こんにちは。ONION商標・弁理士の山中です。

8月の末、弊所所長・小野尾の下記のような投稿がありました:

(弊所提供サービス「ロゴトアール」より)
https://logoto-r.com/2722/

(8月28日)
【鶏の日の登録商標シリーズ】

そうか、自分はあまり食べないので詳しくなかったのですが、

「月見◯◯バーガー」

「月見◯◯サンド」

的な商品って、すごく人気があるのだなと。

 

月見商戦は、なんと8月末から始まってたのか!しかし、こういう報道を見ると、商標をメインで扱う弁理士として気になったのは、

「月見〇〇」という商品名は、商標登録されてるのか。
いや、そもそも登録できるのか?

という点です。

商標登録の要件はいろいろありますが、商標は、商品やサービスの”目印”として付けるものですから、そもそも、その”目印”となる力…

識別力

があることが必須なわけです。

【本当はコワイ商標の話】商標の”簡易”調査は誰でもできるけど…その落とし穴 https://onion-tmip.net/update/?p=442

そう考えると、まず「月見〇〇」という商標の識別力の有無が重要なポイントになりますが、

ここで、ちょっとこんがらがりそう(※自分が)なので、基本から押さえていきます。まず、

そもそも「(お)月見」とは

月を鑑賞すること。一般的には、旧暦の8月15日(十五夜)の夜

を指すわけですよね。ちなみに旧暦8/15=現在の9月25日 だそうです。

次に、あらためて押さえたいのは、「(お)月見」にちなんだ食べ物として、どんなものがあるか、ですが、

食事に用いられる例(1)お月見にお供えする食べ物

「月見団子」

がありますね。これ、第30類指定商品「だんご」とか「和菓子」につけるといったら、識別力はみとめられないでしょうね。次に、

食事に用いられる例(2)(生)卵を「月」に見立てた表現

「月見そば(、うどん)」

があります。おつゆの中に生卵が入った蕎麦・うどんを注文するとき、特に考えずに、上記のとおり表現しますよね(※「卵そば」とかは呼ばないもんな)。

これは、第43類指定役務「うどん又はそばの提供」に使いたいといっても、やはり識別力は認められないでしょう(慣用商標?

そして、そこからの発展として、たまご料理、それも黄身の部分が「月」のように見える料理に、「月見」の文字が使われるようになったんだと思いますが、

最初から蕎麦・うどん以外の料理にも「月見」という表現が使われていたわけではないし、

今だって使われるのが一般的ではない、つまり、

「月見〇〇」(※〇〇は食べ物の一般名称)が入っても、どのような「〇〇」なのかがわからないものもある

、つまり、そのような場合は、その食べ物(商品等)との関係で、識別力が認められるはずなんです。

別の言い方をすると、「月見」が、その食べ物(商品)等の品質等を説明するにすぎない、という状況にならない限り、識別力は認められる→早い者勝ちで登録商標ができるはず、なわけです。

さぁ、思考の整理はこの程度にして、

文字「月見」「月見◯◯」の登録商標がどれくらいあるか?

特に、食品関連の指定商品等の範囲で登録されているものを調べてみました。

まず、そのものズバリ、

「月見」という登録商標がありました!

*登録2050869「月 見」(※普通のフォント。標準文字H8導入前の88年登録)権利者:山崎製パン株式会社
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-1985-100037/40/ja
第30類 菓子及びパン(ただし「だんご」を除く。)

こちらは80年代後半の登録ですが、その時点ではさまざまなお菓子やパンについて、「月見」と表示しても、どのような菓子かパンかわからない、つまり識別力があるので、登録が認められたということですね。

但し、菓子の一種(※商品類似の範囲)である「だんご」が、わざわざ除かれています。このことからも、「だんご」に”月見”と表示しても、それはいわゆる月見団子であって、だんごの品質を示したにすぎない、つまり識別力が認められないから、その商品の範囲では登録が認められなかった=商標権が発生しなかった、ということですね。

他にも、「確かに、その商品等(食べ物系。以下赤字)に『月見』とついても、どんな品質かわからないなぁ」つまり識別力があるだろうな、と納得の登録としては、以下のようなものがありました:

*登録4837816「月見もち」(第30類 もち米)※個人の登録
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-2004-055185/40/ja

*登録5464582「お月見」(第29類、30類)キューピー株式会社
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-2011-052403/40/ja
29類は加工食品系幅広く、30類:茶,コーヒー及びココア,調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,即席菓子のもと

*登録5940295「月見」(第33類 お酒関係)宝ホールディングス株式会社
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-2015-103040/40/ja

*登録5953280「月見ステーキ」(第43類 飲食物の提供 等)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-2016-106499/40/ja

