毎年最後のメルマガでは、その年を振り返りつつ、商標登録のそもそもの意味・意義を考えるような記事を投稿している気がするので…
(21年12月)年末だから考えるーそれ、商標登録する必要ある?
https://onion-tmip.net/update/?p=815
(22年12月)年末にあらためて考えるーその商標、誰が、いつ登録すべき?
https://onion-tmip.net/update/?p=1113
(23年12月)年末にあらためて考えるー知財戦略 vs 広報戦略?プレスリリースも散々作ってきた商標弁理士が、あらためて期すること
http://onion-tmip.net/update/?p=1649
…今年もそんな感じで行ってみます。
さて、商標を専門とする弁理士(事務所)として、「商標登録はお早めに!」という主張を、さまざまなシーンで今まで述べてきました。
皆様ご存知のとおり、商標登録は原則「早い者勝ち」ですし、
また、商標の「普通名称化」という問題もあります(※詳しくは以下のリンクの記事へ)。
【本当はコワイ商標の話】商標出願を急がなきゃいけないのは「早い者勝ち」だけが理由ではないです〜登録できたかも!?ができなくなるケースとは?
http://onion-tmip.net/update/?p=2316
長年、商標の出願に携わっていると、実際に「もう少し早く出願しておけば…」というシーンに出くわすことは、少なくありません。ご依頼いただいた商標の、出願前の詳細調査で、明らかに同一/類似な商標が、他者によって重複する範囲で「直近に出願されていた」ことを発見したり、元々はその方が思いついたネーミング(文字商標)で、その方の活躍により普及したのに、出願のタイミングによって「記述的商標」になっているとして、登録が認められなかった、というケースは、確かにあるのです…
…あるのですが、ただ、このような「商標登録できないリスク」をいくら説明しても、響かない事業者様には響きません。こうしたリスクに備え(て早めに出願す)ることは、ある意味「保険」的な要素があるわけですが、そもそも「保険」をかけることに積極的ではない方もいらっしゃいますし(、そもそも「記述的商標」化のリスクに該当しづらい商標もありますし、)こちらとしても、商標制度を伝えることが「不安を煽る営業」のように聞こえてしまっては不本意ですので、興味を持たれない方には一定以上のご提案は控えざるを得ません。
どうしたら、商標登録の本質を伝えながら、(弁理士として客観的に見て)商標登録をしたほうがいい事業者様に、興味を持っていただけるか。これは、ずっと悩み続けてきたテーマだったわけですが、今年は、l以下のような「逆に、商標登録を急がなくてもいいケースはあるか?」と自問自答しながら執筆した下記のような記事を経て…
【本当はコワイ商標の話】商標弁理士がそれ言っちゃう?商標登録しなくてもいいケース(が存在するか!?)
http://onion-tmip.net/update/?p=2179
ついに、我々なりに、一定の結論へと辿り着くことができました。
では結局、いつ商標登録すべきか? 決め手は、事業者様の「メンタル」ではないかと思うのです…
もし、商標制度の基本的な説明(「早い者勝ち」含む)をさせていただいた上で、すぐに商標登録出願へと進まれない事業者様には、このようにご説明したいと思います:
「自分が決めた商品名や社名、ロゴマークを『誰もが知ってるブランドに育てるぞ!』と決意した日」
こそ、商標登録のアクションを起こすベストタイミングであると。
そもそも、商標権の本質的な目的は、「事業者の営業活動によって、商標に蓄積された信用(つまり、ブランド力)を保護すること」にあります。アメリカ合衆国のように、先にブランド力を積み重ねた者を優先する(「使用主義」)か、日本を含めたほとんどの先進国・地域のように、商標の使用開始前でも、これから使用によりブランド力を獲得する”予定”の段階で登録を認めてくれる(「登録主義」)か、制度の違いはあっても、どちらも守る対象は、「信用/ブランド力」です。
そうなると、事業者様が、自身の商品やサービスに「使用」している文字やロゴマークなどで、弁理士から見てそれが「登録の余地がある商標」だとしても、事業者様がそれを、「自分のブランド」として育てていくつもりがなければ、わざわざお金や手間をかけて商標登録しようと思わないのは、ある意味、当たり前です。
逆に、使う前でも、使い始めてからでも、自分が選択し、商品等につけてきたネーミング(社名や商品名等)やロゴマークのことが愛おしくなってくることはないでしょうか。そして
「このネーミング/ロゴを、もっと多くの人に知ってほしい」
「このネーミング/ロゴを見たら、うちの商品(やサービス、会社やお店)のことを思い出すようになってほしい」
と願うこと、それこそ「自分のブランドとして育てる」という決意です。
高価格商品のハイブランドだけがブランドではありません。全国展開するチェーン店や、大量の広告が投下されるブランドだけが、ブランドではありません。もちろん、そのようなブランドだって、最初から全国的に著名だったわけではありません。どんなブランドも、一つ一つの商品、お店等から始まり、それが事業者の「ブランド化」への強い意志によって、その地位を築いたはずです。
文字もしっかり読めない子供達が、駄菓子コーナーで、手がかりにして手を伸ばすお菓子の「ロゴマーク」、仕事に疲れて最寄駅まで帰ってきた夜、灯にてらされたその看板を見ると、ほっとしてつい立ち寄ってしまうラーメン屋さんの「看板の文字」、SNSへの投稿がきっかけとなって、問い合わせをした新しいITサービスの「(SNSの)アイコン」…などなど、しっかりと事業の目印となり、顧客の脳裏に刻まれ始めている、それがブランド(化)です。現状から、どこまでの知名度・著名性の拡大を求めるかは事業それぞれだとして、
「他の店と、間違えてほしくないなぁ」
「他のライバル企業に、マネされたくないなぁ」
という気持ちは芽生えているのではないでしょうか。
また、「既に、何十年も使用していて、商標登録なんて意識していなかった」という事業が、代替わりを考えた時に、「事業ののれん/屋号をしっかり引き継いでほしい。お客様に親しまれているものだから」と漠然と感じたら、それはまさにのれんや屋号に「信用が積み重なった」状態、つまりその感情こそ、「ブランドを適切に保護したい」という決意です。
まさに、そういう気持ち・想い・決意を守るように「商標法」はできていて、(商標登録により)「商標権」を取得すると、ぐっと守る力が上がるように構築されている制度なのです。
【知財キホンのキ】「登録」という言葉が誤解を与えがち!? 商標登録は、営業許可や事業免許でもなく…「知的財産権」を取得する作業です。
https://onion-tmip.net/update/?p=1632
ONION商標では、まず皆様の「自分が決めた商品名や社名、ロゴマークを『誰もが知ってるブランドに育てるぞ!』という決意」を尊重します。そこから全てが始まるのです。その段階でご相談いただいた結果、商標登録がスムーズにいくかどうかはケースバイケースですが、自分で決めたタイミングだからこそ、私たちのコンサルティングをしっかり受け止めてくださると思います。
2024年から、来るべき2025年、またその未来へ向けて、ONION商標の見識と経験と「商標権」で、皆様の決意(とブランド)を守って参ります。