先日、大変気になる判例がありました。「SNSのアイコン」と商標に関連する判例です。
<該当する「商標審決データベース」(※アスタミューぜ株式会社提供)>
https://shohyo.shinketsu.jp/originaltext/tm/1412424.html
このリンク先だけパッと見てもよくわからないので、ざっくり解説をしていきたいのですが、
本件は
「不使用取消審判」の審決
についてです。
不使用取消審判(商標法50条)については、かつて別の記事でご説明させていただいていますが、要は「登録商標を、日本国内で3年間続けて使用しないままだと、この審判を請求されたときに、請求が認められ、登録が取り消されてしまう」という、「コワイ」制度でした。
(参考)【本当はコワイ商標の話】 せっかく商標登録したのに、取り消されることがある?(1)
https://onion-tmip.net/update/?p=246
しかし、不使用取消審判を請求されても(※されるのは「商標権者」ですね)、ちゃんと登録商標を使用していれば、心配はいりません。商標権者は、「商標を(3年の間に、一回でも)使っていましたよ」ということを証明できれば、商標権は維持されます(権利維持審決)。
さて、今回のケースでは、その使用証拠として、
SNS、具体的には「X(旧Twitter)」のアイコン部分に表示した「プロフィール画像」
に、登録商標を使用しているので、これが登録商標の使用になると商標権者(=被請求人)は主張していました。しかし、この主張が認められず、「取消審決」となってしまったのです。
ここで「X」のようなSNSのアイコンに登録商標を使用することは、商標の使用に当たらない…ということなのでしょうか?
そうではないと考えます。
そもそも、商標の「使用」とは、どういう行為をもって「使用」と言えるのでしょうか?商標法では2条3項1号〜10号で、「使用」の態様を定義づけています。たとえば、
・何か商品の登録商標であれば、その「(指定)商品やその包装に、登録商標を付する・付したものを譲渡(※販売等)する」とか、
・たとえば役務(サービス)の登録商標の例なら、、銀行(指定役務「銀行業」)が、銀行の看板(※「(指定)役務の提供に当たりその提供を受けるも者の利用に供するもの)自体に登録商標を付する」
といった、王道の使用行為ももちろん定められていますが、
同項8号では
電磁的方法(中略)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為
と定められています。「電磁的方法」ってピンときませんが、要は「インターネット」です。上の「銀行業」に当てはめれば、銀行の登録商標を、インターネットバンキングの画面に表示することも、「(登録)商標の使用」になりますよ、ということですね。
また、同項8号では「商品若しくは役務に関する広告等」に付するとか、その電磁的方法(インターネット)による提供も、商標の使用と定義づけています。
そうすれば、SNSだって、電磁的方法による提供であることは同じなので、SNSを役務の提供や、広告として使用している場合、そのアイコンに登録商標をプロフィールとして表示することは、「(登録)商標の使用」として認められるべきでしょう。
にもかかわらず!今回、こうした使用が、「登録商標の使用」として認められなかったのは、なぜなのでしょうか。
実は、その(Xの)アイコン、つまり丸い窓に、登録商標(ロゴマーク)が、どのように表示されていたか、が問題だったのです…
ところで、登録商標の使用は、登録商標と全く同一でなくても、
「社会通念上同一」
といえるものを使用していれば、登録商標を使用していたのと同列に扱ってもらえます。一番わかりやすい例は、登録商標では「横書き」だったものを、商品等のスペースの問題で「縦書き」にしていたような場合です。
(参考)【本当はコワイ商標の話】 せっかく商標登録したのに、取り消されることがある?(2)
https://onion-tmip.net/update/?p=275
そして、今回のケース(判例)ですが、
登録商標(文字を含むロゴマーク)が、(Xの)アイコン、つまり丸い窓において、全体が表示されていませんでした。
アイコンとしてアップロードされていた画像データは、丸型ではないだけでなく、登録商標以外の部分も含んだもので、それをアップロードした結果、
・登録商標の端が欠けていた(端が丸の中におさまらず、表示されなかった)
・登録商標を構成する文字が、認識できないほどに不明瞭になっていた(解像度の低いデータが使用された結果?)
という状態で表示されていたのです。
そして、こうした「一部欠けている」「一部不明瞭」だったアイコンへの表示は、登録商標(ロゴマーク)と「社会通念上同一」とは認めてもらえませんでした。欠けている部分は、全国的に有名な企業のロゴの一部だったりするにもかかわらず、です。また、SNS(「X」)のアイコンは、パソコンでのマウス右クリック/スマホなら長押しで、ダウンロードして確認できるとの被請求人の主張も、「そのような操作をして当該画像を表示した者がいたことを示す具体的な証拠はない。」として、退けられてしまいました。
すなわち、登録商標を「3年間」使用していなかっとして、不使用取消審判の請求が認められ、登録は取り消されてしまったのです。
さて、今回のケースから、学ぶべき点としては、
*登録商標は、そのまま使用するのが大原則…をあらためて念頭におきつつ、
*登録商標をSNSのアカウントのアイコン/プロフィール画像に使うときは、登録商標がしっかり表示されているか(画角、解像度)、注意してアップロードする
という点になるかと思いますが、それ以前の認識として、
*今後制作されるロゴマークは、SNSのアイコンに使用しやすい「丸型」でも表示できる態様でも、制作しておく
という点こそ、サービスの提供や、商品・サービスの広告において、SNSが必須の現代において、マストな視点になるかと思います。
もちろんその「丸型」のロゴマークのまま商標登録しておけば安心ですが、(丸型と構成要素は同じものの)異なる態様での商標登録のみを余儀なくされる場合は、それが「社会通念上同一」と一般的にいえるものか、ぜひ商標登録を専門とする弁理士にご相談してから、商標登録出願されることを、ぜひおすすめいたします。
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