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マンガ、TVアニメの大ヒットを受け、昨年公開された映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」、とてつもない大ヒットとなっていますね。昨年末に「千と千尋の神隠し」(約316億円)を抜き、興行収入歴代1位となったそうですが、その勢いは止まらず、GW明けには興行収入400億にも到達する可能性があるんだそうです(…コロナ禍の映画館休業で、少しペースは鈍るかもしれませんが…)。

https://www.oricon.co.jp/news/2190852/full/

しかし、大人気コンテンツとなれば、残念ながらその違法なコピー商品等は、どうしても出てきてしまいます。

◎(著作権等)映画「鬼滅の刃」を盗撮「いいシーン狙った」 著作権法違反などの容疑で男性書類送検(千葉日報)
https://www.chibanippo.co.jp/news/national/776141

このような行為は、知的財産権関連の法律にしたがってしっかりと取り締まられなければ、文化も産業も正しく発展しません。

知的財産権の中でも、名称や図形等に備わるブランド力を保護する「商標権」については、特許庁に手続きをしなければ発生しませんが、

(参考:弊所過去記事)
【知財キホンのキ】『鬼滅の刃』の話題から学ぶ、知的財産権に必要な「新規性」と「周知性」のはなし
https://onion-tmip.net/update/?p=476

著作権は、著作物が創作されれば、手続きなく、その著作者に発生します(無方式主義)。映画は、当然ながら著作物ですので、今回のニュースのように、それを盗撮したりすれば、著作権侵害として取り締まることができそうです。

ただ、今回の記事では、著作権法違反だけでなく、「映画盗撮防止法」違反の疑いもあると書いています。この法律名を聞いてもピンとこない方でも、映画が始まる前に流れる「NO MORE映画泥棒」の根拠となる法律だよ、といえば「ああそうか」と思われるでしょう。

この「映画盗撮防止法」は、議員立法により2007年に施行された法律です。きっかけは、映画業界からの陳情で、劇場で撮影された新作映画のコピーが、海賊版DVDやファイル共有ネットワークで流通し、年間約200億円もの損失を映画業界は被っているとして、映画盗撮を禁じる法律の必要性を訴えたのです。

ここで疑問に思われるかもしれません。著作物である映画を、盗撮(違法な複製にあたります)をすれば、著作権侵害なんだから、他にそんな法律に必要あったの?と。

結論から言って、その必要は、あったんです。というのも、映画を無断で撮影することの「目的」によっては、著作権侵害が問えないケースがあったからです。

ここで、ポイントとなってくるのが、著作権法に規定されている「制限規定」というものです(著作権法30条~50条)。形式的には著作権の利用にあたっても、「こういう場合だけは、著作(権)者の権利を制限するので、自由に利用していいよ」というケースを既定しているのですが、なかでも一番最初の同法30条で登場する制限規定が、いわゆる「私的使用のための複製」というものです。その第1項にはこうあります。

第三十条 著作権の目的となつている著作物(※かっこ内略)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

著作権法の目的は、ざっくり言えば「文化の発展」にあるわけですが、著作(権)者の独占的な権利を強めすぎると、著作物が十分に利用されず、結果的にその発展を妨げることもありえますから、この「制限規定」の存在は重要です。たとえば、昔でいえば、レコードを自分で楽しむためにカセットにダビング(コピー)する、なんて行為が著作権法違反にならないのは、この規定のおかげだったのです(※最初から友達に配る目的で、ダビングしていたとしたら、制限規定の対象外で「著作権侵害」です。だって、自分で「私的」に使用する目的ではないじゃないですか)。

しかし、映画を、劇場でこっそり盗み撮りして、捕まったら「いや、私的使用目的なんで」と言い逃れされたら、たまったもんじゃありません。ありませんが、法律に従って裁くときに、著作権法しかなかったら、やはり「無罪」になってしまう可能性はあったんですね。それが、上述の映画業界の陳情、「映画盗撮防止法」の立法へとつながっていったわけです。

この「鬼滅」盗撮の記事では、書類送検された盗撮者は、「インターネット上にアップロードなどをした形跡はなく」、「個人的な鑑賞目的だった」と見られているようですが、そんな軽い出来心でも、「映画泥棒」になるように法整備がされているので、ご注意ください。いや、ご注意というか、その作品へのリスペクトがあれば、盗撮なんてできるわけないんですけどね。

 

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