってしまうことの喪失感も増大されるんでしょうね。もちろん、その後に始まる新番組との”新しい出会い”もあるのですが、今まで聴いてきたものと同じように気に入るのかどうかは未知数ですから、「別れはつらいけど、新しい出会いもあるからさ!」という慰めが通用しない(、むしろ、そんなこと言われたら腹が立つかも)のです。

さて、コラムということで、肩のこらないレベルで、「ラジオ」と関連する商標の話を書き綴っていこうと思いますが、「放送」も、サービス(役務)ですから、免許事業者であるラジオ局は、その放送局名、コールサイン(「JO」から始まる4文字)、あるいはそれらをモチーフにしたロゴマークを、第38類という区分の「放送」や「ラジオ放送」といった指定役務などの範囲で、商標登録しているのが通常です。

一方、(テレビ番組もですが)ラジオ番組の名称は、原則、商標登録の必要はありません。番組名は通常、「放送」というサービスの質、内容を示すもの、と考えられているからですね。

しかし近年、ラジオ局が、本業の「放送」以外のサービスを提供したり、また番組名が、それ以外のブランド力を持つ機会も増えて、商標登録の幅も増えているように感じます。

たとえば「ラジオショッピング」や、主催する「イベント」などが考えられます。前者であればそのブランド名は商標となり、いわゆる通信販売は、デパートやスーパーと同じようなサービスを提供するわけですから、第35類の小売等役務の範囲で登録すべきでしょう。後者であれば、イベント名自体が商標として、登録の対象となります。第41類の「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営」といった指定役務はマストですね。

また、人気イベントともなれば、グッズ(物販、マーチャンダイジング)にもその名称はふされるでしょう。それも「商標」として使用していることになりますから、登録が必要です。一口に”グッズ”といっても、Tシャツ、タオル、マグカップ、キーホルダー…これら指定商品は、すべて異なる区分に分類されています(わかりますか?)。

こうしたグッズでいえば、番組名を付したものを作成することもあるかと思います。番組宣伝目的で、非売品の「ノベルティ」グッズに付けるだけなら、商標登録は不要なのですが、実際に販売する商品につけていくのであれば、その商品の範囲を指定しての商標登録が必要となってきます。

最近だと、番組名ではないのですが、番組内で生まれた言葉(文字)をロゴ化して、商標登録した例がありました。

ニッポン放送「リトルトゥース」(複数の登録の一部)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2020-103888/64B7D60D54DDC096EF3C026F464EEDFEE1D7830AEFF881245B45ECDD0E055026/40/ja

また、番組名ではなく、また範囲もグッズのそれではないのですが、ラジオ局の登録としてはこのような例もあります。

文化放送「A&G」
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2021-015001/9D8B7333E26A139BA7FCDB99E5FC453B6E0EC42F6BD23959686AA269019F98EC/40/ja

「A&G」を見て、「アニメ&ゲーム」の略とすぐに想起する人もいるかもしれませんが、直接的に説明するものではなく、またそれが有名になっているとしても、同局の使用により定着していったものであることから、スムーズな登録が認められたのかもしれません。

また、自分の場合、(仕事柄お世話になっていたのは別として)リスナーとしてはラジオ聴取から離れていた時期もあります。そんな自分にもう一度聴く習慣を取り戻させてくれたのは、新しいテクノロジー/画期的な業界の取り組みのおかげです。具体的に言えば、まずはこれですよね。

https://radiko.jp

ラジコのおかげで、ラジオ受信機がなくても、AMもFMもいい音で楽しむことができるようになりました。聞き逃したり、深夜で聴きづらい番組も「タイムフリー」機能で後から聴けますし、有料プランなら居住エリア以外の放送局も聴けるのがスゴい。

しっかり、この名称も、サービスを提供している事業会社により商標登録されています。

株式会社radiko「ラジコ\radiko」
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2009-044654/2F09BD21582B9CFFE6FC48B62BA0C5A23F19085C4D7C4BC896ED9637CFEC7A1D/40/ja
第38類の「放送」だけでなく、第41類「インターネット・携帯電話による通信を用いて行う動画の提供」といった役務も指定されているのは、このサービスならではですかね。

ただ、実のところ、自分が聴取習慣を取り戻したきっかけは、ラジコの前に、「ポッドキャスト」(Podcast、Podcasting)の存在があったのです。番組単位だし、著作権処理の問題で音楽がオミットされていたりしたものの、聴取期間の制限もないですし、(トーク)ラジオの面白さを思い出させてくれたのはこのサービス/技術でした。

ただ、こちらの登録商標をいくつか見てみたところ、「ポッドキャスト(Podcast、Podcasting)」は、すでに放送や配信という役務との関係では、識別力がない(その役務の質を説明するに過ぎない)と判断されているようで、識別力がある図形や、「○○ Podcast」(※○○の部分には、固有名詞や、役務とは関係のない文字が入る)ものでないと、登録が認められないようです。

さて、締めくくりに、好きな番組が終わってしまうことで嘆いている方へ。確かに、DJや他のリスナーと共有したのと、全く同じ時間・空間は戻ってこないかもしれません。それでも、人気番組であれば、「何十年ぶり・一夜だけの復活!」などという特別記念番組が企画されることも最近はありますし、番組は違えど、DJ/パーソナリティが継続して声を聴かせてくれることだってあります。

超私的な話で締めくくりますが、高校時代、夜に勉強してるフリして実はもっと真剣に聴いていたのが、矢口清治さんの洋楽番組(当時FM横浜)と、それが終わった後にチューニングを変えて聴いた上柳昌彦さんの邦楽番組(ニッポン放送)。それから35年ぐらい経って、今の自分の生活スケジュールにちょうど合う時間帯でお二人が番組を持たれています。
矢口さんの声はNack5で23時(月〜木)から、
https://www.nack5.co.jp/program/musicfreeway/
そして早起きすれば上柳さんの声はニッポン放送で平日朝の4:30から
https://www.1242.com/asaborake/
で、再び出逢うこととなったのです。お二人とも声の艶は変わりなく、むしろ円熟した話芸と、貴重なエピソードと共に紹介される音楽に、元気づけられています。

やっぱいいよね、ラジオって。

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