商標登録は、特許庁の審査官による厳正な審査を経て、認められるものですが、「100%完璧なのか」と言われれば、そうとは言い切れません。登録査定までの審査は、審査官一人で行っていますので、間違ってしまうことだってある、という前提で制度設計されています。

その点、登録から一定期間(商標掲載公報の発行の日から2ヶ月以内)に限って、登録への「異議申立て」ができる制度があります(商標法43条の2)。

以下は、「自分の登録商標が、異議申立てをされる可能性がある」という観点で書いた弊所コラムなのですが、

【本当はコワイ商標の話】商標登録できた!…後の「異議申立のための公告」って何だ?
https://onion-tmip.net/update/?p=920

逆に、他人の商標登録を見つけて、「商標法的に、この商標が登録されたのはおかしい!」(いわゆる、「瑕疵(かし)のある登録」)と思ったら、誰でも異議申立てをすることが可能です。

(ちなみに、現在の「異議申立制度」が平成8年改正で導入される以前は、登録査定「前」に異議申立ての機会を認める「登録前の異議申立制度」だったそうですが、迅速な権利付与の要請等から、現在のような制度になっています)。

では、特許庁で審査される「前」の、

「このままこの商標が登録されてしまったら、おかしい!」という他人の出願

を見つけたら、どうすればいいのでしょう?その場合は、

「情報提供制度」

というものがあります。誰でも、匿名でも(実名でも)、「この出願されている商標は、拒絶理由に該当しますよ」という情報を提供することができる制度です。

商標登録出願に関する情報提供について(特許庁)
https://www.jpo.go.jp/system/trademark/shinsa/johotekyo/touroku_jouhou.html

ところで「登録されてしまったら、おかしい!」というのは、当然、商標法(及び商標審査基準、審査要項等)で定める「拒絶理由に該当する商標」のことです。

ということは、普通は審査に着手されれば、審査官によって「拒絶理由通知(→拒絶査定)」がなされるはずです。しかし、

・「拒絶理由」に該当すると判断して、自分が出願を断念した商標
・実際に自分が出願して、拒絶査定を受けた商標

などが他者に出願されていたら、「他人の登録になってほしくないので、確実に拒絶査定になってほしい」と思いますよね。そうであれば、念の為でも「拒絶理由に該当する」という情報は、提供しておきたくなります。

また、特許庁の審査官も、「情報提供があったほうが、正しい審査がしやすい商標」というのはあります。

たとえば、重複する商品等の範囲における先願商標との類否(同一/類似であれば、商標法4条1項11号の拒絶理由該当)であれば、特許庁のデータベースがありますし、審査官も得意とするところです(、もっとも「商標の類否」判断に対して、出願人/弁理士が異を唱えることはよくありますが)。

一方、審査官も、「一般からの情報」の提供を、積極的にウェルカムである、というケースもあります。それは、

「審査官(一人)の調査だけでは、把握しきれないかもしれない使用・取引の実情」

に左右される拒絶理由の判断です。

たとえば、新しい商品やサービスの名称として、急速に浸透した結果、識別力が失われて「記述的商標」(同法3条1項各号の拒絶理由)となっているものや、ごくごく一般的ではないものの、その指定商品等の市場ではよく使われていて「記述的商標」となっているものもあります。こういうケースは、やはりその市場・業界に携われていた方からの情報提供は、審査官にとっても有用なんですね。

(そういう事業者の方だからこそ「記述的商標だな。出願しても登録が認められないな」と判断して、自らの出願を控えたという場合、そういう商標が誰かに出願されたのを発見したら、「それが認められたらおかしい!」と思われるでしょう)。

また、未登録のマーク(標章)等の存在の有無が影響する拒絶理由、たとえば、

・同法4条1項6号「国若しくは地方公共団体等又は公益的事業等を表示する標章で、著名なもの」
・同法4条1項9号「博覧会の賞」

これらについては、こうした拒絶理由に該当する(かもしれない)標章等の持ち主・使用者・接している方々から、その存在の情報については提供がされるのはとてもありがたいでしょう。また、

・自分が長年使ってきた商標が、剽窃的に出願されているケース

などは、まさに当事者でないとわからないケースですし、剽窃された側からしたら確実に拒絶となってくれなければ困ってしまいますから、同法4条1項7号(公序良俗違反)該当可能性含め、情報提供をしておきたいところです。

【本当はコワイ商標の話】知らない間に、自分の商標が他人に出願されてる?厄介な「剽窃的な出願」
https://onion-tmip.net/update/?p=522

それでは、このようなケースはどうでしょう?

・自分が長年使ってきた商標で、一定のブランド力もあると思っているが、「そろそろ出願しなきゃな」と思っていたところ、同一/類似の懸念がある商標が、他人に先に出願されてしまった!

剽窃ではないんだけれども、自分が使ってきた未登録の商標と、似たような商標が、(重複する商品等の範囲で)他人に先に出願されてしまったケースですね。

商標制度の大原則が「早い者勝ち」である以上、「登録になってほしくない!」と思っても、これは登録を防ぐことは難しいかもしれません。しかし、です。

未登録の商標等の「周知性・著名性」があれば、引例とできる拒絶理由:

・同法4条1項8号(他人の著名な芸名等、これらの著名な略称を含む商標)
・同法4条1項10号(他人の周知商標)
・同法4条1項15号(商品又は役務の出所の混同)
・同法4条1項19号(他人の周知商標と同一又は類似で不正の目的をもって使用をする商標)

などは、当事者の主張によって、その(未登録商標の)周知性・著名性が審査官によって検討されるようになるかもしれないので、情報提供の異議はあるでしょう(なお、上記19号の「不正の目的」の有無なんかも、当事者の情報提供がないと判断しづらい要件ですよね)。

「情報提供」についても、弁理士は代理をすることが可能です。

同制度に興味を持たれた方、特許庁の同制度のウェブサイト(上述)を読んでもよくわからないという方、商標の(情報提供)に経験値の高い「ONION商標」に、ぜひご相談ください。

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