ごく一般的な言葉(文字)について、誰かが商標登録をした、というニュースについて、
・そんなキホン的な文字も、自由に使えなくなっちゃうのかー
という驚き、嘆き、怒りを示されることがあります(またはそういう投稿をSNSで目にすることがあります)。しかし、それは
かなりの部分で、「誤解」です。
以下、説明させてください。
その1:商標登録が認められた「範囲」外なら、誰だって使える
商標登録出願をするときに、実はその商標を「何の商品、何のサービス(役務)に使うのか」を指定しなければいけません。
そうして記載された「指定商品」「指定役務」の範囲でのみ、(登録されたときに)商標権は発生するのです(※もう少し正確にいえば、指定商品・役務の範囲で、その登録商標を独占的に使用ができ、指定商品・役務と類似する範囲まで広げると、登録商標と同一か類似の商標を、他者が使用することを「禁止」できます)。
逆にいえば、
指定商品・役務と「類似しない商品・役務の範囲」であれば、他者に登録された商標であっても、使用できる
というわけです。つまり、「『◯◯』という文字が、他人に商標登録された」と聞いても、実際はどの商品・役務の範囲で登録されたのかを確認しないと、本当に商標として使用できないのかどうかはわかりません。
その2:「普通名称」になる範囲では、(登録されてないはずだから)誰だって使える
弊所では、所長弁理士の小野尾名義で、こんな文字列を商標登録しています。
登録6023466号「ONION」
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-2017-091758/40/ja
でも、みなさんが、日常生活で、玉ねぎのことを「ONION」とか「オニオン」と書けなくなった、なんて話は聞かないですよね?
なぜ上記のような文字列が商標登録が認められているのかといえば、それは「指定役務」との関係です。登録が認められているのは、第45類という区分の
「知的財産権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務」等の指定役務
の範囲です。こうした役務を提供する際に、「ONION」という文字列を掲げていたら、他の事業提供者と区別できる、
目印となる力(識別力)があります
からね。
一方、もし「ONION」という商標登録出願が、指定商品「たまねぎ」(第31類)を指定して出願されていたら、普通名称の登録を認めない「商標法3条1項1号」の拒絶理由該当として、拒絶されていたでしょう。
なお、商標法では、「商標権の効力が及ばない範囲」について定めた、第26条という条文もあります。本来は普通名称などで登録が認められるべきでない商標が、まちがって登録された場合への反論の根拠になったり、「登録商標に『類似』する文字列が、普通名称の場合は、その普通名称は誰でも使えるよ」とか、「以前は識別力があるために登録が認められた登録商標が、あとから識別力を失ってしまった場合は、誰でも使えるよ」といったことが、念の為定められています。
その3:「商標」として使用しないのなら、誰だって使える
ここで、そもそも”商標”って何なのか、をあらためて考えてみると、かなりざっくりいえば
「商品やサービスの”目印”として使う、文字、図形、記号、立体的形状…etc.」
ということになります(正しい定義は、商標法2条1項にあります。のちほど紹介します)。
つまり、文字に限定して説明すると、「商品」のパッケージだったり、「サービス(役務)」のお店の看板や、ウェブサイトなどに、そのブランドの”目印”になるようなかたちで使用されている場合に、初めて「商標」といえるわけです。
したがって、ただ文章の中でその文字を使う、というような場合は、「商標として使用することにはならない」ので、仮にその文字が誰かの登録商標だったとしても、問題にはならない(商標権侵害にはならない)、ということなのです。
つまり、
小説や歌の歌詞、さまざまな説明文等の中に、他者の登録商標が入ること自体は、問題になりません。
こうしたカルチャー/エンタメの文脈でいうと、
「曲や、書籍等のタイトル(題号)」にその文字を使うことは、商標としての使用にはならない
です。題号も、商品の品質を表示するものに過ぎない(例えば、もし「ジュース」という商品なら、「果汁100%」のような文字列と同じ)という考え方なんですね。
なお、CD等や書籍という商品の商標として機能しているのは、「販売元・発売元」「出版社」の名称の文字やロゴということになります。
(ただ「書籍のシリーズ名」や、「雑誌(などの定期刊行物)の名称」、CD等なら「シリーズもの」のコンピレーションCDやプレイリストの名称は、「商標」になり得ます)。
また、
「CD・レコード」といった商品に限定すれば、「著名なアーティスト名」も商標ではない
のです。こちらは「LADY GAGA」事件という知財高裁の判決が有名で、まさにアーティストのLady Gagaサイドが日本の特許庁相手に戦ってくれたものなのですが、題号と同じく、”著名なアーティスト名も、CD等の品質を示すに過ぎない”旨の理由で、主張は認められませんでした。
なお、アーティスト名は、「音楽の演奏」といったサービス(第41類に分類される役務)や、各種マーチャンダイジングの「商品」の目印にはなりますから、この範囲では商標登録が可能ですし、誰かが先に商標登録していないか注意が必要です。
(参考)【本当はコワイ商標の話】音楽アーティストが、商標登録をすべき「これだけの理由」
https://onion-tmip.net/update/?p=1920
さて、最後に、商標とは何かに関する条文を、ちゃんと記載しておきましょう。
第二条 この法律で「商標」とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であって、次に掲げるものをいう。
一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)
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以上、だんだんと話が難しくなってきましたが、「そんな簡単な文字・言葉も登録が認められちゃったの?世知辛い!」と嘆くのではなくて、それが本当に認められる商標だったのか、認められるべきものだとしてどのような商品等の範囲で認められたものなのか、を確認すること、そして商標法の基本として「どのような使い方はセーフ/アウト」なのかを理解をすべきです。
そしてもし事業者の方なら、(企業でも個人でも)ご自身が使用している文字などを見回してください。誰でも知っているような文字列でも、実はすでに商標になっていて、そして
あなたの登録商標にできるかもしれないのです。
(もちろん、お問い合わせいただければ、ONION商標は、あなたのお力になります)。
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