今回、かなり大きな著作権法の改正が行われることになりました。音楽アーティスト、レコード会社だけでなく、CD等の録音された音楽を「お店」で使用する人などにも影響が及ぶ法改正が、可決されました。
◎「歌手にも“BGM使用料”支払われる改正著作権法が成立 アーティストに対価還元も店舗には新たな負担」(FNNプライムオンライン)
https://www.fnn.jp/articles/-/1061339
「CDなどを、BGMとしてお店で流す」ときに、そのCDなどを発売しているレコード会社や、CDの中で歌ったり演奏しているミュージシャンに、使用料が払われないのは、そもそもおかしな気がしますが、
なぜそうだったかといえば、
「レコード会社や、歌手たちには、使用料を求めるための権利がなかった」ので、それを作りました!
というのが今回の法改正です。
ということで、ざっくりポイントを押さえた上で、細かく説明します。
★ポイント1 CDなどの録音された音楽には、いくつかの「権利」が含まれている
普通、音楽に関する権利、と言えば誰でも「著作権」をイメージすると思います。それは間違いではないのですが、実はCD等の音楽に含まれている権利は、「それだけではない」んですね。
①曲自体の著作権
に加え、
②実演家の著作隣接権
③レコード製作者の著作隣接権
というものが存在するんです。
曲を創作した人(作詞家、作曲家)=著作者に発生する「著作権」以外にも、「著作隣接権」なんていう別の権利も、著作権法では定めてたんですね。
【ざっくり著作権法】第3回「なぜ著作権法はわかりにくいのか(3)」
https://onion-tmip.net/update/?p=809
で、今回、改正されるのは、その「著作隣接権」の方です。
★ポイント2 著作者には、今までも「使用料」は払われていた
次に押さえておくべきポイントは、
「著作権」にしても、「著作隣接権」にしても、複数の権利を「束」にしたような概念である
、ということ。まず、著作権の「束」ほうですが、こちらでご説明しています:
【ざっくり著作権法】第5回「著作者が得る権利ー著作権(その1)」
https://onion-tmip.net/update/?p=922
その「束」の中には「演奏権」(第22条)というものがありまして、他人の音楽の著作物を「演奏」(※楽器で曲を演奏するだけでなく、CD等で曲をかける演奏も含まれます)するときには、使用料を払って演奏権を許諾してもらわないといけません。
著作者が原始的に得る演奏権ですが、一般的な著作者(作詞家・作曲家)は、「音楽出版社」という音楽の著作権を専門に管理する会社と契約するのが一般的です。さらに音楽出版社は、著作権等管理事業者(=音楽の著作権だと、JASRACかNEXTONE)に管理をまかせますので、一般の利用者はJASRACかNEXTONEに、定められた使用料を払うことになります。
ここは「払わなければいけない」というより、
「ちゃんと払えば、誰でも、音楽の著作物を利用できるよ」
というイメージを持っていただきたいですね。
★ポイント3 なぜ「実演家」と「レコード製作者」は、演奏の使用料を払ってもらえなかったのか。
さぁ、そしてやっと今回の法改正の話ができるのですが、その前に、「実演家」と「レコード製作者」って、具体的には誰なのか、整理しましょうか。
・実演家=「俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者をいう。」(著作権法2条1項4号)。
曲を作らない歌手やバンドメンバーも「実演家」ではあるわけです。
・レコード製作者=「レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう。」(同項6号)。
なお、ここでいう”レコード”とは、「蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう。」(同項5号)と定められているものです。
つまり、最終的に聴かせるフォーマットが(いわゆる)レコードであろうが、CDであろうが、配信であろうが、その元となる音源を(費用を出して)製作した者ですね。従来からの契約慣習でいえば、
ざっくり「レコード会社」
が「レコード製作者」のメインです。
で、先ほどの「著作権」がいくつかの「◯◯権」の束だったように、実演家の「著作隣接権」も、レコード製作者の「著作隣接権」も、いくつかの権利の「束」のような概念なんですね。そしてそれぞれに微妙に違うのですが、共通するしていたのが、
実演家にも、レコード製作者にも、その著作隣接権(の束)には「演奏権」が含まれていなかった!
