前回は、商標法50条で規定される「不使用取消審判」の概要をご説明しました。
https://onion-tmip.net/update/?p=246
かいつまんで復習しますと、「登録商標を、日本国内で3年間続けて使用しないままだと、この審判を請求されたときに、請求が認められ、登録が取り消されてしまうという、まさに「コワイ」制度でした。

ただ、この審判、商標権者(審判請求される側)が、「商標を(3年の間に、一回でも)使っていましたよ」ということを証明できれば、商標権は維持されます(権利維持審決)。

つまり、登録商標を、指定した商品・役務に正しく使用していれば、何も恐れる必要はないのです。

しかし、そこに”盲点”があります。使用していたつもりの商標が、「登録商標とは異なる」場合です。その場合は、商標権者の「使用していました」という主張が認められない可能性が出てくるわけです。では、使用する商標は、登録商標と、完全に一致しないとダメなのでしょうか?

たとえば、登録商標は「横書き」の文字だったけど、実際の使用では「縦書き」の使用だった、というようなケースはどうでしょう。看板の形の都合で、こうならざるを得ないということはありますよね。商標法も、そんなケースまで「ダメ」というほど鬼ではなく、登録商標と「社会通念上同一」の商標を使用していれば、登録商標を使用していたことにしますよ、と規定しています。

この「社会通念上同一」の商標とされる例については、審判便覧に記載がありますが、
https://www.jpo.go.jp/system/trial_appeal/document/sinpan-binran_18/53-01.pdf
主なものを、具体的に説明しますと、
*「「標準文字」で商標登録をしたけれど、使用している商標は、そのロゴタイプ
(書体にのみに変更を加えた同一の文字からなる商標)は、OK。
*ローマ字の「大文字」で商標登録したけれど、使用している商標はその「小文字」(、あるいはその逆パターン)はOK。
などがあります。

一方、判断に気をつけなければいけないのは、例えば
*平仮名及び片仮名とローマ字の相互間の使用
の場合です。商標登録が「オニオン」だったとして、実際に使用しているのが「ONION」だった…というようなケースですね。これは、社会通念上同一の例に挙げられているのですが、それにあてはまらない例外的なケースもあるのです。

*同一の称呼を生ずる場合があって、平仮名及び片仮名とローマ字 のいずれかに別異の観念が含まれるときの相互間の使用は、NG(社会通念上同一ではない)。

これは一体どういうことかというと、

商標登録が「ピース」だったとして、実際に使用していたのが、そのローマ字表記「PEACE」だったとします。しかし、同じ称呼(読み)のローマ字では「PIECE」も考えられます。こういう場合は、「PEACE」(や「PIECE」)を使用していても、登録商標「ピース」を使用していたとはみなされないのです。

同じような判断は、いわゆる「二段書き」の登録商標にも当てはまります。上下が「ローマ字 – カナ表記」、「カナ表記 – 漢字」などで登録されている場合、上下のどちらかを使用していれば、登録商標の使用と判断されるのは、あくまで「原則」。もし、同じ音で違う意味の言葉もあるのであれば、「上下全体を一緒に使用」していない限り、登録商標を使用していることにはなりません。

これが図形商標ですと、多少の違いを「社会通念上同一」として勝手に解釈してしまうと、さらにリスキーになります。実際、この解釈をめぐる審判・裁判も過去に多数ありますが、「同一ではない」と判断されたものとして、
*「図形と文字から構成される」登録商標→図形部分のみで使用していたが、NG
という例もあります。

商標登録出願の際、どのような商標を選択して出願するかは難しい判断で、確かに「先願先登録商標と類似と判断されるのを回避しやすい」商標を選んだり、「ビジネスに使用し得る複数の要素から構成される商標」を一つ出願することで、経費を抑えざるを得ない場面もあるでしょう。

しかし、弊所ONION商標が、「最も多く、一般的に使用する形態の商標」での出願をおすすめしているのは、後々の不使用取消審判のリスクの事前回避策として、それが最も有効だからなのです。

長い時間と費用をかけて、登録した大事な商標と、そこに生まれた商標権。これを大切に守る上で、その使用方法にあらためて疑問や不安を持たれましたら、ONION商標へなんなりとご相談ください。

 

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