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技術革新等に伴い変化しつづけるエンタメ業界。
そんな時代だからこそ、拠り所とすべきは「著作権法」ですが、「法」に対していきなり細かいところをつつくのではなく、「その全体や構造、考え方を『ざっくり』学んでしまうことが近道だ」という趣旨でご紹介する連載、その第20回です。

前回からやっと、

「著作者人格権」

のパートに入ることができました。前回はその総論でした。

【ざっくり著作権法】第19回「著作者人格権〜著作者の”想い”を守る権利(1)総論」https://onion-tmip.net/update/?p=4146

そこで、「★著作者人格権は、3つの「◯◯権」+1から成る」とご説明しましたが、著作権法でいうとそのメインの3つの権利は、第18条、19条、20条に規定されています。

今回はその1つめについて、深掘りしたいと思います。こちら、

第18条 公表権

ですね。早速ですが、その条文(の第1項)を貼ってみたいと思いますが、

(公表権)
第十八条 著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。以下この条において同じ。)を公衆に提供し、又は提示する権利を有する。当該著作物を原著作物とする二次的著作物についても、同様とする。

「著作者が、自らの『未公表な著作物』を、公衆に提供・提示する権利」ということになりますが、このように要約しても、いまいちピンと来ませんかね。それでは「ざっくり」説明しますと、要は…

著作物を世の中に見せるか見せないかは、著作者が好きなように決められる

ということです。さらに、もう少し具体的な行為に分解すると、

①公表するかどうかの決定
②公表の時期
③公表の方法

を、著作者が決められるということになります。まず根本の①ですけど、
著作者は、著作物への「出来」についての判断がありますよね。創作したはいいけれども、その出来に納得していないので「ボツ」にしたいということもあるでしょう。そのような場合は「未公表」のままを選ぶでしょうし、他者に勝手に公表されるべきではありません。

故に、公表の可否の決定権が「著作者の、著作物への”想い”を守る」権利といえる著作者人格権の一つになっているということです。

また上記②・③については、「公表権には含まれない」という学説もあるようですが、創作した著作物の出来について熟慮し、納得できる段階(時期)で初めて「公表しよう」と思われることもあるでしょうし、正しく伝わる方法で最初に公開したいという権原も担保されないと、十分に①の目的も果たされない気が、普通にしますよね。

そう考えると、「公表権侵害」が問われるシーンというのは、主に、

*著作者が「お蔵入りにしたい」と思っている著作物を、第三者が勝手に公開してしまう

*著作者が公開時期・方法を段取っているのに、第三者が「フライング(解禁日破り)」とか「リーク」してしまう

などが想定できますね。

ここで、公表権についての判例は少ないのですが、理解を助けてくれるものがあるので、2つご紹介したいと思います。

通称「ASKA未公表楽曲事件」(東京地判平成30年12月11日 平成29年(ワ)第27374号)
https://jucc.sakura.ne.jp/precedent/precedent-2018-12-11.html(判決全文)

これは、有名歌手(原告)が、テレビ局(被告)の情報番組用に、芸能レポーター(被告)へのインタビューに応じた過程で、未公表の楽曲(原告の著作物ですね)のデータを、芸能レポーターに(楽曲への感想を聞くために)送信していたところ、その楽曲を番組で放送した行為が、公表権侵害となったという事案です。

裁判では、著作者の「公表への許諾(や黙示の許諾)があったかどうか」も検討されて判決が下されるわけですが、許諾がなかったのだとすれば、未公表の著作物を放送にのせるというのは明らかに公表ですから、わかりやすい「公表権侵害」の事案かと思います。

(なお、放送にのせるというのは「公衆送信」ですので、著作(財産)権の一つ「公衆送信権」侵害も認められていますが、その損害額より、「公表権侵害による慰謝料」のほうが大幅に高いものになっていますね)。

