ONION商標・弁理士の山中です。

2013年に「東京開催」が決まった時に思い描いたかたちとは、ずいぶん異なるものとはなっていますが、その(第32回)のオリンピックは、約1年遅れで開会されました。選手の皆さんが悔いのないように競技を終えられること、そして大会自体もなんとか無事に終えられることを望むばかりです。

ところで、ご存じの方も多いと思うのですが、商標に「オリンピック」「Olympic」等の文字や読みが含まれるものを、いわゆるオリンピックと関係ない人や団体が商標登録出願しても、現在の審査では原則「拒絶」査定となり、登録することはできません。

そもそも、商標法では、「こういう商標は登録できませんよ」という拒絶理由をいろいろと定めているのですが、オリンピック関連の出願にまず適用されるのが、同法4条1項6号。これは「国、地方公共団体等の著名な標章」と同一又は類似の商標を、当事者以外が出願したときに通知される拒絶理由です。

国際オリンピック委員会(IOC)及びその下部組織たる各国オリンピック委員会は、国でも地方公共団体でもありませんが、それら「等」に含まれる非営利団体です(※非営利?ってのはちょっと違和感も残るところですが)。そして、「オリンピック」等の文字は我が国においても著名ですから、それらを含む(類似の)商標は、拒絶となるということとです。

なお、IOC等当事者が、「オリンピック」関連の出願をした場合は、この4条1項6号は適用されませんので、登録が認められている(いわゆる登録商標)もある中で、それらと類似と判断されれば、同法4条1項11号の拒絶理由(商標の先願主義、いわゆる「早い者勝ち」の考え方において、後出しになってしまった商標に通知されるもの)なども通知されますし、それこそ同法4条1項7号「公序良俗違反」の拒絶理由が通知されることもあります。

また、商標登録出願をしないにしても、「オリンピック」や各種「ワールド・カップ」などのイベントにおいて、公式スポンサー契約を結んでいないものが無断でロゴなどを使用したり、会場内や周辺で便乗して行う宣伝活動は、「アンブッシュ・マーケティング」と呼ばれ、原則禁じられることになります。

【本当はコワイ商標の話】「アンブッシュ・マーケティング」ってご存知ですか?
https://onion-tmip.net/update/?p=304

しかし、そうなってくると、我々の生活の中でおなじみの企業で、「どう考えても、いわゆるスポーツイベントの『オリンピック』と関係ないことはわかってるんだけど、その名前が含まれている『あの企業』は、どうなるんだろう?」と気になりませんか…?

自分の場合は、2つの企業が思い出されました。
まず、首都圏を中心に展開するスーパーマーケットの「Olympic」(株式会社Olympicグループ)です。
https://www.olympic-corp.co.jp/

自分もお世話になることが多いこちらのスーパーですが、創業はなんと、前回の東京オリンピック(1964年)に先駆けること2年の1962年です。Wikipediaによれば、こうした歴史的経緯もふまえ、IOCのアンブッシュ・マーケティング規制については、日本オリンピック委員会(JOC)との協議を経て、現状維持が認められているそうです(実際、IOCの規制が厳しくなったのは、90年代初頭からと記憶しています)。

さて、そんな同スーパーの場合、おなじみのロゴに略称「OSC」をモチーフにしたロゴマーク等を商標登録しています。
登録5284709号
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2007-068567/9ED2D9975CEA3496B8E56171EF5E58E8CC1E0EB47266E346B24205FA5537F04E/40/ja

なお、かつては審査はそこまで厳しくなく、下記のような登録例もあります。
登録0752581(1957年出願→1967年登録)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-1957-012606/522A7958302E4C39F51286E3FA6C7819C2676B2551943BF01E1DD7894F7855D4/40/ja

ここで、「スーパーも創業時に出願していたら、登録できたのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、スーパー等が指定するべき「小売等役務」の制度が導入されたのが2007年ですから、ちょっとそれは難しかったと思います。

さて、もう1社、気になる企業としては、釣り竿やゴルフのシャフトでおなじみの、「OLYMPIC」(株式会社 オリムピック)があります。https://olympic-co-ltd.jp/

実は、私は、釣りは子供の頃にやっていた程度(、ゴルフも年に1、2回)という人間なのですが、すごくこの名称には親しみがあるな…と思っていたところ、実は1948年に創立された老舗メーカー「オリムピック釣具」がかつて存在したんですね。その会社が合併などを経て社名変更、後に釣り具事業から撤退した際に、事業承継をしたのが現在の同社とのことです。

こちらも、「OLYMPIC」の文字を含むような商標登録は保有されていないのですが、一方で釣具(釣り竿)の商品名については、それこそ前回の東京オリンピック前後の時代に登録された商標登録を、引き継がれています。また、それ以降も、多くの商品名が商標登録されています。高い技術力と、こうした商標戦略によるブランド保護に下支えされながら、その歴史ある社名は、たとえ商標登録されていなくても、人々の記憶には刻み続けられているということでしょう。

 

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