ONION商標・弁理士の山中です。
技術革新等に伴い変化しつづけるエンタメ業界。そんな時代だからこそ、拠り所とすべきは「著作権法」ですが、「法」に対していきなり細かいところをつつくのではなく、「その全体や構造、考え方を『ざっくり』学んでしまうことが近道だ」という趣旨でご紹介する連載、その第6回です。
「著作権法」と言っているのに、その中にはざっくりわけても、
◎「著作権」
◎「著作者人格権」
◎「著作隣接権」
◎「出版権」
と、4つもの権利が定められているのが、まずややこしいところと説明してきましたが、
その中でも一番素直に受け止められる「著作権」(そりゃ、著作権法なんだから、著作権のことが書いてあって当たり前だろ、って思いますよね?)について、前回第5回( https://onion-tmip.net/update/?p=922 )に続き説明しています。
前回で述べたのは、まず
「著作権」とは一つではなく、いろいろな「◯◯権」をまとめた概念である
ということでした。同法の21条〜28条にかけて、複製権 (21条)とか、上演権及び演奏権(22条)とか、公衆送信権(23条1項)とか、さまざまな「◯◯権」(著作権を、複数の権利にこまかく分けているので、これらの総称を「支分権」ともいいます)。
前回はその中でも主な「◯◯権」について説明しましたが、ここでまた、そもそも論。著作物を創作すると、なぜこうした権利が著作者に与えられるのでしょう?
例えば、著作物が魅力的だと、それを「使わせてくれ!」という人が出てきます。例えば、小説(言語の著作物)が面白い、読みたいと思う人が多そうなら、どこかの出版社が「いっぱい印刷させてくれ(複製)、そして売らせてくれ(譲渡)」といってくるでしょう。曲(音楽)であれば、それが人気が出て来れば、「人前で演奏させてくれ(公に演奏)」という人も出てくるでしょう。
そうした「著作物を利用したい人達」が、利用できるようにするにはどうするか。たとえば、それらの権利(複製権、譲渡権、演奏権等)を譲ってあげるということが考えられます。当然、ただで譲る必要はないですよね。有償譲渡、つまりそれらの権利を売ってあげればいいのです(そう、著作権って、かたちのあるモノと同じように、人に譲渡することができる権利なんですね)。
また、権利を譲渡せずに保有したまま、「利用させてあげる」ということも可能です。いわゆる、権利の「利用許諾」です。このときも、無償で許諾する必要はありませんよね。(利用回数とか、利用の方法とか、利用の期間とかに応じて)利用料を払ってくれたら、許諾するよということが可能です。
つまり、著作物って、人気がでてくると、稼げるんですよね(当たり前なことを偉そうに言ってるみたいで恥ずかしいですけど)。つまり、
人気のある著作物には「財産的価値」がある
ということです。
そしてあらためて、そんな著作物を創作した著作者ってすごいじゃないですか。そんな著作者に対して、著作物のもつ「財産的価値」を財産的な価値を守ってあげるもの、それが「著作権」だということです
(著作者の、著作物への”想い”を守る「著作者人格権」と区別しやすくするため、著作権を「著作財産権」と通称することがあるのも、そのためです)。
ただ、ここがまた、著作権法の「ややこしい」部分でもあります。第3回でも、特許法と比較しながらちょっと触れたところですが、
https://onion-tmip.net/update/?p=809
著作権法の「法目的」が書いてある第一条の語尾、どうだったかというと
「〜著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」
でしたよね。「え、文化の発展なのに、こうした財産的価値、つまりビジネス的側面についても定めちゃうんだね」って、(著作権法を勉強し始めの頃)自分は感じました(…いや、レコード会社等、著作権をビジネスにする業界に長くいた自分としては、ビジネス面のためにこそこの法律があるんだと思い込んでいたぐらいですが)。
さて、この著作権は、どれくらいの期間、保護されるのかというと、長いですよ。原則(※)、
「著作者の死後70年を経過するまでの間」
となります(同法51条)。
※例外もあって、無名または変名の著作物や、団体名義の著作物、映画の著作物なら「公表後70年」となります。公表されなければ創作後70年とか、さらに例外の例外もあります。
ところで、いわゆる「クラシック音楽」といえば、古いもので17世紀の作曲でしょうか。音楽ですから当然、「著作物」です。ということは、その作曲者=つまり著作者は、その著作物について「著作権」を有します。しかし、その著作者は今、いったい何歳でしょう?いや、創作されてから400年以上経過していたら、さすがに著作者は亡くなり、さらに70年以上経過していますよね。
このように、著作権の保護期間の切れた著作物のことを、「パブリック・ドメイン」と呼びます。そうした著作物は、誰もが自由に利用できる「公有」物ということですね。
それでは、パブリック・ドメイン以外の著作物は、著作者から著作権の譲渡や利用許諾を受けない限り、勝手に利用することはできないでしょうか?実は、「こういうケースだけは、勝手に利用してもいいよ」という規定が、著作権法にはあるのです。次回はそんなお話をしたいと思います。
(次回はこちらです→ http://onion-tmip.net/update/?p=1192 )
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