こんにちは。ONION商標・弁理士の山中です。

いやぁ、凄かったです。素晴らしかったです。何がって?

オアシス(oasis)の再結成、来日公演@東京ドームです!

オアシス、2025年10月25日東京ドーム公演ライヴ・レポート | NME Japan
https://nme-jp.com/reviews/161479/

オアシス奇跡の日本公演レポート /リアムとノエルが手を取り合い歓喜の大合唱、問答無用の完全復活ライブ | Rolling Stone Japan(ローリングストーン ジャパン) https://rollingstonejapan.com/articles/detail/43808

自分が最初に彼らのライヴを見たのは、ちょうど30年前の95年だったんですが、いまだに忘れられません。だって、小さい会場に、本当にオアシスが好きで好きでたまらないお客さん「だけ」で、そして名曲「しか」鳴っていない空間だったんですから。

<筆者コラム>祝来日公演決定!「OASIS再結成!」の歓喜の裏で気になる、THE SMITHS「知的財産権」闘争からバンドが学ぶべきこと
https://entip.jp/topics/237/

しかしまさか、その30年後に、その30倍くらいの規模で、同じような空間が生まれるとは!

自分のように、なにがしかの「私とオアシス」を抱えた昔からのファン、初めて動く彼らを見ることができた若い世代のファン(多かったんです)。しっかりと会場を温めてくれたASIAN KUNG-FU GENERATION

そして主役である兄弟率いるバンドが放った、本当の名曲のみの2時間強。まさに奇跡としか言いようがない…のですが、彼らの楽曲、彼らの魅力、そして彼らと日本のファンの結びつきの強さを考えれば、必然だったのかもしれません。

ところで、会場のオーディエンスを見ると、大多数が、あのロゴがついたグッズ(物販、マーチャンダイジングとも言えますね)を身に着けていました。

https://oasislive25.jp/goods/

そんな環境に置かれると、商標メインの弁理士の性。どうしてもこちらが気になります。

oasisロゴって、商標登録されてるの!?

さっそく、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)による、産業財産権情報の検索ができるサービス「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」で検索してみると…

情報がヒットしました!

oasisのロゴ
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-1870236-20250310/49/ja

oasis / live ‘25 のロゴ
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-1870239-20250310/49/ja

出願の名義人のところを見ると、

Oasis (A Partnership comprised of Noel Gallagher and Liam Gallagher)

となっていて、兄弟で出願していますね。こういうのを見ても、あらためて「仲直りしたんだなぁ」と感慨深かったり。

また、商標登録は、その商標を使用する商品・役務(サービス)を指定する必要があり、(登録されると)その指定した範囲で商標権が発生するものですが、これらの出願では第16類(「印刷物」等)、第25類(「被服」等)、第41類(「音楽の演奏」等)の3区分が指定されています。

しかし、よく見てみると、気になるところがありますね。

「国際登録」

「係属-出願-審査待ち」

という記載です。これらは、どういう意味があるのでしょうか?

まず、これは「マドリッド・プロトコル」、いわゆる

「マドプロ」という制度

を利用して出願されたことがわかります。これは、世界的な商標の協定で、

協定加盟国のいずれかで、商標出願・登録をすると、それを基礎として、
他の加盟国を「指定」することで、それらの国にまとめて出願できる

という制度です。

【本当はコワイ商標の話】外国で商標はどう保護する?(2) <ONION商標>
https://onion-tmip.net/update/?p=209

よく見てみると、「GB」(グレート・ブリテン。つまり英国ですね)で、これらの商標は既に登録されており、その出願・登録が「基礎登録」となっています(出願日は2024年 9月 25日)。

また、「パリ条約」という知的財産権の条約もあり、商標の場合は、ある加盟国での出願から「6か月以内」に他の加盟国に出願する場合は、最初の出願日に他の加盟国でも出願したことになる、という「パリ優先権」が与えられます(商標登録は早い者勝ちですから、こういうの大事なんです)。

ただ、マドプロ制度により「国際登録」されただけでは、指定国各国で商標登録されたことにはなりません。むしろ、

「指定国各国で、出願した状態になる」だけ

なんです。その後は、

指定国ごとの商標法により、審査されていく

のです。なお、今回はAU(オーストラリア), CA(カナダ), MX(メキシコ), US(米国)、そしてJP(日本)が指定されていました。

さて、日本の話に限定すると、

まだ特許庁での審査は着手されていません。

各指定国は、国際登録を管理するWIPO(世界知的所有権機関。World Intellectual Property Organization)から「指定の通知」を受けてから、一定期間内(通常12ヶ月、国によっては18ヶ月 ※日本は18ヶ月です)に審査結果をWIPOに通知しなければなりませんが、

ただ、日本に指定が通知されたのは、2025/08/14です。ここから18か月ということは、まだ2027年2月までに審査結果を通知すればいいのです()。

※なお、このような国際商標登録出願(外国から日本に入ってきたマドプロ出願)の審査待ち期間は、現在、8ヶ月から10ヶ月になっていますので、実際は18ヶ月を待たずして審査結果の通知はなされるはずですが。https://www.jpo.go.jp/system/trademark/shinsa/status/cyakusyu.html

では今後、

「oasis」ロゴの日本での審査は、どのように進むでしょうか?

実は、ちょっと簡易検索をしていただければわかるのですが、「oasis」「オアシス」の文字を含む商標登録・出願は、かなりの数があるんですね。これらが商品・役務が重複しない範囲でそれぞれ登録されているのか、あるいは重複する範囲において互いに「商標非類似」として併存登録されているのかは、精査しませんが、

一般論でいえば、今回の出願が指定している商品・役務と重複する範囲で、同一又は類似する商標(たとえば、カナ文字で表示された「オアシス」という商標でも、称呼、すなわち「読み」が同一であれば、商標類似と判断されるのが原則です)が存在すれば、それを引例として、拒絶理由が通知されるでしょう

もちろん、それらに対する反論(※これだけ有名なロゴですから、ただ称呼が同一なだけでは、「混同も生じないし、商標非類似だ!」というような主張もあり得ます)によって拒絶理由が解消することを目指したり、同一/類似な先願先登録商標を、いくつかの方策により消滅させたり、譲渡してもらうことにより、登録を目指すことになるでしょう。

また、こうした状況から学ぶべきこととして、「日本の事業者が、日本での商標出願/登録を基礎として、マドプロ制度により各国に出願する場合」においても、

マドプロでの出願から、各国での実際の審査→登録までは、かなり長い期間を要する

ことになりますから、そこもふまえて日本でのアクションを起こさないといけない…という点が挙げられるかと思います。

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…さて、私は「oasis」ロゴのグッズを購入したのでしょうか?答えは「NO」です。いや、欲しかったですよ。でも、事前のポップアップショップ(渋谷 宮下公園他)では、デジタルでの整理券発行制度を知らずに入れず、コラボグッズ多数の「adidas」は、似合う自信がなく購入をためらい、そして公演当日は並ぶ根性がなく…だめですねぇ。

ちなみに、30年近く前に来ていたこのTシャツは、どこかに行ってしまいました(あっても太ってるから着れなかったでしょうね 苦笑)

(筆者。96年3月、アメリカにて)