もう1つ、公表権を理解する判例として、こちらがあります。

通称「中田英寿事件(東京地判平成12年2月29日 平成10年(ワ)第5887号)
https://jucc.sakura.ne.jp/precedent/precedent-2000-02-29c.html(判決全文)

有名な元サッカー選手(原告)が、中学時代に「学年文集」に掲載した詩を、無断出版された書籍に勝手に記載されたことに対し、出版社ら(被告)の「公表権侵害」であるとして、訴えを提起したものです。

しかし、この訴えは認められませんでした。理由としては、この詩は「公表された著作物である」(未公表著作物ではない)と判断されたからなんですね。

中学校の学年文集といっても、卒業生及び教諭を合計すると300名以上に配布されたものだったそうです。そして、学年文集は特に秘密性が要求されている文書ではないので、配布された人達から不特定多数の者に広まる可能性を内包しているとして、「公表済」とされたわけです。
この判例から、あらためて

「公表権は、未公表の著作物のみが対象(一度でも公表されていたら、主張できない)」

という原則が理解できますね
(但し、公表されてしまっても「著作者の同意を得ないで公表されてしまった」著作物は、未公表著作物に含まれます。これが、前述の第18条1項かっこ書きの意味ですね)。

(なお、この裁判では、詩=著作物を無断で掲載した行為について、著作(財産)権の一つ「複製権」侵害の訴えは認められています)。

さて、本稿は「ざっくり著作権『法』」ですので、第18条の条文、第2項以降にふれてしめますが、

*第2項は、著作者の「公表意思の推定」を定めています。

条文を貼ってみますね。

2 著作者は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に掲げる行為について同意したものと推定する。
一 その著作物でまだ公表されていないものの著作権を譲渡した場合 当該著作物をその著作権の行使により公衆に提供し、又は提示すること。
二 その美術の著作物又は写真の著作物でまだ公表されていないものの原作品を譲渡した場合 これらの著作物をその原作品による展示の方法で公衆に提示すること。
三 第二十九条の規定によりその映画の著作物の著作権が映画製作者に帰属した場合 当該著作物をその著作権の行使により公衆に提供し、又は提示すること。

例えば、第2項2号で定めているケースは、絵画や彫刻など「美術の著作物」の原作品を、著作者から購入(著作者からしたら譲渡)したとします。原作品を購入したとしても、著作者の公表権は残るわけですが、それだとせっかく購入してもその原作品を展示することができないのでは残念ですよね。そこで、そのような場合は、著作者が公表について同意したと推定しますよ、ということです。

第1項1号も同じ様な考え方ですが、「著作権の一部」のみが譲渡された場合は、その譲渡された権利内容についてのみ「公表の同意の推定」がなされます。たとえば、著作権のうち「上演権」のみが譲渡されたとしたら、上演以外の公表の意思は推定されないということになります。

また、本項は、公表に同意したものと「推定」するだけですので、別途特約を結ぶなどして、その推定をないことにする(覆滅)のは可能です。その点、

*第3項は、公表の「擬制」になっています

どういうことかというと、

3 著作者は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に掲げる行為について同意したものとみなす。(以下略)

第2項柱書では「〜同意したものと推定する」だったのが、第3項柱書では、「〜同意したものとみなす。となっています。以下略の各号には「情報公開等への開示同意」が定められていますが、これらについては、もう「公表を同意した」と決めつけて判断しますよ、ということです。

*第4項は、「公表権を制限するケース」を規定

4 第一項の規定は、次の各号のいずれかに該当するときは、適用しない。(以下略)

著作(財産)権(第三款:第21条―第28条)の「制限規定」については、それとは別の”款”(第五款:第30条―第50条)に定めていましたけど、

著作者人格権については、それぞれの条文(第18条、19条、20条)の中で、適用されないケースが定められています。

本項の詳しい説明は省略しますが、公益上の必要性のある場面(1号〜8号)を、公表権を適用しないとして定められています。

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さて、次回も、上記「著作者人格権」を構成する権利を深掘りしていきたいと思います。

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