商標権の存続期間は10年間ですが、「更新」が可能です。つまり、10年ごとに更新の手続きを行えば、実質的には「永久」に権利を保有し続けられるわけです。これは他の知的財産権とは大きく違うところですよね。

特許権なんかは原則「出願から20年」と短いですし、著作権の保護期間は「著作者の死後70年(※著作物の種類によって、公開から70年)」と比較的長いですが、期限があるという点では一緒です。ではなぜ、商標権だけが、「望めば永久」なのでしょうか。

他の知的財産権が、「新しい」とか「独創的な」ものを創造し、公開してくれることへのインセンティヴとして、一定期間独占的な権利を与える趣旨(逆に、一定期間を過ぎたら、社会の共有財産とするほうが良い、という考え方)であるのに対し、商標権で守るのは、その商標に積み重なっていく「ブランド力」だからですね。

この「ブランド力」という力は、期限が来たからといって消えてしまうものではないし、むしろ老舗によって長く正しく使い続けられるほど価値が上がって行くものですから、それを使用し続けたいとする人(商標権者)には、ずっと保有させてあげる方が、その人だけでなく、世の中の産業全体にとってもいいはずだ、という考えです。

「だったら、最初から『商標権は永久』にしといてくれたらいいのになぁ」と思われる方もいるかもしれません。ではなぜ、「10年」という一応の存続期間が設けられているかといえば、「その商標を使わなくなった人は、(独占的に使用できる権利を)手放して、他の使いたい人が使えるようにしてね」という趣旨からです。そう、商標っていうのはそもそもは「選択物」なんですよね。

さて、前振りが長くなりましたが、ここからが本題。みなさんが保有している商標権ですが、10年経過(あるいは、最初に「10年のうちの前期5年分の登録料」を納付した方で言えば、5年経過)したときに、更新・維持するかどうかを、どのように判断したらよいでしょうか。また、その更新等をするときに、注意点としてはどのようなものがあるでしょうか…

①商標権を維持・更新するかどうかの判断基準

まず、その商標を、将来も含め「使用しない」ことが確定しているのであれば、更新しない(※最初の10年のうち、前期5年納付の場合、後期5年は納付しない)という判断で構わないと思います。たとえば、ある商品やサービス、部門等に関する商標を登録したものの、権利期間中にそれらをクローズしてしまい、再開する予定がない場合などですね。

特に、多くの商標権を保有している権利者の場合、必要な商標権とそうでない商標権の「棚おろし」をしてみることで、商標権保持のために無駄にかかっている費用の削減につながります。

また、前述のとおり、「使用しない(登録)商標は手放す」ことで、その商標や、それに類似する商標を使用したい人が、選択して使用できるようになります(※)ので、その観点からも「不要なことが確定している」登録商標は、更新しないという判断が正しいでしょう

(※消滅後も、旧権利者によるブランド力が残っている場合など、他者による同一/類似の商標の出願は拒絶となる場合があります)。

ただ、「今後、絶対使わないとは、言い切れないんだよなぁ」ということも実際には多いかと思います(その点は⑤で触れますね)

②更新する場合・しない場合の注意点<22年4月 更新登録料の値上げあり!>

商標権を更新しない場合は、特にしなければならない手続きはありません。何も手続きをしなければ、存続期間満了(または後期不納により)商標権は消滅します(→いつ消滅するか?は③をご覧ください)。

一方、商標権を更新する場合は、期限までに「更新登録申請」と共に、更新登録料を特許庁に納付しなければなりません(商標権者自身で行うか、弁理士等代理人に依頼をします)。

なお、更新登録は、ルールに沿って納付手続きさえすれば必ず認められる手続きで、新たな審査は課されません(故に、「出願」ではなく、「申請」という呼び名になっています)。

いつから更新できるかについては、
「期限の6ヵ月前から」納付が可能となります
(※分割納付の後期5年分は、それを待たずにいつでも納付可能)。

たとえば、

2022年8月26日が存続期間満了日の場合、
2022年2月27日~8月26日が、更新申請の可能な期間となります。

ところで、その「期限」についてはどうやって知ることができる?かというと、特許庁から通知は来ませんので、要注意です。

(参考)【本当はコワイ商標の話】 知らない間に商標登録が消滅してしまう?
https://onion-tmip.net/update/?p=478

商標権者自身で、下記の「特許(登録)料支払期限通知サービス(無料)」等を使って期限管理をするか、登録時に代理した弁理士に期限管理を依頼するようにしてください。

(参考)特許庁「特許(登録)料支払期限通知サービス」
https://www.rpa.jpo.go.jp/rpa-web/GP0101

最後に、「期限の6ヵ月前~期限まで」の間に、2022年4月1日を含む方は、要注意です。この日より、商標の更新登録料 等が改正され、値上げされます。詳しくは以下をご参照ください。
http://onion-tmip.net/update/?p=862

③更新しない場合、商標権はいつ消滅するか

更新期限を過ぎたからといって、すぐ商標権は消滅するわけではありません。これは、「うっかり更新期限までに、更新登録料の納付を忘れた!」という方への救済策ともリンクしています。

実は、更新期限を経過しても、そのあと6ヵ月は「追納期間」といって、所定の更新登録料の「倍額」を納付すれば、(更新期限にさかのぼって)商標権は更新されたことになります。

さらに、この追納期間の期限までに納付できなかったことについて「正当な理由がある場合」にのみ、さらに6ヵ月の間(本来、消滅したはずの)商標権の「回復手続き」も認められます。

つまり、本来の商標権の期限より「(追納期間)6ヵ月+(回復が認められ得る期間)6ヵ月」=1年経過して、更新手続きがなされなければ、本来の期限(存続期間満了日)にさかのぼって、商標権は抹消が確定することになります。

④部分的に使用している場合はどうすればいい?

登録商標が複数の区分(第〇類)を指定している場合、「第〇類の指定商品には使用しているんだけど、第△類の範囲では使用していないんだよなぁ」というケースもあるかと存じます。

この場合は、更新不要の区分を削除補正しての更新<区分を減ずる更新>手続きが可能です。これにより、区分ごとに増えていく更新登録料を、節約することが可能です。
(※「区分を減ずる補正」は、分納の場合の後期5年分の納付時は、できません。不要な指定商品等があれば、その範囲を「一部放棄」という別の手続きをする必要があります)。

⑤ずっと使っていたが、今は使っていない。今後は「?」の場合

上記①のケースのように「もう、この登録商標は、今後使用しない!」と断定できればいいのですが、実際は、「今後、絶対使わないとは、言い切れないんだよなぁ」というケースも多いのではないでしょうか。

確かに、現在使用していない・今後もいつ使用再開するかわからない商標権を、保持し続けるというのは、コストの観点からはあまりよくないようにも思います。

しかし、一定期間使用し、相応なブランド力が一旦備わった商標権であれば、費用が許す限り「更新して、商標権を維持しておく」という判断もアリだと考えます。

ブランド力が備わった商標権であれば、商標権者が使わないと思っても、第三者からライセンスしてほしい、あるいは譲渡してほしいとオファーを受けるケースも考えられますし、商標権者ご自身が「ブランド再生」として、使用を再開される可能性もあるでしょう。

(参考)弊所弁理士コラム 「なくなってしまったライヴ会場の商標の行方」
https://onion-tmip.net/update/?p=728

商標権が消滅した後に、再度その商標の使用を再開しようとしても、手放している間に第三者がその商標/類似する商標を登録してしまっていれば、再度の商標権取得は叶いません。そういうことを考えると、せっかく取得できた商標権について、更新するか否かは、慎重にご判断いただければと思います。

 

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