商標登録出願をしても、すぐに審査されて結果がわかるわけではありません(※だからこそ、弁理士のような専門家による、「登録可能性」調査は大事なんですが、それはさておき)。

ちなみに、出願から、審査着手までどれくらいかかるかというと、早くとも

半年以上はかかります

下記、特許庁のリンクに状況が公開されています:

特許庁「商標審査着手状況(審査未着手案件)」
https://www.jpo.go.jp/system/trademark/shinsa/status/cyakusyu.html

しかし、最終的に審査を経て何らかの通知を得ないと、出願した商標が登録できるのかどうかはわかりませんし、

(「登録査定」という通知を受領して、所定の登録料を納付した結果)「商標登録」が完了しない限り、商標権は発生しないわけですから、早く審査してほしいのはやまやまですよね。

そこで、一定の制限はあるのですが、「優先的に審査結果しますよ」という制度があります。その名もズバリ

「早期審査制度」(以下、特許庁のリンク)
https://www.jpo.go.jp/system/trademark/shinsa/soki/shkouhou.html

です。早期審査の申出をした場合、申出から最初の審査結果の通知までは

「平均2か月程度」

となっており、通常の出願と比べて大幅に短縮されるのです。しかも、制度利用自体は無料です(※出願に関する費用や、弁理士費用を除く)。

「そんなに早く審査してもらえるという『メリット』があるなら、積極的に制度利用したほうがいいじゃん!」と思われるかもしれませんが、

全ての出願がこちらの審査を利用されては、結局審査処理は進まなくなってしまうこともあり、早期審査制度の利用には、一定の「条件」が課されています。まず、

「既に商標を使用している」(「使用の準備を相当程度進めている」場合も含む)

ことが必須となります。商標というのはそもそも、商品や役務(サービス)の”目印”として「使ってこそ」商標ですから、まして早く審査を求めるのであれば、既に使用を開始しているのは大前提ということですね。

【本当はコワイ商標の話】登録商標は正しく使用しましょう…というけれど、そもそも「商標の使用」とは? https://onion-tmip.net/update/?p=4356

その次に、

「緊急性の度合い」

によって、条件が変わってきます。「そういう場合は、確かに早く審査の結果を出してあげたほうがいいよね」というケースは、前述の特許庁のリンクでは、「対象1」としてあげられています。

対象1:出願人(又はライセンシー)が、出願商標を指定商品・指定役務の一部に既に使用していて(又は使用の準備を相当程度進めていて)、かつ、権利化について緊急性を要する案件

※ 「緊急性を要する」とは、次のいずれかをいいます。
a) 第三者が出願商標を無断で使用(使用の予備的行為含む)している
b) 出願商標の使用(使用の予備的行為含む)について第三者から警告を受けている
c) 出願商標について他人に使用許諾を求められている又は使用許諾をしている
d) 出願商標について日本以外にも出願中である
e) 早期審査の申出に係る出願をマドプロ出願の基礎出願とする予定がある

他者と商標をめぐる争いが起きているケース(上記 a〜 c )では、なるべく早く商標権の有無や帰属を明らかにすることが、争いの解決につながりますから、「緊急性あり」として認められているんですね。

また、海外での出願も絡む場合(上記d、e)も、「緊急性あり」ということです。国際的な事業展開のスピードに合わせて日本でも早期に審査結果を得られるようにする、という目的もありますし、

特にマドプロ利用の場合(上記e)は、日本国内の「出願」状態でも基礎とできるものの、もし日本での登録が叶わないと、国際登録→外国での登録も取り消されてしまう「セントラルアタック」という制度があります。そこで、少なくとも日本の登録だけは確定してから、(その登録を基礎とする)マドプロ出願をしたほうがいいため、「緊急性あり」なのです。

【本当はコワイ商標の話】外国で商標はどう保護する?(2) <ONION商標>
https://onion-tmip.net/update/?p=209

では、上記のような「緊急性を要する」場合でないと、早期審査制度は利用できないのでしょうか?

答えは「NO」です。緊急性がなくても利用できます。但し!

