ONION商標・弁理士の山中です。

2022年のプロ野球もついに大詰め、今週末の10月22日からは日本シリーズがスタートします。野球ファンとしては楽しみである反面、自分達が応援するチーム(※弊所所長の小野尾は千葉ロッテ、そして私は横浜DeNA)がその舞台にいない以上、心は来季に向かっている部分も大いにあります。そして、今シーズンの足りない部分の補強、そして将来的・継続的に強豪チームとしていくために、とても重要なのが、こちらですよね。

新人選手選択会議、いわゆる「ドラフト会議」です。

https://draft.npb.jp/draft/2022/

プロ野球の12球団が、高校・大学・社会人・独立リーグなどのアマチュア選手を入団させるためには、原則、この会議で指名をしなければなりません。新人選手の獲得が自由競争だと、契約金が高騰し、戦力の均衡も図れないなどの問題から、1964年に導入され、今日10月20日に行われる今年で58回目だそうです。

その指名に関する細かいルールは、幾度も変更になっていますが、将来有望な選手であれば、「うちのチームが欲しい」「いや、うちのチームも欲しい!」と希望が被ること(重複)はいつの時代もあり得ます。そのような場合はどうするのでしょう?数が多いので(※12球団)、じゃんけんというわけにもいきません。そこで登場するのが、抽選、

すなわち「くじ」ですよね。

その活用の仕方も時代によって異なります。60年代後半から77年までは、予備抽選といって、12球団が「指名する順番」をあらかじめ決めて、その順に選手の指名を行っていたんだそうです(1位の指名が終わったら、2位は逆から、3位はまたその順番で指名していくという「ウェーバー方式」)。
自分が応援している横浜DeNAの前身・大洋ホエールズはくじ運が結構良くて、72年・73年と2年連続で一番くじだったとか。77年、当時法政大学だった江川卓投手が希望していた巨人は、くじで二番目。しかし、一番くじをひいた球団が江川投手を指名してしまったため相思相愛とはならず、その後の紆余曲折(いわゆる「江川事件」)を産むことになったんですね。

そして、自分がプロ野球を熱心に見るようになった80年代は、いわば「くじ」全盛。1位、2位、3位、4位…と、全ての順位の指名について、各球団が希望選手を入札し、もし重複したら毎回抽選でした。当時PL学園の清原和博選手が、6球団に1位指名された1985年(※西武が交渉権獲得)など、その後6位までの指名で計12名の選手の指名が重複して、くじとなっています。くじ引きをするのは大体、球団社長や監督が多いですが、この時代は最後の指名までくじ運との戦いを強いられたわけです。

では、近年は?というと、くじは「1位指名が重複した場合のみ」となっています(※2位以下はウェーバー方式)。ちなみに、2017年は当時早稲田実業高の清宮幸太郎選手に7球団も重複(※北海道日本ハムが交渉権獲得)。外した6球団はまた別の選手を入札するわけですが、そのうち3球団が指名したのが、今季三冠王に輝いた東京ヤクルトの村上宗隆選手(当時九州学院高)です。なお、この年の福岡ソフトバンクは、1位の指名だけで3回くじを外しています…

…あれ、「おいおい、ずいぶん楽しそうに、野球のドラフトのくじの話ばっかしてるじゃないか。それと『商標登録』に、何の関係があるんだよ」という声がそろそろ聞こえてきました(苦笑)。すみません、そろそろ言いましょう、

商標登録でも『くじ』がひかれることがあるんです!

このコラムをご覧いただいている方なら、商標登録は原則「早い者勝ち」というのはご存知ですよね。同一又は類似する商標が、指定商品や指定役務(※その商標を使用する商品やサービス)の重複する範囲で、AさんとBさんから出願されたら、先に出願したほうが商標登録を受けるというものです。しかし、その”早さ”は、リアルタイムで決着がつくわけではなくて、「日単位」なんですね。

たまたま同じネーミングとか、類似するロゴマークなどが、重複する範囲で、異なる人達から「同じ日」に出願されるということは、(確率としてはかなり低いものの)あり得ることだし、その場合「早い者勝ち」の決着がついていません。「じゃあ、おあいこで、両方の出願人に登録を認めてあげれば?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そういうわけにはいきません。そもそも、早い者勝ちで決めているのは、似た商標が別の人達にそれぞれ登録され、同じような商品に使われていたら、「これってどっちの人の商品なの?」という混同が起きてしまいますから。

もちろん、同日に出願した人達で、誰が優先的な地位を得るのかを、協議して決められればそれがベターなんですが、それでも決まらなかった場合に、登場するのが「くじ」なんです。商標法にも以下のとおり決められていますよ。

第八条 同一又は類似の商品又は役務について使用をする同一又は類似の商標について異なつた日に二以上の商標登録出願があつたときは、最先の商標登録出願人のみがその商標について商標登録を受けることができる。
(中略)
5 第二項の協議が成立せず、又は前項の規定により指定した期間内に同項の規定による届出がないときは、特許庁長官が行う公正な方法によるくじにより定めた一の商標登録出願人のみが商標登録を受けることができる。

弊所では、5年以上の商標弁理士のキャリアの中で、まだくじびきに立ち会ったことはないのですが、商標法に沿っての実際の運用を定めた商標審査基準や、審査便覧、そして実際にくじびきのケースに立ち合われた弁理士の方の話を総合すると、

◎まず、じゃんけんで、サイコロを投げる順番を決める。

◎二つのサイコロを振り、(足して)最も多い目を出した順に、順位を決める。

◎その順位に従って、くじ引き器に入れる玉の色を決める(※11種類の色の玉の中から好きな色を選ぶ)。

◎くじびき器は、福引などで見かける、いわゆる「ガラガラ」の立派なやつだそうで、原則「特許庁の、商標課長」がくじを引く

のだそうです。ガラガラに、さらにサイコロとじゃんけんまで組み合わせてましたか。確かに、それぐらいやらないと、「公正な方法」のくじとは言えませんものね。しかし、そのような運任せにならないよう、商品やサービスの目印として使用する商標は、なるべく早く出願手続きを済ませたいものです。

 

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
好評です! ONION商標の新サービス
ロゴ作成+商標登録 =「ロゴトアール®」
https://logoto-r.com/

ロゴ作成から商標登録完了まで、弁理士が一括サポート。
「ライトプラン」は総額374,900円~(消費税込)。いいロゴに®もつけましょう!
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