最近、気になった話題として、これがあります。

◎「ヒルドイド」のマルホが「ヒルマイルド」に販売差し止め 健栄は申し立てに徹底抗戦(WWD JAPAN.com /Yahooニュース)
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20210126-01170478-wwdjapan-bus_all

弁理士として、知財がらみのニュースなら興味を持つのは当然なんですが、もっと個人的な話をいうと、どちらの商品も我が家で活用中の商品なもので、余計に反応してしまったんです。小さい娘が、湿疹やその予防で小児科にかかったときに、処方箋薬局で「ヒルドイド」をいただくのですが、小児科を受診できないうちに使い切ってしまったときには、通常の薬局で「ヒルマイルド」を購入しているのです(後者なら、親も肌荒れに使えますしね)。

自分の場合は、それぞれが別の商品であることは承知していましたが、「オリジナルの医薬品と、(医薬の特許が切れた)ジェネリック医薬品」との関係なのかなと思っていましたが、そういう単純な話ではないようです。

ここで、マルホ社が大阪地方裁判所に、健栄製薬社「ヒルマイルド」の販売差し止め等を求めて仮処分の申立てを行った際の根拠としたのが、(ヒルドイドに係る同社の)商標権の侵害商標権侵害および「不正競争行為」に基づく、というものでした。

商標権侵害については、このメルマガでも折にふれご説明していますが、一方の「不正競争行為」とはなんなのでしょうか。これは「不正競争防止法」という法律に基づくものなんですね。

ただ、この法律が、具体的にどんなものなのか、イメージしづらい方も多いのではないでしょうか。というのも、こんなニュースにも登場するからです。

◎ソフトバンク、楽天モバイルによる営業秘密の利用停止求め提訴へ(ロイター/ /Yahooニュース)https://news.yahoo.co.jp/articles/0cb8ab3c3a9dbbb53a4d89a04c1cf3a204bd92ae

◎ポケモン能力改ざんなどで男逮捕(NHK NEWS WEB)https://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20210205/3000015146.html

一体、「不正競争防止法」とは、どんな法律なのでしょうか…?

不正競争防止法も、知財に関連する法律です(※弁理士試験でも範囲になっています)。その法目的(同法1条)は、

「事業者間の公正な競争(※中略)の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」

とあります。すごくざっくりいうと、資本主義社会において、経済が発展していくのには「競争」は必要なものですが、その競争において「不正」な行為が見逃されたのでは、その発展の妨げとなりますよね。そんな行為を防いでいくための法律なのですが、

一方で、予め「こういう行為は不正競争行為」とはっきりしていてくれないと、安心して競争に打ち込めません。

そこで同法の2条1項各号では、「こういう行為が、不正競争行為ですよ」と、はっきりと規定してくれているのです。

①周知表示に対する混同惹起行為(1号)
②著名表示冒用行為(2号)
③商品形態模倣(他人の商品の形態等を模写した商品を、譲渡等する)行為(3号)
④営業秘密不正取得・利用行為等(4号から10号)
⑤限定提供データの不正取得等(11号~16号)
⑥技術的制限手段に対する不正行為(17号、18号)
⑦ドメイン名に係る不正行為(19号)
⑧(品質内容等の)誤認惹起行為(20号)
⑨信用毀損行為(21号)
⑩代理人等の商標冒用行為(22号)

そして、他の知的財産権の法律では、「〇〇権侵害!」とできない行為について、カバーしてくれる、という側面もあります。

商標法をカバーしてくれるという点で、関係が深いのが、特に1号・2号です。まず1号ですが、仮に「商標」とはいえなくとも、他人の商品表示・営業表示として認められるものを「商品等表示」と規定し、需要者の間で広く認識されている「商品等表示」と同一/類似の商品等表示を使用し、他人の商品または営業と「混同を生じさせる」行為を不正競争行為として規定しているのです。

そして、その商品等表示が「著名」なものであれば、それと同一/類似のものを使用することは、「混同」を生じさせようがさせまいが、不正競争行為にあたると規定するのが、2号です。

今回のマルホ社の主張のうち、同社の登録商標「ヒルドイド」(登録1647949号等)の商標権侵害にあたるかどうかは、そもそも重複する医薬品等の範囲で、健栄製薬社の商標「ヒルマイルド」(登録6264722号)も併存して登録されていることから、少なくとも特許庁は「互いに非類似」と判断していたわけですから、これを裁判で覆して「商標が類似」とならないと、侵害も認められないことになります。

一方、不正競争防止行為にあたるかどうかは、同法の2条1項1号、すなわち商品のパッケージなども含めた「ヒルドイド」の「商品等表示」にに対して、「ヒルマイルド」のそれが「混同を生じさせる」ものかどうか、という点で判断されます。

最終的にこの争いがどのように司法の場で判断されるか、あるいは両社がどのように和解するのかは、本稿では予測しかねますが、不正競争防止法には「商標法」を補完する役割があるということはおわかりいただけたかと思います。

さて、同法が規定する「営業秘密」の不正取得・利用行為や、なんで「ポケモン能力改ざん」が同法違反なのかについてですが…今回は紙幅が尽きましたので(←ネットなのに紙幅あるの?というツッコミはご容赦ください)、次号に続きます。