という点なんですね。つまり、権利がないのだから、その使用料を請求しようがなかった、ということなのです。
今回の法改正で新設される条文は、以下のような表現となっています(赤字は筆者):
(新)第95条の2第1項
実演が録音されている商業用レコードを用いて、その実演を公に再生した者は、当該実演に係る実演家に二次使用料を支払わなければならない。
(新)第97条の2第1項
商業用レコードを用いて、そのレコードに係る音を公に再生した者は、そのレコードに係るレコード製作者に二次使用料を支払わなければならない。
なお、「商業用レコード」という表現は、市販の目的で製作される録音物(CDやアナログレコードなど)の総称ですね。
また、「公に(再生)」というのは、お店に入れ替わり立ち替わりやってくるお客様=「公衆」に、直接見せ、又は聞かせる目的で(再生)というイメージです。
★ポイント4 「伝達権」って何?
また、今回の法改正では、実演家・レコード製作者の「伝達権」も新設されました(赤字は筆者)。
(新)第95条の3 第1項
商業用レコードに録音されている実演のうち公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達した者は、当該実演に係る実演家に二次使用料を支払わなければならない。
(新)第97条の3 第1項
商業用レコードに係る音のうち公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達した者は、そのレコードに係るレコード製作者に二次使用料を支払わなければならない。
CD等をお店でかけるのではなくて、そうした演奏を、
インターネット等(公衆送信)で生で受信して、それをお店のお客さんに聴かせる
こともありますよね。そこからも支払いが必要になります、ということです。
★ポイント5 今回の法改正が進んだ背景は?
日本で暮らしていて、「洋楽は外国の著作物だから、日本では使い放題でしょ」と思う人はいませんよね。日本でだって、外国の著作物は保護されますし、その逆もまた然りです。
しかし、ここで勘違いしがちなんですが、
「著作権や著作隣接権は、そもそもは世界的に効力があるものではない」
ということです。え?じゃあ何で日本でも洋楽の権利が有効なのかと言えば、
主要国は、お互いの国(のみで本来有効な)著作物の著作権や著作隣接権を、お互い保護し合う「条約」「協定」に加盟・締結している
からです(※ベルヌ条約、ローマ条約、TRIPS協定、WPPTなど)。
ただ、その時の大原則が「相互主義」と言って、
「相手の国が認めているレベルでしか、自国でも保護しなくていい」
というものなんですね。
実は、「実演家」と「レコード製作者」の演奏権や伝達権を認めている国は多くあるのですが(※142か国で導入済)、そのような権利を日本の著作権法が認めていなければ、その国においては「日本の著作物の演奏権・伝達権」は認めてもらえません。
ご存知の通り、今、急速に日本の音楽が海外でも人気を博しています。そのCD等が店舗等で演奏されるシーンも増えているでしょう。そうした部分から、レコード会社や歌手が使用料を得られない、というのは本当に勿体無いことになってきたのです。
もちろん、そのような外国からだって、「日本で実演家・レコード製作者の演奏権等を保護してくれよ!」という声は以前から大きかったので、やっと足並みが揃えられることになった、という感じですね。
★ポイント6 今後の展開について
法改正は可決しましたが、
実際に施行されるのは「公布日から3年を超えない範囲内」
とのことなので、具体的な施行日が決まりましたら、またご案内します。
そして施行される場合の「支払いルート」なんですが、「文化庁長官が指定する団体がある場合には、その指定団体のみが権利を行使することができることとする」となっているんですね。
この点、レコード製作者への支払いについては、多くのレコード会社が加盟する「日本レコード協会」がそうなることが予想されます(実際、今回の法改正を長年求める活動をしてきていますからね)。
https://www.riaj.or.jp/about/mission/
また、実演家の団体としては、「日本芸能実演家団体協議会(芸団協)」といった団体もあります。
https://geidankyo.or.jp/
なお、レコード会社とアーティストが専属契約を結ぶ場合、「実演家の著作隣接権」はレコード会社に譲渡することが一般的なので、実演家への支払いもそのルートでできるのかもしれませんし、こうした関係各社や各協会が、新たに「指定団体」となりうる団体を創設するかもしれません。
いずれにしても、その「指定団体」は、使用料についても開示することが義務付けられていますので、そこも透明な制度になるはずです。
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冒頭の記事では、BGMを利用する店舗等の「負担増」という観点にも触れていますが、
そもそもBGMを利用される店主様は、
音楽を愛している、音楽の力を理解されている方
だと思います。著作権使用料に加え、新たに支払うことになる「使用料」は、リスペクトしているアーティストや、そうしたアーティストの支援をしているレコード会社へと支払われていくものです。規定料金を支払えば自由に音楽がBGM演奏できるというメリットもさることながら、
「自分がアーティスト(著作者も実演家も)やレコード会社をサポートしてるんだ!」
と胸を張って、音楽を愛するお客様で賑わう店舗運営をしていただければ幸いです。
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