弊所は「ONION商標」と名乗りながら、実際は「意匠(※意匠登録をすると「意匠権」が取得できます)」も手掛けています。今までもいくつか意匠の「キホン」に関する記事を書いてきましたが、その内容を、今回は少し角度を変えてご紹介してみたいと思います。
①意匠登録で「守りやすい」商品とは?
最近でこそ定義が少し改正されましたが(※③で後述します)、そもそも意匠権とは、「物品の美的外観(デザイン)」を保護するもの、とされていました。
物品、つまりカタチのあるものですよね。そのカタチがカッコよかったり、かわいかったり、ユニークだったりしたら、それは商品にとって需要なアピールポイントになりますから、これを他人にマネされないように「意匠権」で保護したいわけです。
カタチがあって、そのカタチによって私たちが購買意欲をかき立てられる商品はたくさんあります。意匠登録のキホンを紹介した以下の記事でも、
【知財キホンのキ】はじめての意匠登録〜商標登録とは何が違う?(その1:意匠登録って何のため?)
https://onion-tmip.net/update/?p=1054
・「椅子」
・「カバン」
・「自動車」
・「宝飾品」
・「菓子」
…といった商品を例として挙げていました。ここからイメージを広げていただければ、
「あ、うちが作っている商品だって、カタチ(デザイン)にこだわってるし、それを認めて購入してくださるお客さんがたくさんいるぞ!」
と感じる事業者様はたくさんいらっしゃると思います。かなり高い確率で、そうした商品は「意匠登録」の対象となります。
あと、ご注意いただきたいのは、意匠登録は「立体」のデザインだけが対象では「ない」という点です。平面のデザインでも対象になり得ますからね。
「カタチがない」商品で代表的なものは、「液体」の商品です。しかし、これらだって、その「容器」だったら、カタチがありますよね。そのデザインは、意匠登録の保護対象となり得ますよ。
②意匠登録で「守りにくい」商品とは?
実は、商標登録にはなくて、意匠登録にはある「要件」があります。それがネックとなり、意匠登録が認められにくい商品があります。
その要件とは
「新規性」と「創作非容易性」
というものです。
詳しくはこちらのコラムで述べていますが、
【知財キホンのキ】はじめての意匠登録〜商標登録とは何が違う?(その2:意匠登録ならではのハードル?)
https://onion-tmip.net/update/?p=1062
「世の中でまだ知られていない意匠でなければならない(新規性)」し、「既に世の中で公開されている意匠から、誰でも容易に思いつく意匠ではないこと」(創作非容易性)も求められるんです。
そうなると、「デザインのリバイバル」「デザインの流行の循環」がよくあるような商品だと、なかなか上記の要件を満たさないですよね。そのような代表格が
「ファッション」
の業界です。フリルとか、パターン(柄)とか、襟や袖の形など、全く新しいデザインというのはなかなか想定できないですもんね。
商品の魅力に、デザインがとっても影響する商品なのに、意匠権で守りにくいのは残念なのですが、だからこそ、ファッションブランドは、
獲得していった評判を、ロゴマークなどに積み重ねて、そのロゴマークを商標登録=ブランド力を「商標権」で保護することが重要
になります。
③意匠登録で「最近、守れるようになった商品」とは?
2020年4月1日に施行された、意匠法の「改正」は、とても大きなもので、それまでの意匠の定義・概念が大きく変わるものでもありました。
この改正で「意匠登録の対象」になったものとしては、
「建築物の意匠」
「内装の意匠」
があります。そもそもかつては「動産である物品(の意匠)」しか対象ではなかったんですよ。建築物なんて「不動産」の代表格ですからね。
でも、とてもユニークな店舗の外観の形状やその内装なども、知的財産ですし、デザインが商品やサービスの価値を高めるものですから、これらが意匠権で守られるようになったのは大きいですよね。
それと、もうひとつ、登録対象となったのが、
(アプリ等の)「画像の意匠」
です。正確にいえば、こちらは徐々に改正されていった点なのですが、かつての意匠法では「物品自体の形状」しか、保護対象ではなかったんです。しかし、デジタル時代の進化の過程で、
・物品の中の液晶部分に表示される「デザイン」
・物品以外に表示される「デザイン」
などが徐々に対象となっていったのですが、「物品性」を求める点や、物品以外といっても「メインの物品と一体として用いられる物品」に表示されることが求められていたため、対象とできない画像も多かったのです。
しかし、2020年施行の改正では、
(1)操作画像(機器の操作の用に供される画像)
(2)表示画像(機器がその機能を発揮した結果として表示される画像)
(3)これらの画像の一部分
が明確に対象となりました。具体的に言えば、
・(物品に記録されていなくても)クラウドやネットワークを通じて表示される画像
・ソフトウェアやアプリの画像
・壁や人体等に投影される画像
などが、新たに意匠登録の対象となり得ることとなったのです。GUIなど、こうした画像が多額の投資の結果開発されたり、こうした部分のユニークさが商品の魅力になることも多いですからね。
一方、上記の規定の裏を返せば、
「映画やゲーム等の『コンテンツの画像』、デスクトップの壁紙等の『装飾画像』は、意匠権による保護対象とはならない」
ままですので、その点はご注意ください。
ちなみに、こうして文字で説明しても、イメージしていただくのに限界があるところ、
下記の「登録事例」を見ていただくと、だいぶわかりやすいかと思います
特許庁「改正意匠法に基づく新たな保護対象(画像・建築物・内装)の意匠登録事例について」https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/design/kaisei_hogo.html
「あれ、これなら自分がデザインしているものも、登録できるかも?」と思われたら、お気軽にONION商標にご相談ください。特に、既に公開済み・販売開始済みの商品であれば、お急ぎくださいね!
【知財キホンのキ】はじめての意匠登録〜商標登録とは何が違う?(その3:いざ出願!図面って?新喪例って?)
https://onion-tmip.net/update/?p=1100