一方、「へぇ、そういう商標なら、識別力が認められるんだ」というもの(※赤字は筆者)としては、

*登録5651520「昔の月見だんご」(30類 だんご)株式会社 中村軒
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-2013-069279/40/ja

*登録5828829「月見めし」(30類 パン,サンドイッチ,弁当)株式会社PRESTO
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-2015-095111/40/ja

などがありました。

しかし、ここでやっぱり気になるのは、

「バーガー関係の登録商標の状況」

です。やはり、蕎麦・うどん以外で、「月見◯◯」といえば、多くの人が思い浮かべるのは、

「月見バーガー」

そこで、調べてみると、

マクドナルドの、目玉焼き(たまご)を月夜の「月」に見立てた、日本で秋の季節に広く親しまれている期間限定のハンバーガー「月見バーガー」は、1991年発売。

つまり今年が35周年なんだそうです。
https://x.com/i/trending/2094946447904940305

ちなみに、「ベーコン」と「卵焼き」を挟んだバーガーは、「ファーストキッチン」のほうが先行していたそうですが、「月見バーガー」とは名乗っていなかったんだとか。それでは、

「月見バーガー」は商標登録が認められているのでしょうか?

マクドナルド社(マクドナルド インターナショナル プロパティー カンパニー リミテッド)は、かなりマメに商品名の出願・登録を行っているのですが、意外なことに、

「月見バーガー」は出願もされていませんでした!

その理由は知るよしもありませんが、そもそも、「ハンバーガー」(第30類指定商品)は、「パン」と類似の商品です(類似群コード 30A01が共通)。したがって、「月見バーガー」と出願しても、上述の登録商標「月見」と、重複する範囲で商標類似として、拒絶されてしまうことを懸念したのかもしれません。

しかし、期間限定とはいえ、35周年という長い間、広告・宣伝も多くなされてきた、そして(おそらく)とんでもない数量が販売されてきた「月見バーガー」ですから、同社の商標としてかなり識別力が獲得されているのでは?とも思いますよね。

【本当はコワイ商標の話】商標登録は早い者勝ち…のはずが、時間が経った方が登録可能性が上がる商標がある!? http://onion-tmip.net/update/?p=2983

実際、「月見◯◯」商戦を取りあげた下記の記事でも、まんま「月見バーガー」という名称を使用している他社は(少)なく、微妙に商品名は差異があります。

【2026月見商戦】月見バーガーブームはいつから?KFC、ゼッテリアは本日開始!マック、コメダは9月2日に参戦 モスの動向にも注目(LASISA)
https://lasisa.net/post/157640#google_vignette

そんな中、しっかりオリジナリティのある

「月見」を含む商品名を、登録商標している企業もあります。

コメダ珈琲店
https://www.komeda.co.jp/news/detail.html?cat=2&article=18259126

です。こちらに紹介されている商品はほとんど登録商標されていて、たとえば

*登録6773623「お月見フルムーンバーガー」(第30類 ハンバーガー 等、第43類 飲食物の提供 等)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-2023-091870/40/ja

などは、商標全体に識別力が認められ、先登録商標「月見」とも商標非類似、と判断されたということですね。

一方、識別力が認められず、拒絶査定となった商標もありました(※2026年9月9日時点で未確定ですが):

*商願2025-062520「無添月見バーガー」(43類 飲食物の提供 等)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-2025-062520/40/ja

こちらは、「添加物を使用していない月見バーガー(※月に見立てた卵を挟んだハンバーガー)の提供」という、役務の質を示したにすぎないとして識別力が認められず、記述的商標(同法3条1項3号の拒絶理由該当)として拒絶されています(※上記のようなハンバーガー以外を提供すると品質誤認のおそれがある、との拒絶理由:同法4条1項16号も該当)。

ただ、上記の商標、どちらの企業が出願したか、おわかりになった方も少なくないのではないでしょうか。そうです、

「くら寿司(株式会社)」

です。というのも、くら寿司さんに行くと「無添くら寿司」と看板にあり、この“無添”という文字は、くら寿司さんの造語として識別力があるのではないか、とも思ったのです。その個人的印象で調べてみたら、

登録4418751号「無 添」(くら寿司株式会社、第42類 ※かつての分類 飲食物の提供 等)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-1999-079819/40/ja

「無添」の文字は、くら寿司さんの登録商標だったんですよ。だとしたら、「無添月見バーガー」には、少なくとも”無添”の文字に識別力が認められたのではないか、という気もしますが….(今のところ、上記の出願には反論はされていません)。

ただ、2025年の飲食物の提供では、メニューにはくら月見バーガー【無添】」と表示されていました。たしかに、現実的にこちらのほうが、ブランディング的にもいいネーミングな印象ですね。https://www.kurasushi.co.jp/author/006700.html

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