ONION商標・弁理士の山中です。

技術革新等に伴い変化しつづけるエンタメ業界。そんな時代だからこそ、拠り所とすべきは「著作権法」ですが、「法」に対していきなり細かいところをつつくのではなく、「その全体や構造、考え方を『ざっくり』学んでしまうことが近道だ」という趣旨でご紹介する連載、その第9回です(遅々として…ですが、進んでおります)。

第6回では、著作者に対して与えられる

「著作権」とは、著作物が持つ「財産的価値」を守ってあげるもの

だ、という話をしました。
https://onion-tmip.net/update/?p=1042

しかし、ある一定の場面では、他の人が利用していても、著作(権)者が「利用しちゃダメ!」と言えないように”制限”する規定、その名も

「(権利)制限規定」(著作権法30条〜47条の8)

があります。こちらを、順を追って解説しています。

第7回(制限規定の理由・目的、「私的使用目的の複製(30条)」)
http://onion-tmip.net/update/?p=1192
第8回(「引用(32条)」)
http://onion-tmip.net/update/?p=1321

今回からも、さまざまな制限規定を、ある程度グルーピングしながらご紹介していきます。

31条、33条〜38条は、公益性が高い事業に関連する制限規定が並んでいるのですが、その中から今回は【図書館関連】【福祉関連】の制限規定を紹介します。

【図書館関連の制限規定】

第31条は、「図書館等における複製等」についての制限規定です。

国会図書館や公共の図書館(※企業の図書室などは除きます)の公共的奉仕機能として、一定限度内で、(図書館所蔵の)図書館資料の複製が認められています。だから、図書館にはコピー機が置いてあるんですね。

ただ、条文では、上記以外にもさまざまな規定があり、

*図書館等の利用者の求めに応じて、その「調査研究」の用途で、公表された著作物の一部分(※多くても書籍の半分までと解されます)をコピーする場合
*図書館資料の保存のため、あるいは他の図書館から絶版等の理由で入手困難な図書館資料をコピーして提供する場合

などに限定されています(こうした規定に当てはまらないコピーをしてしまえば、それは個々の著作物の「複製権侵害」ということになってしまいます)。

特に、貴重な資料の保存のデジタル・アーカイブが必要となっている現代、特に「国会図書館」に限定して許されている制限規定(31条6項〜8項、43条「国立国会図書館法によるインターネット資料及びオンライン資料の収集のための複製」)が定められています。

【福祉関連】

第37条は「視覚障害者等のための複製等」、第37条の2は「聴覚障害者等のための複製等」についての制限規定です。

前者(37条)は、公表された著作物を、点字や、電子計算機(パソコン)を用いて展示を処理する方式により、複製し、提供(複製物を譲渡したり、インターネットで送信したり)することが認められています。この制限規定については、「補償金支払が不要」です。

また、福祉事業者(点字図書館に限らず、政令で定める事業者)が、視覚著作物(教科書に限りません)について複製し、譲渡(販売などですね)・ネット送信することも同様に認められています。

後者(37条の2)も、理由・目的としては同様で、聴覚障害者や(発達障害・難聴等の理由により)聴覚による表現の認識に障害のある方に向けた、聴覚著作物の複製等について認める制限規定となっています。

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今回ご紹介した、図書館や福祉関連といった、公共性の高い用途では、著作者(著作権者)の権利を制限して、著作物を利用しやすくなっているんですね。

ただ、上述のとおり、個々の制限規定は、かなり細かく「適用されるケース」が定められていますので、あるケースでOKだとしても、それを

「それなら、こういうケースも大丈夫だろう」と拡大解釈してしまうと、危険

なことがわかりますよね。

やはり、個別の事案で迷ったときは、著作権(法)に強い、弁理士等にご相談いただくことが重要です。

次回は、公益性が高い事業に関連する制限規定の中でも、バリエーションにとんでいる【教育関連】の制限規定について、ご紹介したいと思います。

(次回はこちら→)http://onion-tmip.net/update/?p=2075

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