はじめての意匠登録 その1はこちら→ http://onion-tmip.net/update/?p=1054
はじめての意匠登録 その2はこちら→ http://onion-tmip.net/update/?p=1062

◎実際に出願するときの注意点〜「新喪例」次第で、登録か拒絶か変わってくる!?

意匠登録出願までたどりつきました。ここでも、商標との違いを意識してご紹介したいと思います。

(1)「意匠」登録願は、図面等が必要になる…”等”って何?

商標の場合は、特許庁に提出する書類(願書)は「商標登録願」(登録を求める商標、その使用範囲=指定商品・役務、出願人の情報等を記載します)。

それが意匠の場合、タイトル的には「意匠登録願」になるだけなのですが(出願人情報の他、意匠に係る物品又は意匠に係る建築物若しくは画像の用途を記載)、意匠の場合は願書以外にも必要なものがあります。

やはり、物品等のデザインの登録を求めるものですから、その形状を把握できる書面が必要になります。その原則は「図面」です。6面図で、記載方法には一定のルールがありますので、その点は弁理士にご相談いただくか、下記特許庁のリンクをご参照いただきたいのですが、
https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/design/h23_zumen_guideline.html

その物品の設計図などがあれば、そうした図面を活用することができます。また、図面”等”と書いてきたのは、それ以外も資料として認められるものがあるのです。具体的には、「写真、ひな形又は見本」です。

もし、図面等がないということでしたら、意匠の出願用の図面製作に長けたデザイン会社も存在しますので、(弁理士経由などで)依頼することをおすすめします。

(2)公開から1年なら救ってくれる「新規性喪失の例外」。しかし落とし穴がたくさん!

意匠登録出願より前に公開された意匠は、新規性を喪失しているので、原則として意匠登録を受けられないと書きました。しかし、展示会、刊行物、ウェブサイトへの発表等によって自らの意匠を公開してから、1年以内に出願した場合には、先の公開によってその意匠の新規性が喪失しないものとして取り扱う規定、すなわち意匠の新規性喪失の例外規定(意匠法第4条。通称「新喪例」)が設けられています。

こうした救済措置もないと、意匠の創作者にとって酷な場合もありますし、意匠法の趣旨(産業の発達への寄与)にもそぐいませんからね。
ただ、「新喪例」の適用を受けるには、注意すべき点がいくつかあります。主なものを挙げると、

①出願と同時に、「新喪例」適用を求める手続きを行わなければならない

②その手続きでは、一番最初に公開した日と公開方法を「証明する書面」が必要になる

そして、

③一番最初の公開以外にも、出願までに公開したことがあれば、それらすべてを証明しなければならない

※2024年1月1日より、法改正施行により、「新規性喪失」の登録要件が緩和されました。
詳しくは、特許庁によるこちらのサイトをご覧ください。
https://www.jpo.go.jp/system/design/shutugan/tetuzuki/ishou-reigai-tetsuduki/index.html

といった感じです。特に③は、例えば、最初の公開が自社のウェブサイトだったとして、それとはまた違うかたち、例えば自社のSNSとか、プレスリリースとか、店頭販売など、すべての公開事例について、もれなく報告しなければいけないというものです。

もし、報告が漏れていた公開事例を、審査官が発見すれば、その時点で新規性が失われているとして、出願は拒絶査定となるでしょう。せっかく「新喪例」という制度があるのに、正しく使えないことで拒絶されてしまうのは残念ですから、注意深くいきたいですね。

(3)商標以上に、意匠は「出願してみないとわからない」!?

前述のとおり、商標も意匠も「早い者勝ち」ですから、先に同一又は類似のものが他人によって出願されていないかという事前調査をすることになります。ただ、「類似」か否かという判断は難しいものです。法律や審査基準に沿って弁理士が調査・検討しても、特許庁の審査を読みきれないケースはあります(拒絶理由に対して、反論して登録が認められるケースもありますしね)。

しかし、その不確定要素は、商標よりも意匠のほうが「上」です。というのも、意匠の場合、先に登録されているのに、一定期間(※設定登録がされた日から3年以内)公開しないように求める「秘密意匠」という制度もあるのです。秘密意匠はどうやっても検索できませんから、事前の調査には限界があるということです。

さらに「新規性」の要件は、世界基準です。世界のどこかで、同一又は類似の意匠が公開されていないかどうかの調査は、専門機関への依頼が必要であり、かなりの高額となります。

そこで、そんなに事前の調査に費用をかけるぐらいなら、「とりあえず出願してしまう」という方策をとる企業も多くあります。

商標との比較でも、一般的には、意匠登録出願のほうが、安い費用となることが多いはずです。出願時に特許庁に納める費用は、

【商標】 3,400円+(区分数×8,600円)
【意匠】 16,000円

です。商標1区分指定の場合の12,000円に比べれば高いですが、2区分以上の場合と比べれば、意匠のほうが安くなりますよね。

また、弁理士に手続き代理を依頼する場合も、(図面作成費などがかかる場合もありますが、純粋な弁理士代理人費用は)意匠のほうが商標より費用が安い事務所が多いのではないでしょうか(※ちなみに、弊所もそうです。まずはお気軽に御見積依頼を!)

(第4回<最終回>は、意匠登録後に意識する、商標との違い です)
続きはこちら http://onion-tmip.net/update/?p=1103