より「使用」に関する制限が増えてきます。

同じく、前述の特許庁のリンクでは、

対象2:
出願人が、出願商標を既に使用している商品・役務(又は使用の準備を相当程度進めている商品・役務) “のみ” を指定している案件

も、早期審査制度の対象とされています。

早期審査制度では、「既に商標を使用している」ことが必須、と前述しましたが、そこと絡んで、

対象2は、既に商標を使用している商品・役務等を、出願時に指定していること、が必要となります。
(逆にいうと、前述の「対象1」は、出願時に指定している商品・役務等の一部について使用していて、緊急性があればいいのです)。

通常の出願では、商標は「これから使用するんです」という段階でも、出願・登録が認められますので、近い将来(3年が目安ですかね)使用するかもしれない商品・役務であれば指定しておくほうがいいのですが、それが対象2ではできません。

これも商標制度の基本ですが、「指定していない商品等の範囲では、商標権は発生しない」わけですから、これは出願人の事業計画によっては「大きなデメリット」となる場合があります。

【本当はコワイ商標の話】 商標の「指定商品」「指定役務」の指定を間違えたら?
http://onion-tmip.net/update/?p=495

では、早期審査制度を利用する限り、これから使用しようとしている商品等の範囲は、絶対登録が認められないの?というと、そんなことはありません。

対象3:
出願人が、出願商標を指定商品・指定役務の一部に既に使用していて(又は使用の準備を相当程度進めていて)、かつ、「類似商品・役務審査基準」等に掲載されている商品・役務 “のみ” を指定している案件

前述の特許庁のリンクのとおり、この「対象3」も、早期審査制度が利用可能なんです。
こちらを見ると、「緊急性の要件」もありませんし、出願時に記載する指定商品・役務の「一部」を使用してればよい(裏を返せば、「まだ使用していない商品・役務」も指定できる)のです。

ただ、この対象3も早期に審査するとしたら、通常の出願よりも審査がしやすい内容に限定してもらう必要がありますよね。そこが

「類似商品・役務審査基準」等に掲載されている商品・役務 “のみ” を指定

という条件なのです(「等」となっているのは、「商標法施行規則 別表(第6条関係)」「商品・サービス国際分類表(ニース分類)」も含むため)。

これらに掲載されている商品・役務の表現は、「包括的」なものとなっています。それこそ、商標権を発生させる権利範囲を定めるのには、包括的な表現だけでもマイナスとはならないのですが、

*新しく開発された商品や役務は、掲載されていないことがある

のです。今まで世の中にない商品等であれば、適切にその内容を伝える具体的な指定商品・役務の表現を作成し、審査を経て特許庁に認めてもらうことが必要になりますが、そのような記載は、この「対象3」ではできないのです。

また、指定商品・役務の記載は、(包括的な表現に加え、)より具体的な表現も併せて記載することができるんですが、そうした

*掲載されていない「具体的な表現」の記載ができないことも、デメリットとなり得る

んですね。では、どういうときにデメリットとなり得るのかというと、まず、「権利行使」の場面です。

というのも、より具体的な表現も指定しておくことで、指定商品・指定役務の範囲、内容が明確になり、登録商標やそれと類似の商標を勝手に使用している者を発見したとき、商品・役務の類否について相手方の反論が困難になるんです。どういうことかというと、

・包括表現のみだと、(相手が使用している商品等と)登録商標の指定商品等の類否を争う余地が残る
・将来的な審査基準の変更により、包括的な範囲から具体的な商品・役務が外れる恐れもある

したがって、具体的な(指定商品等の)表現が記載されていないと、

権利行使がしにくくなる可能性がある

ということなんです。

また、指定商品・指定役務の範囲・内容が明確であるということは、「使用の証明」もしやすくなるわけですが、それができないわけですから、

不使用取消審判を請求されたときに、使用の証明がしにくくなる可能性がある

というデメリットもあるのです。

【本当はコワイ商標の話】 せっかく商標登録したのに、取り消されることがある?(1)
https://onion-tmip.net/update/?p=246

ということで、「将来的な事業展開も想定し、適切な商品・サービスがカバーされている『強い商標権』を取得する」という観点からいうと、やはり「具体的な(指定)商品等」が記載できないのは、「デメリット」となります。

*****

以上、商標の早期審査制度は、シチュエーションやデメリットをしっかり把握・精査し、それ以上にメリットが期待できるケースですれば、有効活用すべきです。

なお、その制度については、上述の特許庁リンクや、下記「Q&A」などに詳しく説明されているものの、
https://www.jpo.go.jp/faq/yokuaru/trademark/shkouhou_q_a.html

個人で利用しようとすると

*適切な願書案の記載(特に指定商品・役務の記載)はどうすればいいか
*既に使用していること、あるいは「使用の準備を相当程度進めている」ことの証明を、どうすればいいか

などで、悩まれることも多いかと存じます。

その点、弊所「ONION商標」のように、商標を専門で扱っている弁理士事務所であれば、早期審査制度を利用すべきか、そうでないかのアドバイスや、利用する場合の具体的な書類の整え方など、適切にコンサルティングさせていただきます。お気軽にご相談ください。

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
好評です! ONION商標の新サービス
ロゴ作成+商標登録 =「ロゴトアール®」
https://logoto-r.com/

ロゴ制作から商標登録完了まで、弁理士が一括サポート。
いいロゴに®もつけましょう!
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